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第3話 奇跡がないなら奇蹟を生み出そう
馬車は1キロ9ポコロドだった。俺の所持金では、手切れ金の3ポコロドと、あともう一つの収入源をフルに活用するしかなかった。
それは思い出したくもないあまりにわがままな侯爵の政治を裏で操っていた時代だった。侯爵が一人で政治の場に立つと、国が崩壊しかねない。お父んは不満そうだったが、追放される最後の三年は俺が少し裏で操っていたこともあってか、侯爵の政治には、反対十割だったのが、少し、反対が減って、今では多分八割くらいまで抑えられたと思う。
わがままな侯爵のことだから、収益はものすごく少なかったが、それでも13ポコロドは手に入れられたから、足して16ポコロド。
「どこまで行きますか?」馬に鞭を打ちながら、髭を伸ばした男がいった。
「近くに、冒険者ギルドはありますか」俺は聞く。
「ありますよ。7ポコロドお支払いいただければ行きますが……」
行きます、と俺はいった。