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アナグマに末期の水

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 お盆に田舎の祖父母の家に帰省した。


 裕太はゲームもなければテレビも3局しか映らない、友達も居ないので退屈で仕方なかった。昔は小川があって、釣りとかできていたらしかったけど、今は三面コンクリートで固められた用水路があるだけで、降りていくこともできない。


「コンクリートになったのは残念だけど、後で、寄生虫を宿す巻き貝を絶滅させるためにやったと聞いて微妙な気持ちになったよ」父が言う。


 川水の寄生虫が原因と判明するまで風土病として長年苦しんでいた人々がいたという。

 なかなか難しい。


 テレビでは高校野球をやっている。どこが面白いのかサッパリ分からないが、炎天下の中大変なことだ。


 庭先に、犬のような動物が入ってきたのが見えた。あれ? それともタヌキ?  それにしては顔がシュッとしていてどちらも違うようにみえた。


「お父さん、変な動物がいるよ」

 父が来て、

「ん? 何の動物だ? 飼われているのか、人を怖がらないな」

 と言って、スマホで写真を取ってAIに判別させた。


――結果、アナグマと判明


 飼われていたのが逃げ出したのかもしれない。父は台所に行ってゆで卵をもってくるとアナグマに与えた。


 懐いたのか庭先でごろりと横になった。

 父は市役所に電話した。お盆でやってなかった。次に警察署に連絡した。取得物扱いで。

 アナグマは外国産なので誰かが飼っていたのだろう。


 警察が来るまで、ボウルに水を入れて差し出すとアナグマはチャプチャプ音を立てて飲み出した。

「暑いよね。お父さん、もし飼い主が見つからなかったら飼っていい?」


 裕太は乞うた。マンション住まいの親子にはそれはちょっと難しいと知りながらも。

「待って、生態がわからないからすぐには決められない」


 父は、ニホンザル勝手に飼って指三本食いちぎられた人の話をした。

 祖母は珍しいと言っていて、ウチでしばらく飼えんかなぁと言った。


 警察が来た。

「これですか。アナグマというのは……」

 アナグマは逃げようとせず、ピクリとも動かない。


「あれ、これ、死んでますよ」警察官が言った。

 みんなビックリした。さっきまで水を飲んでいたのに。


「軽いですね。痩せ細っていますよ」持ち上げようとした中年警官が言った。

「来る前に調べてみたんですが、遺失物にアナグマはありませんでした。捨てたんでしょうね、手に余ったか飽きたかで」


 裕太は酷い話だと思った。捨てるなんてどうかしている。

「責任持って飼って欲しいですね」警官は悲しそうに言った。


 裕太も父も何も言えなかった。

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