06 ダンジョン攻略(下)部分
◆ガスコンロ神父
「そろそろ回復しましょうか。死にたいなら話は別ですが」
2人はとても大きな両開き扉の前に出ました。
どう見てもボス部屋です。本当にありがとうございました。
雅さんは神父さんにもらったポーションをクイッと飲み干しました。
重い扉に触れると、ギィっと鈍い音をたてて扉は開きました。
◆白犬狼豺
「ノーライフキング、ってやつですか?」
中ボスでした。火を吹く巨大なトカゲ、ワームです。
「こぉれぇは、……水ですね」
ウォーターボールを撃ちます。
◆ガスコンロ神父
ジュッと音を立ててウォーターボールは水蒸気と化しました。
「正直、あなたの魔法であのモンスターに有効なものはありません。近接戦闘で行きましょう」
雅ちゃんは下級魔法しか使えません。
ボス相手となると、有用なダメージソースにはならないということですね。
おや?トカゲの喉袋が赤く発光し、今にもはち切れんばかりに膨らんでいます。
◆白犬狼豺
「うっそ、そんなの聞いてな」
轟音と共に巨大な火の玉が飛んできます。雅は思わず目を閉じますが、神父が雅を抱えてワームの吐いた炎をかわしました。
安全な場所で降ろしてもらい、仕切り直しです。
ワームの動きは比較的遅いみたいです。周り込みながら隙をうかがいます。どうやら私に狙いをつけているらしく、私の方を向いてきます。
私の方に向かってくるのをおっかなびっくり小走りで逃げますが、回り込んで背後に行ってもすぐには振り向けないようです。
そうして何度か背後に回った時に、余裕が出てきました。雅は近づいて攻撃してみることにします。
ナイフで尻尾と脚の間を攻撃します。
◆ガスコンロ神父
「尻尾のあるあるモンスターは大抵、後方にまわられると尻尾で攻撃してくるので躱してください」
切りつけるとワームは叫び声と共に大きなしっぽを振り上げます。
雅は斜め後方にステップ。間一髪の所で躱したようです。
おっと、ワームはしっぽをたたきつけた勢いで神父の方へ飛びかかりました。
ワームは神父の真上で頭から落下してきます。
「ぬんっ!」
神父は背負っているメイスを抜きながらワームの頭にメイスを振り抜きました。
ドグシャ
ワームは吹っ飛び、背中で地面をえぐりながら雅の元へ戻ってきました。
ワームは地面に仰向けに転がり、体の割に小さな前腕を胸の前で祈るようにしながら震えています。
命乞いでしょうか。
◆白犬狼豺
「えっとー、よく見ると可愛い」
血走った目に赤黒く濁った歯茎、間近で見て正直後悔した。
「やっぱ何でもないです」
神父に促されて斬撃を浴びせて倒し切ってしまいました。
エフェクトが出たと思ったら、すぐに地面に落ちて地下にすり抜けていってしまいました。その光が抜けた後に、小さな鍵を手に入れます。このダンジョン最奥のボスの部屋の鍵のようです。
ドン、という大きな音がどこかで鳴ります。戻ってきた時のようなあの森まで聞こえてきた大きな音はこれだったようです。
「何の音ですかね」
◆ガスコンロ神父
「行けば分かります。ゲームとはそういう風にできている」
さあ、奥へ進みましょう
◆白犬狼豺
「は、はあ」
言われるがまま、鍵を握りしめて神父のあとをついていきます。
◆ガスコンロ神父
そこはそこそこ広い空間でした。
ドーム状の空間の地面からは巨大なクリスタルの柱が飛び出ています。
部屋の入口の対角には巨大な金属製の扉があり、巨大な人型の何かが頭を激しくうちつけています。
「あれが音の正体ですね」
〖秘匿されしゴーレム〗
さあ、戦闘開始です。
◆白犬狼豺
「よし……」
さっきの戦闘を思い出して、ゴーレムの背後に少しずつにじりよります。
普通に気づかれましたね。
◆ガスコンロ神父
「背後に回りたいなら向いた方と逆です。相手が向いた方と逆でお願いします」
神父は雅の方を向いたゴーレムと反対側にステップで飛び込みました。
神父が積極的に戦いに参加するということはそこそこ強いボスなのでしょうか。
◆白犬狼豺
ゴーレムが猛然と襲いかかって来ました。雅は回避連打でステージの端に逃げます。
「わっ、あっ」
落ち着いて、ゴーレムの背後に回り込みます。動きは先程のワーム同様ゆっくりなようです。
周りこんでから足の後ろを攻撃していきます。
◆ガスコンロ神父雅に合わせて神父も足元を攻撃します。
相手のHPはというと……ほとんど減っていません。
ゴーレムは長い腕で神父と雅を殴り飛ばします。
「……っ!ここではあえて攻撃をくらいます!あえてです!」
◆白犬狼豺
「え? は、はい!」
雅は何を言ってるのかわかりません。神父が言うのですからそうなのでしょう。
嘘なんですけどね。
体制を立て直し、ゴーレムを見渡します。綺麗な石の体、所々に宝石のような色が見えています。その堅牢な体は攻撃が効きそうにありません。
ですが
「頭にヒビが……」
◆ガスコンロ神父
「あそこを攻撃しましょう」
神父は石を弾丸のように投げ飛ばします。
しかしゴーレムの体表を覆う半透明の膜のようなものに当たると石は砕け散りました。
どうやら直接攻撃しか効かないようです。
◆白犬狼豺
「あんなところどうやって?」
神父が雅を持ち上げます。
「へ?」
◆ガスコンロ神父
ブォン
雅はゴーレムの頭めがけて飛んでいきます。
ゴーレムは飛んでくる雅を叩き落とそうとしますが、ギリギリ雅の方が早かったようです。
◆白犬狼豺
雅はゴーレムの頭に近づいていきます。ゴーレムの頭が間近に迫ります。ここに合わせて攻撃を当てれば
「へぶっ!」
雅はゴーレムの頭とすれ違い、受け身も取れずに巨大なクリスタルの柱に激突します。
「うわっ!」
慌てながらも柱にしがみつきます。
ゴーレムは雅のすぐ目の前で雅に背を向けて雅を見失っているようです。
雅はどうしようか思案していると、ゴーレムは雅に気付き、しばらく見上げると、柱を揺らし始めました。
「待ってたよ、頭を真下に持って来てくれるの!」
雅はゴーレムの頭を目がけて落下しながらナイフを突き立てます。
ゴーレムの頭のヒビが全身に広がっていきます。
雅が神父のそばに着地すると、視界が赤く点滅しました。
どうやらHPがわずかなようです。
◆ガスコンロ神父
ゴーレムの頭から飛び上がった雅。
ゴーレムは膝を付き、頭を垂れる。
「弱点が手の届く場所です!」
雅はゴレムの正面に着地した反動で地を蹴る。
ひび割れた頭のその隙間から、一層強い致命のエフェクトが立ち上る。
雅は致命のエフェクトのその奥へと短剣を突き刺しーー核を引き抜いた。
短剣にえぐり取られた核はガラスの割れるような音を立てて砕け散る。
DUNGEON CLEAR!!
◆白犬狼豺
「ふー、疲れた」
だいたいこんな感じでしょうかと雅は胸をなでおろします。急に投げられたことは驚きましたが。しかし神父の機転が無ければ倒せませんでした。
扉の方を見ると、なんと開いているではありませんか。
◆ガスコンロ神父
眩い光の方へ目をこらすと、巨大な宝箱……それと、地面から首だけをつき出してこちらを見つめる男がいましたとさ。
◆白犬狼豺
「え、えぇー……」
何とも不思議な光景です。
首だけの男が私に語りかけます。
◆黒犬狼藉
『脳が理解を拒んでいるが…コレはなんだ?』
◆ガスコンロ神父
『いつ出てくるのか知らんから勝手にだした』※黒犬さん担当の新キャラが出てくるタイミングの話を事前にしていました。
◆黒犬狼藉
『いや,ひと段落したら教えろよ!!』