白犬版第一話 3680字
「ようこそ、フレイヤ・オンラインへ」
キラキラ控えめに輝く瞳に滑らかなラインの眉、ツンと立った小さな鼻、薄い唇、白い肌、まるで顔の半分だけを丁寧に描き、そのまま鏡で反転させてから意図的にわずかばかり非対称にされたような顔の女が挨拶をするところからこのゲームは始まる。
はじめまして、天宮麗華です。
ただいま巷で話題になっているVRゲーム、フレイヤ・オンラインの世界に潜入中なのです。といっても受験が終わって入学まで暇を持て余した最後の春休みを謳歌中の高校生なんだけどね。お小遣いとお年玉を貯めて、何に使おうか迷っていた私に電撃が走ったあのコマーシャルを見た翌朝に近所の家電量販店の抽選に自転車を飛ばした甲斐があったと言うもの。転売ヤーは滅んでどうぞ。
はい、現状整理おしまい!!
そして前述したとおり、今女の人が目の前にいる。しかしよく出来たCGだと思った。綺麗、触れそうな距離にいる、髪の質感は絹のようで、動き回る私の方に顔を向けるたびに柔らかく揺れる動きが凄くリアル。瞳は宝石のようで、角度を変えながら見ていると虹彩の一本一本の筋がキラキラと反射していた。鼻、口、耳もきっと理想とされる造形がなされているのだろう。そうやってひとしきり美しく作り込まれた顔や体のパーツを丁寧に観察してから、少し引いて見ると、互いに主張しあっていた個々の美しさは途端に拮抗することなく“一体のCGの女の人”の中で行儀良く調和を保ち、静かに佇んでそこにいる。遠くから見ても近くで見てもまるで隙が無い。こn
「あの、プレイしないのですか?」
「へ……? ああごめんなさい」
それで、ゲームはどうやって始めればいいのか皆目見当もつかない。この仮想空間の中には私とこの人しか居ないのだ。視界にはこちらの意図を伝えるためのコマンドを出すボタンがあったりはしない。腕か、無い。あれか、シャウトで出すのか。
「コマンド!」
「普通に私に話しかけてください」
「はい」
アレクサにも話しかけたことないんだぞ
「えっと、もうゲームは始まっているのですか? いかんせん、私はこういうゲームをやったことがないものでして……」
「そうなのですか? でもそういう方でも大歓迎ですよ!」
「ああ、この人を作った人は需要を理解しているんだな」と、コロコロ笑う彼女うの顔を見てそう思った。
「私はフレイヤ・オンラインの案内役を務めます。アーティカルドサーバント、ブルーと申します。麗華さん、どうぞよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします。えっと……」
「はい、それでは説明をはじめます。
こちらが利用規約とガイドラインですね」
ここでか、たしかにログインする時無いなと思っていたけど。
「丁寧にご説明いたしましょうか、簡単にご説明いたしましょうか。この規約とガイドラインは後からでもご確認いただけます」
「ええと、後で確認します」
「わかりました。シートにしてポーチの中に入れておきますね。ホームページでもご確認いただけます」
「ゲームはどうやって始めたらいいですか」
彼女は人見知りな私の目を真っ直ぐに見て微笑んだ。ミステリアスでもなく屈託もなく、「私は裏も表も無い案内役ですよ」といった具合に。実際そうなのだろう。
「実際に体験してみましょう!」
「わかりました」
「いいお返事です。それでは体験するためにアバターの作成に取り掛かりましょう!」
彼女がそう言うと、目の前にいくつかのダイヤルと数値を表示するウィンドウが出現する。
「麗華さんのアバターは現在スタンダードタイプで用意されています」
彼女が手鏡状の道具を私の前にかざすと、もう1人の私が目の前に現れた。なるほど、よく出来ているもので、事前に撮っておいた自分の写真を元に、私そっくりに作られ、デフォルメされている。私のアバターの目も彼女と同じく綺麗な瞳だった。
「こちらのウィンドウで変更したい箇所を選択して数値を入力してください」
私のアバターはオリジナルの雰囲気を残しながら可愛くなるように作られていた。それでも現実の私は、髪なんてガサガサだし、奥二重をアイプチでこじ開けてようやくマシになる目と、唇も分厚い、……とりあえずこれよりは不細工だ。
キラキラした私のアバターに気後れして、瞼を少し腫れぼったく、顔を丸くした。それで、少しばかり目と髪の毛の色を変えて終わりにした。
「アバターメイキングが終了したら私に話しかけてください」
「終わってるといえば終わってるんだよな。でもなぁ……」
「素敵ですね」
「……そうかな」
不思議な感覚だ。こんなAIには私の苦労とかコンプレックスなど無縁だろうし、どうせ設定されたテキストなのだろうが、それでも報われた気になるのは、受験で少し疲れたからかな。
私の目の前に髪の色が変わった私がいる。鏡で見るのとは少し違った形でいろいろと興味深い。
「気になる点でもありましたか?」
「あ、いえ。少々興味深くて。」
「初めて見ますものね。私の顔も気になりました?」
「ああ、それは、ごめんなさい」
軽くジョークを入れてくる。NPCなのに存外人間味がある。私的には驚きだ。いつの間にここまで技術は進歩していたのだろうか。まぁ、普段私がやってるゲームはレトロな物だから技術の進歩を知らないのも仕方ないのかもしれないが。
「次はステータスです。次の項目からお選びください」
そう言われて目の前に現れたウィンドウをまじまじと見る。
はぁ(ため息)……最近のゲーム技術は素晴らしいですね。非現実味はありますがこれが現実と思えるほどの精度です。
「まず名前を決めてください。」
「名前、ですか。」
現実の名前は色々問題がありますし多少もじったところですぐわかるでしょう。
あー、ですけどこれなら……。
そうですね。
「では、雅と登録してくださいません?」
「わかりました。」
名前の欄に雅と入りました。へぇ……このような感じなんですね。私はあまりRPGジャンルはしない方なんですよね。ソリティアとかパズルゲームを主にやっている私としては、こういったゲームは実況の動画を見るくらいで。しかしこう言うキャラメイクを初めて取り入れた【削除】はすごいですね。
「他のステータスはどのように決めるのでしょう?」
「基本はダイスを振って決めます。振りますか?」
「あ、いえ。そちらでお願いします。」
パッと見たところややこしそうなので大人しく任せることにします。
下手に首を突っ込むと面倒な事になることが多いので大人しく任せる事にします。
「完成いたしました。」
そう言われて、ウィンドウを見ると確かに色々追加されている。
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名前:雅
HP:13
MP:16
STR(筋力)13
CON(体力) 13
POW(精神力) 16
DEX(敏捷性) 10
INT(知性) 11
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「おー、たくさん増えましたね。」
「これが7つの基本数値です」
まじまじと見つめてみます。なんかざっくりしてる気がしなくもないですがおそらく気のせいでしょう。平均で、12か13って所ですね。
「初期値的にこれはいい方なのですか?」
「平均的な方でしょうか? 詳しいことは言えませんが……。」
「そうなのですか。」
ランダムで決められましたので良くも悪くも平均程度ということですね。
「では、スキルを決めていきましょう!」
「ええ」
そう言われてたのでステータス画面を見るとスキル選択画面になってました。スクロールバーが随分小さくて初期でも得られるスキルって結構な数あることがわかりますね。
「何個選べますか?」
「スキルポイントが許す限りいくらでも得られますよ。えーと、貴方のスキルポイントは……、110ポイントですね。」
「110ポイントですか。多いですね。」
「ですけど、獲得で10ポイント使いますし他の用途でも使用しますので数値の大きさは目安程度に思った方がよろしいと思いますよ?」
「はぁ。」
後先考えると頭が痛くなるので、とりあえず11個選びますか。
「ふむふむ。」
興味深いのは鑑定、採掘、ですね。
ワールド系のRPGにおける必須スキルと言えるでしょう。知りませんけど。
ほかに、高視力、暗視、精密動作、気配遮断、探知、空間把握、静止、逃げ足、護身術を選びましょう。
「こんなところですかね。」
「こちらのステータスで問題ありませんか」
「はい(温めますか?と言われて返事をするときのように確固たる意志を持って)」
量は質を凌駕するものなのです。多様性の理論です。
「それでは麗華さん! 良き旅を! ご武運を祈ります!」