仲間が強すぎたので追放したいのですが追放されてくれません…笑顔が眩しいです…お願いだよ、お金だけでも受け取って!
「頼む!このパーティーから出て行ってはくれないか?」
ケルヴィンはリストランテの奥のテーブルで、
目の前の少年に頭を下げ必至になってお願いしている。
ケルヴィンの横一列に座っている3人も同じように頭を下げている。
「オレ…皆さんになにかしちゃいました…でしょうか……?」
少年は何もした覚えがない、というように恐る恐るケルヴィンに聞いてみる。
心当たりが何もないのに出て行ってくれと言われても少年は納得いかない。
「グレイは何もしていない!悪いというなら、それは俺たちだ…………」
あぁ、またあの話しになるのかなー、とグレイは悟った。
悟ったがあまり気にしていなかった。
なにせ、これはいつものことなのだ。
「もしかして…ですけど、またあのお話しですか?」
ケルヴィンは一度顔をあげては頷いて、もう一度頭を下げる。
「そうだ、何度も言うようだが、お前ばかりに負担をかけすぎて……
それなのに分け前もみんな同じ配分だぞ……これは俺たちが甘やかされすぎだろ!」
そう、グレイ少年はとてつもなく強い。
倒せない魔獣などいないと言っていいほどに強い。
というか、もはやこの世界を蹂躙できるであろうぐらいに強い。
それでいて心も真っすぐ綺麗な良い子だ。
グレイ少年は子供の頃から冒険者に憧れていて、一人で鍛錬をしてきたそうだ。
彼がはじめてギルドに登録した日、たまたま俺たちもギルドにいて、
とある依頼を受けたとき、一緒に連れて行ってもらえないかと声をかけられたのが
行動を共にする始まりだった。
アタッカーのケルヴィン
ディフェンダーのジェクス
ウィザードのリリス
ヒーラーのミリー
に加えて、オールラウンダーのグレイ
この5人で『ワイルドキャット』というパーティーを組んでいる。
ケルヴィンが前線に立って戦い、ジェクスがリリスとミリーを守り、
リリスが魔法でケルビンとジェクスをサポートし、傷を負ったらミリーが回復する。
そしてグレイは自由に戦う。これが戦闘時のこのパーティの形になっている。
というかなってしまった……
だってあなた……強すぎるんだもの……………
一緒に冒険を繰り返す度にグレイは強くなっていって
3年も経った頃には世界最強の冒険者として名前が上がるほどになっていた。
今やグレイは剣を振れば魔獣は一撃で倒れてしまうし、攻撃されてもすべて跳ね返してしまうし、
攻撃魔法も防御魔法も使えるのに回復魔法まで使えるときたもんだ…………
俺たちなんの役にもたってなくねー!?って思って普通だよね?普通だよね!?
そもそも俺たちⅮランク冒険者ぐらいの力しかないよ?
それなのに今日倒しに向かったのはSSSランクの魔獣ハイヘイノスキメラだよ?
君がこれまでもあっさり魔獣を倒してしまうから、いつの間にか
滅多に発行されることがないSSSブラックとかいうわけのわからないランクに
俺たちまであげられちゃうし、吹けば飛ぶぐらい心臓に悪い依頼ばかりを
頼まれるようになってしまったの、わかってます!?
……俺たちそんな魔獣にデコピンでもされたら頭爆発して死んじゃうよ……?
そんなことを思いつつブルブル震えながら、なんとか魔獣の元まで辿り着き、
あぁ、冒険者の生涯は短いってなんかの本で読んだけど本当だったんだな……
あまり帰らずごめんよマイマザー……
厳しかったけど感謝してるよマイファーザー……
花嫁姿見れなくてごめんなマイシスター……
などと泣く寸前だったり色々漏れそうになていたけど、俺だけじゃなく4人全員が
同じような状態だったのは秘密である。
そんな中でグレイが急に剣を構え、シュッと剣を縦に振った。
振っただけだよ?振っただけで魔獣は真っ二つに裂かれてしまった。
「「「「えぇ………………………………」」」」
なんというか……魔獣よ、本日もご愁傷様です……
「今日も依頼達成です!やりましたね!」
グレイはとても素敵な笑顔でパーティーメンバーに話しかけた。
全員がまっすぐに向かれた笑顔に
「や、やったな!(なにもしてね~……)」
「そう…だな、よ、よかったよかった!(俺の役目ゼロ……)」
「おつかれさま…でした?(今日も魔法使わなかった……)」
「怪我がなくて…よかったです…!(神様、回復役ってお役にたつのでしょうか……)」
とみんな、若干引きつった笑顔で言葉を返す。
こんなのでいいはずがない、と4人全員が思ってしまうところまでが毎度の光景だ。
さらには魔獣を倒すと報奨金、というものがでるのだが
Sランク以上の報奨金は最低でも2階建て5LDKの家が20件は買える程になる。
それほど強い敵であり、苦戦や死を伴うものであるからこそ、そのぐらいの
額が提示されるのだが、SSSランクだとその5倍くらい貰えるのだ。
正直、お金の管理に困っている。
ギルド金庫に預かってもらえるのも満額になってしまっているし、
国営金融機関にも預かってもらっているがそこも満額だし、
国のすべての孤児院に寄付したりもしたけど、どこからも100年分の運営費なんて
受け取れませんとか言われちゃうし(無理やり受け取ってもらったけど)、
老朽化してきたギルドの建て替えとか費用とかでギルドに進呈したら
毎回ギルド職員に接待されるようになっちゃったし、
国の公共施設をよりよく整備してもらうために国王に残った分を進呈したら
俺たちのパーティーは国のどこでも衣食住すべてが無料になってしまったものだから
お金なんて使わないで生活できるようになっちゃうし……
もうさ、生活に関して言えば神様グレイ様なわけです!!
でもね、冒険者じゃん、俺たち?
だけど、弱いじゃん、俺たち?
こんな厚遇受けて後ですっごく弱かったなんて誰かに知られたらさ、
もう何か言われるんじゃないかって冷や冷やしている毎日なんだよ~!
なら、4人で新しい国にでも行ってⅮランクぐらいの冒険者として
薬草採取とかスライム討伐あたりから、またちまちまやっていったほうが
いいんじゃないかって話しにもなるじゃない……
「わかっているだろ?俺たち、お前の足元にすら及ばないほど弱すぎんだぞ?
それなのに同じ扱いされるのはマズいんだって!」
「そうですか?みなさん普通に強いですよね?ケルヴィンさん剣の扱い上手いし、
ジェクスさんはいつも皆さんを守ってくれます。リリスさんの魔法も頼りがいあるし
ミリーさんがいるから安心して戦える、なにもマズくないじゃないですか!」
とグレイは相変わらず笑顔で返してくる。
「もしパーティーから出ていかないのであれば、せめて配分については、
お前が99、俺たちまとめて1にしてくれないか……正直1でも多いんだぞ……」
「それはできません!みんなでtお戦いに行ってみんなで倒してるんです!
全員均等は最初に約束したことじゃないですか!」
と、思いっきり首を振り嫌がった。
確かに約束した、約束したけどさ……
だってそんなに凄くなるって思わなかったんだもの……
「い、今はどこのパーティーも実力による配分になってきているみたいだぞ?」
苦し紛れにそう言ってみたが
「よそはよそ、うちはうちじゃないですかー」
とにこやかに返されまったくダメだった……
そして彼は笑顔で一言
「それに、オレはみんなが大好きなので一緒にいたいです!」
「うぉ!眩しィ!!」
「心が浄化されていく…!」
「か、可愛すぎよぉ……」
「キュン…………」
神々しい光がグレイの背後に見えた気がした……
あ、ダメだ。
これを言われるとどうしても追放まですることができなくなっちゃうんだよなぁ……
そしてパーティーでの魔獣討伐の日々は続き、毎日使うことのない金貨が増えていくので
いまじゃ他国の孤児院に匿名で寄付しているが、限界はあるだろう。
こんな日々はいつまで続いていくのだろうか……
この物語は
強くなりすぎた仲間を追放しようと頑張るがやっぱり追放できない
そんな感じのお話しである。
最後までお読みいただきありがとうございました。
初めて投稿しました。
なろうなど小説投稿サイトでの書き方が慣れていなかったり
注意はしておりますが誤字脱字など勉強不足で、
見づらいところもあったかもしれませんが、
今後作品を投稿する際には重々注意いたしますのでご容赦ください。
また、本作のご感想などいただけると嬉しいです、よろしくお願い致します。