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第62話 良い最終試験になることだろう

 そもそもエデルは、魔法を詠唱で使ったことはほぼなかった。

 というのも、じいちゃんからそういうものとして教わっていたからだ。


 それに魔族たちも基本的に無詠唱で魔法を使用する。


「詠唱が必要なのって、本当に難しい魔法を使うときくらいだよね?」


〝城〟を丸ごと亜空間に保管しておくときだったり、異大陸へ瞬間転移するときだったり、空から隕石の雨を降らせるときだったり。


 あるいは、フェンリルやベヒモス、ファフニールなど、強大な魔物を従魔ペットにするときも必要である。

 ちなみに、いずれも地上では神話級とされる魔物だが、魔界では当たり前のように棲息していた。


「く、くくく……くははははっ」

「?」


 急に笑い出したハイゼンに、エデルは小首を傾げる。

 一見すると自棄になったのではと思うハイゼンの様子だが、どうやらそうではないようで、


「……いや、これはかえって良い機会かもしれないと思い直してな」

「どういうこと?」

「こういうことだっ!」


 次の瞬間、ハイゼンの足元に大きな影が広がった。

 かと思うと、そこから巨大な物体が姿を現す。


 あの影の中には、エデルが時空魔法で作り出す亜空間のように、物を保存させておくことが可能なのだろう。


「これは……ドラゴン? いや、メタルドラゴン? ううん、それともちょっと違う気が……」


 鋭い牙の並ぶ口に、流線型の体躯、そして見事な翼。

 それはまさしくドラゴンの姿をしていたが、本来なら鱗が覆うはずの身体が、金属を思わせる鈍色に輝いている。


 膨大な魔力をその内に秘めていることが、エデルには分かった。

 だがどういうわけか、生き物らしい魔力がまったく感じられない。


 一見すると魔界に棲息していたメタルドラゴンのように思えるが、どうやら似て非なるもののようだ。

 むしろ魔道具に近い存在ではないかと、エデルは推測する。


 するとその腹部に設けられた出入口から、ハイゼンが体内へと乗り込んだ。


「くはははっ、驚いただろう!? これこそが、英雄マリベルを亡き者にするために用意された最強の兵器だ!」


 どこからともなく響いてくるハイゼンの声。


「遥か昔、当時の世界で猛威を振るったとされる、古代の超兵器――〝機竜ドラゴンマシン〟っ! 遺跡の奥に眠っていたそれを現代へと蘇らせたのが、こいつなのだ……っ!」


 時々、キーンという耳をつんざくような音が交ざりながらも、ハイゼンが勝ち誇ったように告げる。


「ドラゴンをも凌駕する圧倒的な力を持つことは、すでに検証済みだ! しかし残念ながら、まだまだ実戦が足りていなくてな。なにせ、マリベルに匹敵する相手などなかなかいない。だが、お前ならばきっと良い最終試験になることだろうっ!」


 ウィィィィィィンッ、という唸り声と共に、機竜が動き出す。


「もしかして中で操縦してるのかな?」

「その通りだっ! つまりこの機竜は、ドラゴンを超える力を有しながら、私の頭脳をも持つということ! すなわち最強と言っても過言ではない! そんなものと戦えることを、光栄に思いながら死ぬがいい……っ!」


 機竜の前脚が凄まじい速度で振るわれる。

 それだけで風の刃が巻き起こり、地面が大きく抉られ、背後の木々を次々と輪切りにされていった。


「くはははははっ! 力あるドラゴンの爪は、振るわれただけで鎌鼬が発生するというが、これはまさにそれだ!」


 ハイゼンの哄笑を聞きながら、エデルは「うーん?」と呟く。


「魔界にいたドラゴンは、もうちょっと強かったけど……?」


 そんなエデルの声は、機竜の中にいるハイゼンには聞こえていないようで、


「さあ、どんどん行くぞっ!」


 前脚を振り回し、躍りかかってきた。

 だが幾ら攻撃しても、エデルを捉えることはできない。


「チィッ、ちょこまかと……っ! どうやら速度だけはなかなかのようだなっ! だがいつまでも躱し続けられるはずはない……っ! そしてお前の攻撃は、この強固な装甲が完全に無効化するっ! つまりお前に勝ち目はないということだっ!」

「そうかな?」

「っ!? どこに……っ?」


 エデルは一瞬で機竜の懐へ飛び込むと、腹を思い切り蹴り上げる。


「えいっ」


 ドゴオオオオオオオオオオオオンッ!!


 全長十メートルを超す巨大な機竜が、宙に浮き上がった。


「~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」


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