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第28話 あんなに近くていいの

「兄貴はどんな部活に入るつもりっすか?」

「部活?」


 その日の授業終わり、ガイザーに訊かれてエデルは首を傾げた。


「部活っすよ! もしかして聞いてないっすか? この学校には、生徒が自主的に行ってる課外活動があるっすよ。オレも剣技部に入ってて、一応そこじゃ将来のエースとして期待されてるっす。まぁ兄貴の足元にも及ばないっすけど」

「へえ。具体的にどんな部活があるの?」

「そうっすね、他の有名どころを挙げると、水泳部、野球部、サッカー部、陸上部、ダンジョン探索部、決闘部、登山部、射撃部、薬草部、吹奏楽部、美術部、広報部……なんかがあるっす」


 強豪から弱小まで、五十近い部活があるのだとか。


「水泳とかダンジョン探索とかは分かるけど、野球とかサッカーって?」

「どっちも世界的に人気なスポーツ競技の名前っす! 野球は相手が投げてくるボールをバットで打ち返して点を入れていくっす。サッカーはボールを蹴ってゴールに入れるっす。どっちもかなりハードなスポーツっすね」


 聞けば、どちらも武器の使用や暴力が禁止されているという。

 人間界には不思議な文化があるものだな、と思うエデルだった。


「決闘部は分かるよ。どちらかの血統が途絶えるまで殺し合うんでしょ?」

「そ、そこまで恐ろしいものじゃないっす!」


 どうやら魔界の決闘と違い、当事者だけで完結するらしい。

 しかもこの学校の部活では相手を殺すことすらないという。


「普段の授業と違って、一年から六年まで参加してるっす。もっとも、五、六年は授業や課題が忙しくて、最高学年はほぼ四年っすけど」

「なるほど」

「兄貴にはぜひうちの剣技部に来てほしいところっすけど、せっかくっすからまずは色んな部活を見てみたらどうっすか? オレが案内するっす!」

「うん、じゃあそうしてみるよ」


 そんなわけで、エデルはガイザーに連れられ、多くの部活動が行われているという構内の一画へと向かった。


「あそこに見えるのが部活棟っす! ほとんどの部活の部室が入ってるっすよ」


 そのときエデルたちのすぐ脇を、猛スピードで駆けていく集団があった。


「陸上部っすね。あれは長距離の練習っす。彼ら信じられないことに、あの速度で何十キロも走るんすよ。あ、向こうで野球部が練習してるっすね」


 ガイザーの視線を追ってみると、なぜか丸坊主ばかりの集団がいた。

 しかもお揃いの衣服を身に着けている。


 カキイイイインッ!


「おっ、ホームランっすね!」


 生徒が打ったボールが高々と上がってグラウンドの端まで飛んでいった。

 だがエデルはそんなに興味を示さなかったようで、


「あっちは何をしてるの?」

「向こうは射撃部っすね! 遠く離れた小さな的に、魔法を飛ばして当てる競技っす!」

「へー、面白そう」

「興味あるっすか?」

「うん。魔法での遠距離攻撃にはちょっと自信があるんだ」


 魔界ではじいちゃんと、どれだけ遠く離れた場所にいる魔物を狩れるか、よく勝負したのである。


 というわけで二人は射撃部の練習場へ。


「体験入部したい? こんな時期に珍しいね」


 ちょうど入り口のところにいた上級生らしき女子生徒に声をかけると、不思議がられてしまった。


「兄貴は編入生で、まだ部活に入ってないんすよ!」

「……兄貴?」


 彼女は眉をひそめてから、


「へえ、編入生かい。そいつは期待できるね。いいよ、入りな。まだ部活も始まっていないし、今なら撃ち放題だから。ちなみにあたしは三年のビアンサだよ。あんたは?」

「僕はエデルだよ」


 射撃部の練習場は、その競技の性質上、縦に長く伸びていた。

 だいたい三百メートルほどだろうか、向こうに円形の的らしきものが見える。


 まだ練習が始まっていないとの言葉通り、ごく数人が軽くウォーミングアップをしているだけだった。


「あの的に向かって魔法を放つんだよ。どうだい、なかなか遠いだろう?」


 ビアンサが不敵に笑って訊いてくる。

 しかしエデルは小首を傾げ、キョトンとした顔で言ったのだった。


「むしろ、あんなに近くていいの?」


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女神100人3巻
6月14日発売!!!
― 新着の感想 ―
[一言] 決闘部の理解が物騒すぎて笑ったw
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