第105話 ご退場いただくんですもの
アリスたちF組のプレイヤーたちは、すぐにE組のスタート地点へとやってきた。
「っ! いたぞ! E組だ!」
「しかも五人全員いるな。こちらにも気づいていない」
「罠かもしれないから、注意しつつ攻め込むわ」
索敵魔法で分かっていた通り、やはり彼らは開始から一歩たりとも動いていなかった。
アリスたちは建物の陰に隠れながら散会する。
人数の有利を活かし、包囲して一気に叩くつもりだった。
「配置についたみたいね。今よっ!」
「「「おおおおおおっ!」」」
一斉に飛び出し、E組に躍りかかる。
「っ!? F組だ……っ!」
「囲まれてるぞ!?」
「狼狽えるな! 守備陣形を組んで、時間を稼げ! すぐに援軍が来る!」
E組のプレイヤーたちが叫び、アリスが「援軍……?」と眉をひそめたときだった。
「かかれぇぇぇぇぇっ!」
「「「おおっ!」」」
「「「っ!?」」」
背後から聞こえてきた声に、アリスは一瞬、E組の出場者が実はもっと多くいたのではないかと錯覚する。
しかし振り返った彼女が見たのは、E組のプレイヤーたちではなかった。
「D組!?」
「う、嘘でしょ!?」
「まさか、こいつら共闘して……っ!?」
狼狽えるF組に、E組のプレイヤーたちが勝ち誇ったように告げた。
「ああ、そのまさかだよ! お前たちが人数の少ない俺たちE組を狙ってくるだろうことは、読めていたからな! 自分たちを囮にして、誘き寄せてやったってわけだ!」
まんまとそれに引っかかってしまったのかと、アリスは奥歯を噛む。
これでこちらは八人に対して、相手はD組の六人とE組の五人を合わせた十人だ。
人数差はそれほど大きくはないが、挟み込まれる形になったのが痛い。
いったん退避して立て直すのは不可能だ。
「だがな、共闘してるのは俺たちだけじゃねぇぜ?」
「っ!? どういうことよ!?」
激しい乱戦になる中、敵の言葉にティナが反応する。
「あいつらも着いたみたいだな」
そのとき、建物の向こうから新手が現れた。
「C組!?」
「なんでこいつらまでっ!?」
「D組とE組だけじゃなくて、C組まで共闘してるってことか!?」
C組のプレイヤーの一人、髪の長い女子生徒が、慌てるF組の様子を嘲笑った。
「おほほほっ、その通りですの! あたくしたちは、あなた方、F組を全滅させるため、一時的に手を組みましたのよ!」
それにティナが言い返す。
「ゼロポイントのD組とE組が共闘するのは分かるけど、何でC組まで加わってるの!? トップのC組を、みんなで引きずりおろそうっていうなら分かるけど!」
「詳しいことは分かりませんわ。まぁでも、大方、ラーナ先生がD組とE組の男性教師を篭絡したのだと思いますの」
「なんてダメな担任! ほんと、これだから男は……っ!」
思わず怒鳴ってしまうティナ。
「さあ、あたくしたちも加勢して、一気にF組を殲滅しますわよ!」
「「「おおっ!」」」
ただでさえD組とE組を相手に苦戦しているところへ、さらにC組の六人が突入してくる。
しかもいやらしいことに、逃げ道を塞ぐように展開しながらだった。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
「がっ!?」
「ぎゃんっ!?」
そんな中、一人、奮闘しているのはアリスである。
両側から囲まれたにもかかわらず、片方を素早く斬りつけると、流れるような動きで身体を反転させ、もう一人を斬り飛ばす。
「(……正直、かなりのピンチね。こんなことなら、単独で動いていればよかったわ)」
生憎とこの乱戦、味方を巻き込んでしまう危険性があるため、アリスはなかなか魔法を使うことができないのだ。
そのため剣だけで立ち回るしかなかった。
「(でも幸い、ガイザーほどじゃないけど、あたしも剣が上達してるみたいね)」
メインは魔法だが、魔物に接近された際には剣を使うこともあったのだ。
そのお陰か、剣一本でも十分に戦えていた。
アリスの活躍もあって、仲間はまだなんとか全員無事だ。
一方で、D組とE組のプレイヤーそれぞれ一人ずつを、すでに戦闘不能にさせている。
「おほほほっ、なかなかやりますわね。ですが、どんなに頑張っても無駄ですわ。だって……あたくしの魔法で、全員まとめてご退場いただくんですもの」
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