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王国首都の神学校

「ほお~、くそ中世でも首都はにぎやかだな」


 俺とヴェルミ(と今は姿を消してるアナトミア)は要塞都市からの長い旅路を終え、この国の首都にたどり着いた。

 バシリオ王国の首都カピタ。大陸の中央から東南部に版図を拡げる国家の中心だ。

 まぁそういう固有名詞とかどうでもいいわ、どうせ普段は役に立たない直観像記憶のスキルで思い出せるし。旅の間もみんな王国としか呼ばないし、不要不急な知識だわ。

 とはいえ、ヴェルミ達のいた街パリエスに比べてもかなり大きな都市だ。そびえたつ高い城に、石造りの堅牢な建物の数々、道幅だけで何十メートルもあろうかという大通りには馬車や人々でごった返している。

 海外旅行など撮影でたまに行ったりはしたが、その時と似た高揚感を覚えた。

 俺は城門からの景色をパシャリ、と一枚記念に撮影した。


『盗撮以外も撮るんですね……』

「盗撮以外もするんだなお前……」


 異口同音に、風景を撮影する俺が珍しいのかアナトミアとヴェルミがツッコミを入れてきた。

 撮りますよ、カメラマンですよ俺。一応。


 まぁ今はデジカメの容量や、メモリーカードの予備に余裕があるからいいが、いずれは整理も必要になってくるだろう。そのためにもやはり、写真に現像する作業はどうしてもいる。

 いわゆるインスタントカメラとか、ポラロイドカメラなんてのも持ってはいるから部屋からアナトミアに持ってきてもらえば現像自体は何とかなるが、フィルムはさらに貴重だし現像液なんてさすがに一から作ったことないしな。やっぱ白魔導士を見つけて充電してもらうのが先決だ。

 どうでもいいけど、アイドルのチェキに使うからチェキカメラって呼び方どうなんだろうな。あれ嫌いなんだよな、スマホからも印刷できるのは便利だけど。地下アイドルのトイレ盗撮画像はチェキカメラで現像するとその手のアイドルオタクには好評で高く売れたけども。


 閑話休題。


 同じ馬車に乗っていた旅人の面々はさっさと目的の商店などに向かって歩いていってしまう。旅慣れてんな―。俺らも行動指針を決めないとな。


「で、これからどうすんだよマコト」

「漏らしてないと偉そうだな、この奴隷……。早速、白魔導士を探すか、それとも図書館で情報収集してからにするか、それともヴェルミに水分を補給させるか……う~ん」

「……アタシのメシは後でいい」


 赤髪の傭兵は、乱暴な態度でそっぽを向いた。

 ほーんとに、おもらしを見られた人がいないと強気ですねヴェルミさん。

 しかし、どうしたもんか。その白魔導士を見つけるにしても、この世界の大陸図とか、王国の組織とか身分とかの最低限の知識は頭に入れておいた方がいい気もする。馬車の運転手に地図を見せてもらったが、近隣の図しか持っていなかったしな。


『ふふ、それならすべていっぺんに満たせることができると思いますよ』

「お、女神のお告げか? たまには役に立ってくれるのか」

『……教えてあげませんよ?』


 どうでもいいけど、こんな大勢の前で見えない女神と話してるとフィギュアとお話ししている痛いオタクみたいだな。視線が痛い。まぁこんなくそ中世のくそ土人どもにどう思われようがどうでもいいけどな。カメラの専門学校でもいたわ、電車の写真について熱く語る周りの見えない鉄オタが。

 俺は盗撮についてべらべら語るわけにもいかないからスマホいじってました。うーん哀しいね。


 ともあれ、目的地は決まったので≪見通す女神≫様の神託通りに俺たちは大通りを進んでいった。



*****



「なるほど、神学校か……」


 ヴェルミが感心したように頷いている。女神の選択は正しかったようだ。

 ひときわ豪華な王城からほど近い、他と比べると質素なデザインの建物ではあるが敷地はかなり広く、荘厳な雰囲気の場所。なにより大きな門は侵入を拒むかのように鎮座している。十字架といい、翼の生えた彫刻といい、俺のいた現代の教会とそう変わらないように見える。

 以前から話題に出ていた教会というのはここだろうか。


「神学校ね、神父とかシスターとかの勉強をするとこか?」

「そういう面もあるだろうが、首都の神学校といえば現役の白魔導士たちが魔術を教える、いわば白魔導士ギルドって感じのところだな。魔族と戦っている有名な白魔導士もここの出身が多いんだと」

「ふーん」

『ここの図書室なら、その辺の図書館よりも魔術や大陸についての詳しい知識も得られると思いますよ』


 左右から女傭兵と女神がステレオで解説してくる。

 なるほど、神の教えと一緒に魔術も教えて、王国に逆らわないような戦力として『教育』をしているわけだ。そういう場所なら戦争に関連して、大陸や制度の資料も豊富だろう。


「で、ごはんもくれるわけ?」

「アタシも一応は洗礼を受けた教徒だからな。それに、傭兵ギルドから協力を依頼してパーティを組むなんてこともあるし、そう無下に追い返されたりはしないだろ」

「おお、完璧じゃん」


 このくそ中世の何がつらいって、コンビニやアマ〇ンの通販がないことだ。盗撮以外は部屋で適当に食事を済ませていた俺にとっていちいち外食をするのは地味に苦痛だった。食事が無料なら、そのつらさも多少は我慢できるというものだ。ほんと今思い返すと酒場に毎日通うなんて盗撮のためじゃなかったらやらねぇわ、陽キャの酔っぱらいとかこの世で一番へどがでる。


「それに学校ってことは若い女がいるんだろ?」

「ああ、そりゃまぁ……」

『いるでしょうね……』


 このあと俺が何を言うのか、もういい加減に察しのついてきた二人は曖昧に返事をしてくる。

 すでに本性を知られている奴らにどう思われようと関係ない、リーダーとして(そういえば俺ってリーダーなのか?)これからの方針を大々的に宣言しておかないとな。


「この神学校で、充電をするためとついでに世界を救うために白魔導士の仲間を探しながら、知識を蓄えつつタダメシにありついて、穢れを知らない若い女子を盗撮し放題というわけだな!」

「アタシもこんな感じで気軽に盗撮されたのか……」

「さすが女神、完璧な盗撮場所をありがとう!」

『そんなつもりで教えたわけじゃないんですけど……』


 いや~なんだか楽しくなってきたぞ! 前の街はなんだかんだヴェルミ以外に美女と呼べる女はあまりいなかったからな。新たな獲物の吟味に俺は舌なめずりをする。

 出会いの予感に胸を高鳴らせ、俺は神学校の門を叩いた。

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