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充電問題について

 目下の問題は充電についてだった。


 色々とヴェルミに「協力」してもらって分かったのだが、どうも映像技術自体がないわけでもないらしい。

 魔導士たちとやらが魔力でなんやかんやして、遠く離れた場所を投影することそのものは可能で、王国の戴冠式とかそういった場面は庶民に魔術で各地の魔導士が見せるんだとか。しかし、それは現在のものに限った話で、俺のデジカメのように過去の場面を録画して保存、という概念はないようで恥ずかしがるヴェルミの姿を見ながらヴェルミの盗撮シーンを見ることは新鮮だったようで、その点は好評だった。

 おそらく、魔導士が映像技術を独占しているため、一般庶民に出回らず発達がしなかったのだろう。

 俺は少し進んだ技術を持つ魔導士、という受け止められ方をした。ほんのわずかな優位性しかなかったというわけだ。ほんともう、わざわざ俺が異世界からくる意味ってある?


「こ、この優位を少しでも活かそうとするなら……盗撮で弱みを握る映像を保存しまくるしかないわけだが……ぜえ、ぜえ……」

『うーん、大変ですねぇ』


 小銭稼ぎでヴェルミの映像を道中、撮っているのだが充電が大変だった。

 一応、ソーラー式のバッテリー充電器や、災害用の手回し式バッテリーなんかは私物として持っていたが、今も必死にハンドルをぐるぐる回しているのを毎晩では疲れていやになってくるというものだ。

 しかもヴェルミが裸で土下座までしたくせに、逃げ出そうとしたり俺を殺そうとしたりと企むものだから監視カメラも常時一台は作動させておかないといけない。ほーんと、人権意識の薄いくそ中世ってくそ。語彙力も下がるわ。

 俺を呼んだ張本人の女神アナトミアは、そんな努力を興味なさそうに応じていた。むかつく。


「はぁ……今日の充電終わり」

『力持ちのヴェルミさんにやってもらえばいいのでは?』

「あのな、命綱のカメラの充電を弱みを握っている奴隷本人にやらせるわけないだろが。バカ力で壊されたら終わりだ」

『慎重というか小心者というか……』

「電柱も持ってこられない、技術供与もしてこなかった役立たずの女神のせいだろが」

『まだ根に持ってるんですかそれ……』


 当たり前だ、もう俺は永遠に電柱におしっこするメス犬奴隷の写真が撮れなくなったんだぞ。

 一生恨むからな。

 それに、このままじゃプリンターを電源につなげないから、写真の印刷ができない。いつまでも映像をシアター方式で流していては大変だし、とにかく電気の安定供給が急務だ。

 なろう小説とかでスマホやゲーム機を持ち込んでるやつらって充電どうしてるんだろうな、電気を使えないとやることがない俺なんか、それが気になって仕方ない。まあ描写として省略されてるんだろうが。


「それで、本当に首都に行けば、電気を操る魔導士とやらがいるんだな?」

『ええ、光や電気を司る白魔導士の集う教会、そこに私に祈りを捧げる信徒がいますから』


 火や水を操る魔導士、というのは黒魔導士に分別されるそうで、アナトミアの言うように光や電気を操るのは白魔導士という区分らしい。ゲーム的だね。ヴェルミの淫紋も、周囲の魔力を集めた光で筋繊維を作っているとかで治療に大別されるようでこれも白魔導らしい。ふーん興味なし。

 とにかく、物理学で言うところの自然界の4つの力、そのひとつである電磁気力を操る白魔導士を仲間にして充電を手伝ってもらわなければというのが目的のひとつ。あわよくば発電機や、新しいカメラなんかも作る協力をしてもらいたい。手持ちの機器だけではどのみち限界が来る。


「信徒ねぇ……女神さまの名前を知らない旅人の方が多かったけど、大丈夫なんだろうな」

『……そりゃあ、他の世界も司る主神や、戦争で祈りを捧げる戦の神や農耕に役立つ豊穣の神の方が人気ですけど……私だって、この世界を何度も救ってきたんですよ。ちゃんと祈られてます』

「俺みたいによそから呼んだ人間に任せるだけだろ。ほんと中間管理職」


 むっとしたような声で、不満げに抗弁してくる≪見通す女神≫様。

 まぁ、未来のお告げなんて欲しいやつは欲しいだろうし、一定の需要はあるのだろう。

 電柱も作ってこなかったアナトミアに多少八つ当たりはするものの、本当に機嫌を損ねられてなにも協力してこなくなっても正直困る、少しは機嫌を取っておくか。


「……例えば、俺があんたの姿を写真に撮って、それがすげー美人で人気が出たら、あんたの神様としての力もアップするわけ?」

『うーん、そうですね。より正確な未来を知る力をこの世界で発揮したり、強力な魔族の結界を越えて姿を見ることもできるかもしれません』

「ほーん。じゃあやっぱり、プリンターの電源を確保して女神さまのブロマイドを作らないとな」

『……あなたが撮りたいのは、私の盗撮姿でしょう』


 ちっ、バレてやがる。

 それでも一応の建前として、写真技術が必要な理屈は立ててやった。これでアナトミアも表面上は俺に力を貸さざるを得ないわけだ。


「ていうか、声だけで姿は見せられねぇのか? 魔導士ならあんたが姿を見せて説得したほうが早いんじゃねぇの」

『……そうですねぇ、これだけ首都に近くなれば……えいっ!』


 ぼやぁ……と中空に、あの日見た美しい、薄布を纏った女神がぼんやりと浮かぶ。

 おお、ボーカロイドだかVtuberだかのライブで見たホログラム映像みてぇ。あの映像技術もいつかこの世界で実現してぇなぁ。

 ただ、現実世界で見たあれと比べて、アナトミアの姿は薄い青一色で不鮮明。おせじにも見やすいとは言えなかった。


「映像が悪すぎてなぁ。盗撮する魅力もないわ」

『悪かったですね。これでも結構すごいことなんですよ、他の人にも見えるはずですから説得なら任せてください』

「いや、ぼんやり過ぎてマジで下から写真撮ってもだめだわ」パシャッ

『だから勝手に撮らないでください……』

「おい、今日はいつもよりうるさいぞ、早く寝かせてくれ……ひぃ!?」


 安宿で隣の部屋で一緒に泊まっていた赤髪の傭兵が部屋に入ってくる。

 強盗が入ってこないように俺が寝るまで見張っていろという命令を律義に聞いていたみたいだ。うーん真面目な奴隷くん。

 そのヴェルミが扉を開けると、ぼんやりと発光する半透明の女の姿があったのだからビビるのも当然だろう。腰を抜かしてへたり込む姿は歴戦の女傭兵とは思えない、情けない無様さだった。


「ひ、ゆ、ゆ、幽霊……!?」

「まぁ、そう見えるよな」

『失礼ですねぇ』

じわぁ……


 大股開きになった尻もちをついたヴェルミの股間、その黒いビキニパンツの真ん中から水分がにじむ。

 どうやらおばけ女アナトミアを見たショックで少し失禁してしまったようだ。すっかりおもらし癖がついて、日ごろの調教の成果だなぁ。おっと撮影しなくちゃ。

 大柄な女ががくがくと全身をわななかせて震えておしっこを漏らす姿はお笑いだった。これは明日流さなくちゃな(使命感)


「あ、あ、ま、マコト、に、逃げないと……」

『こほん、落ち着いてください戦士ヴェルミ。私の名はアナトミア。未来過去すべてを見つめる女神です』


 もったいぶった態度で堂に入った演技をするアナトミア。いつもの興味なさげな傍観者気取りの声色をしっかり芝居がかった口調に変えてやがる。笑える。

 とはいえ、おびえているヴェルミには効果的だったようで、怪しい光を放つ女幽霊から神々しい後光の女神に印象が変化したようだ。ただの画質の悪い3D映像のくせにな。


「あ、め、女神様……、あ、あのし、失礼しました……」

じょろろろろろ……


 安心したからか、ゆるんだ尿口からはゆるゆる小水が漏れてくる。尻をぺたんと床につけたヴェルミの尻を濡らして、恥ずかしい水たまりが形成されていった。ほんとに失礼すぎだろ。

 一応、引きの画でアナトミアの半透明の姿も見えるようになったが、やはり荒い画質で動画ではよく見えない。これは本当に人気アップも考えてやらないとこいつを盗撮できないな。


「ほ、本当だったんだな、女神が見えるってのは……」

「まーだ信じてなかったのか、お前がおもらしを見られた成果で姿がちょっと見えるようになったんだ。これからも頼むぞ奴隷くん」

『あの、その説明はちょっと……』

「うるさいうるさい、そういうことにしとけ」


 なにやら抗議してくる女神を黙らせる。口から出まかせでいいんだよ、こういうことは。

 自分が恥ずかしいおもらしをする必然性さえ与えておけば、しばらくは裏切らなくなるってだけだ。


「というわけで、この女神の姿をもっと見やすくするために、次は白魔導士の仲間を探すぞ」

「……あ、う、うん、わかった……うぅ……」

『説明がざっくり過ぎませんか……?』


 今さら、おもらししたことに気がついたのか、筋骨たくましい傭兵が股間のおもらしを隠そうと内股になる。遅いわ。女神もいまだにふよふよ浮かびながら抗議してくるがもういいよ、充電で疲れたんだから寝かせてくれよ。


「それになぁ、お前にとっても悪い話じゃないだろ?」

「……え?」

「新しい奴隷が増えれば、お前のおもらしの負担も減るんだからさ」


 俺はニッコリと笑ってやった。おもらし奴隷が増えれば撮影の幅が広がるし、分担もできる。レフ板を持つ係も欲しいし。

 そういうできる上司の優しさを見せてやったのに、ヴェルミはさらにじょろろ……と漏らしていた。ほんと失礼な奴だな。

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