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エピローグ 初めての仲間(奴隷)

「ほら、見回りだろ。早く来いよ」

「う、うぅ……ま、待てよ……」


 あれから数日、俺とヴェルミはすっかり仲良くなっていた。

 不幸な行き違い(笑)から争うことになった俺たちだが、異世界を救う(笑)という女神の使命(笑)であったことを快く受け入れてくれた(笑)ようで、このように傭兵ギルドの仕事である都市の見回り任務にも協力(笑)しあっている。

 しかしなぜか体力に優れる赤髪のA級傭兵の足取りは重く、俺の方が先導している有り様だ。

 ヴェルミはなにやらもじもじと、その筋肉質な体を震わせ、内股になって膝をこすり合わせている。むちむちとした日焼けした肌は上気し、頬にも苦しそうに朱が差している。淫紋の刻まれた下腹もなにやら緊張していて、ビキニアーマーの股間の奥もひくひく痙攣しているようだ。

 どうしたんだろうなぁ、体調でも悪いのかなぁ。(棒読み)


「あ、あ、も、もう……我慢……できないぃ……!」

「おいおい、こんな町の真ん中で突っ立ってたらジャマだろヴェルミ、こっちこいよ」

「……あ♥」

ちょろろろろろ……


 俺が立ち尽くしてしまった女傭兵の手を引くと、似合わない可愛らしい一声をあげてうめく。

 すると、股間の黒ビキニの内側から鍛えられた太ももに、ちょろちょろと黄色い液体が垂れ落ちていった。19歳にもなって、生まれ育った町の道路の中央で歴戦の傭兵はおしっこを漏らしはじめていた。昨日からビールをがぶがぶ飲ませて、トイレには絶対に行かないように命令したのだから、ここまで我慢しただけでものすごい精神力だった。きっとマナを吸収して膀胱を強化したんだろうなぁ、まぁ無駄だったけど。

 もちろん、内股になって服を着たまま立ちションで下着を濡らす筋肉バカ女の姿を街の住人たちに目撃されている。


「うわぁ、またやってるよ、あの変態女が……」

「くっさ」

「やめてよね、うちの店の前で。誰が掃除すると思っているのよ」

「何歳なんだよ、おしっこも我慢できないとか」

「姐御……はあ(落胆のため息)」


「う、うぅ、見ないで……みないでぇ……」


 革のブーツや、地面の石畳にまで恥ずかしい水たまりは拡がっていく。

 ぴちょん、ぴちょん、と雫が垂れていく中には、ヴェルミの涙も混じっている。≪大嵐斧≫などと呼ばれ勇ましく要塞都市パリエスを守護していた一流の傭兵の面影はもはやない。外で我慢できずにおしっこを漏らしてしまうだらしない女として、ウワサは知れ渡ってしまっている。

 最初は喜んで見ていた男どもも、もはや呆れ顔で、同性の女たちは軽蔑を隠そうともしない。

 しかし、どれほどの罵倒を受けようともすべて事実のため、ヴェルミは泣きじゃくることしかできなかった。かつての傭兵仲間たちもかばいようがなく、だらしない元リーダーの姿を眺めているのみだ。


「がるるるるるる!」

「ひぃ、ま、待って、トイレ、といれにいかせてぇ!」


 また別の日の夕刻、魔獣から町を守る仕事の最中にも、彼女は震えていた。

 今までは片手で倒したいたようなザコ犬たちを眼前にして、ぶるぶると全身をわななかせて女の子のようになよなよ立ち尽くす。彼女の代名詞たる巨大斧も地面に転がっていた。


「ぐるぁあ!」

「ひいぃいっ!」

じょばばばばばば……!


 とてつもない勢いで、股ぐらから小便のアーチが描かれる。あ、虹がかかってる。撮らなきゃ。

 今日は朝から野ションもできずに我慢していたため、ダムが決壊したような放尿は立ったまま、止まらない。ここ数日で、一鳴きされただけでビビっておしっこを漏らすほど、魔獣たちが苦手になってしまったようだ。なんでだろうなぁ(棒)。ま、会うたびにおしっこを漏らして泣いていたら苦手意識も生まれるというものだ。


「ひぃ、ひいぃぃいいぃ! おしっこがぁ、とまらないぃ……! た、たしゅけてぇ……」


「ちっ、どけよおもらし女!」

「邪魔だよ」

「うわ、鎧に飛び散ってる、きたねぇなぁ、高かったんだぞこれ!」

「もう来ないでほしい、傭兵の恥さらしが」

「姐御……いや、ヴェルミさん……はあ、さがって(失望のため息)」


 じょばじょば、スプリンクラーとかして小水まき散らし人間と化したヴェルミに群がる魔犬たちの背後から傭兵たちが襲う。以前、一緒にフォーメーションを組んで闘っていた時よりよほど効率がいいのだから笑える。

 今までともに戦闘をしてきた赤髪の女が泣きべそをかいて、おしっこを漏らすだけのかかしになっているのに複雑な思いがあるのだろう、過剰に怒鳴ったり、憐みの視線を送ったり、ぼそっと小声で罵倒したりと遠慮なく蔑んでいく一団。今まで傭兵サーの姫としてちやほやされていたのにかわいそうにねぇ、人間って現金だな。

 え、俺? 俺は助けて慰めたかったんだけどさぁ。撮影が忙しいからさぁ。


「ひっぐ、えっぐ、ふびぃ……」


 鼻汁たらして泣いている女を英雄視しろというほうが無理な相談だ。

 もちろん、その泣き顔も恒例となった上映会で都市で流している。それに異を唱える人間などこの町ではいない、自分たちの恥ずかしい姿を全世界に流されるかもしれないとヴェルミが証明しているのだから。


「お、お願いします! もう許してください! なんでもしますから!」


 ある日、そんな感じでヴェルミを中心に好き放題盗撮して、まずい酒でもいい気分で飲んでいると急に彼女が頭を下げてきた。これ以上、人間の尊厳を傷つけられるのが耐えられなくなったのだろう。


「いやなんでもするなら、これからも町中でお漏らしして、それを撮影させてもらえばいいんだけど」

「だ、だから、それ以外で……!」

「う~ん、俺の故郷での謝罪と頼み方をすれば考えてやろうかなぁ」

「し、します、アタシなんでもするからぁ……!」


 というわけで、俺は日本古来に伝わる土下座の作法を教えてやった。

 正座して三つ指ついて、額を地面に押し付けるアレね。いやぁ伝統文化は大事にしないと。

 その姿を見て、ようやく舐めた態度をとっていた女が屈服する愉悦を感じた。ざまぁみろってやつだな。復讐は楽しいなぁ。


「ゆ、ゆるしてください、もう、もうおしっこ見られたくないんですぅ……!」

「ああ、服脱いで全裸でやるのが作法だから」

「は、はいぃ……!」


 いそいそと酒場の中央でビキニアーマーを脱いでいくヴェルミ、完全に俺に服従してしまっている。それくらい脱糞姿を繰り返し町の人間に見られるのが嫌だったのだろう。

 形のいい胸は、筋肉質な胸やわき腹に比して、非常に柔らかそうであった。そういえばおっぱいを見るのは初めてだった。桃色の乳首は緊張でピンと立っている。あ、もちろん撮影中です。

 ビキニパンツも革ブーツも脱いで、脇に畳ませて完全な全裸、生まれたままの姿になったヴェルミ。恥ずかしそうに股間を隠すが、その精悍で鍛えられた肉体美は隠しようもない。下の赤毛も風でそよいでいた。赤髪のA級戦士は、さらに顔を真っ赤にしながら立ち尽くす。酔った酒場の男たちも大喜びだった。人類はおっぱい大好きだからね、仕方ないね。


「ゆ、ゆ、ゆるしへぇ、ゆるじでぐだじゃいぃいぃぃ……!」


「うっへぇ、情けない姿!」

「よくやるわ」

「あんなケツ穴丸出しの姿で謝る位なら死んだほうがマシだぜ」

「おっぱいでけぇな」

「姐御……いや変態女……はあ(幻滅のため息)」


 ぷりぷりと締まった尻を振り、尻の穴のしわまで見えるポーズで全裸土下座をする≪大嵐斧≫。

 これ以上なくみじめな姿、外気に晒された胸や股間の冷たさに、その情けなさを全身で感じているのだろう、下を向いたヴェルミは大泣きして謝り続けていた。表情が見えないのが残念!

 もはや彼女にはプライドなどはひとかけらも残っていなかった。良い画だ。


「よし、考える……考えたけど、やっぱやめられないなぁ!」

「……っ! うそつきぃ、うぞづきぃ!」

「俺は考えるって言っただけですけど。嘘つき呼ばわりとかやめてください」

『……もう、許してあげたらいかがですか』


 最近ずっと黙っていたアナトミアが久々に俺に声をかける。未来を見る女神なんだからこうなることも分かっていたろうに、裸で土下座するまで放置してたんだからいい性格してるわこいつも。

 汚い床ではいつくばって、手を叩いて暴れて泣いているヴェルミを見てれば同じ女として同情したくもなるか。いや、床板が壊れてる、ほんと腕力だけは健在だから怖いわ。

 仕方ない、これまでにするか。


「お、今、女神さまからの啓示があったぞ!」

「……ほ、ほんとに!?」

「ああ、こんな町を出て俺と一緒に旅に出て、世界を救えってさ」

「え……」


 この町でやれることはやったし、ギルドでだらだらするのも飽きたしこれまでにしよう。

 少しは転生させてくれた女神さまの顔を立てて、ヴェルミと一緒に次の町で獲物を探すのも悪くない。この腕力があれば、できることはまだまだあるだろう。今度は魔法使いとか盗撮したいなぁ。


「もちろん一緒についてきてくれるよな、俺たち仲間だもんな!」

「ひ、ひ、ひいいぃぃええぇぇ……!」

びちゃちゃちゃちゃちゃ……


 中性的な顔の美女傭兵は目を見開いて、俺の言葉に絶望して土下座の姿勢で座り小便をまき散らし始めた。まぁ一生おもらし奴隷にされると言われたようなものだ、尿道も弛緩するわ。

 法も警察もろくにない、この異世界では盗撮映像をどこで上映仕様が罪に問われない、今のところは。映像技術というものがないのだろう。このくそ中世の現代に勝っているところはその一点だけだ。だから人権無視して好き放題ができる。どうせおまけの人生だ。死ぬまで好き勝手してやろう。


「王女様とか、それこそ魔王が女だったら盗撮してもいいな。結果的に世界を救うことになるかもな。うひ、うひひ、うひひひひひひ!」

「い、いやだぁ! たすけてぇ! かみさまぁ、めがみしゃまぁあ!」

『えーっと。頑張ってくださいね』


 アナトミアはまぁ世界を救ってくれるつもりならいいかと、この惨状を放置して逃げたようだ。

 お前もいつか盗撮してやるから楽しみにしていろよ。


 こうして、全裸で四つん這いになってションベンの水たまりの中心で泣きじゃくる初めての仲間(奴隷)ヴェルミ・P・エンドアックスとともに、俺の世界を救う旅がはじまろうとしていた。

 すっぽんぽんの彼女の腹が冷え、ぎゅるると大便を漏らす前兆をBGMにして俺は祝杯を挙げた。

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