9.ベルガー領
ヤバことが、起きる前夜!
第9話
ベルガー領
アキちゃん達は、王都の世界の綻びのあった箇所を見て回り、残っていたヒビ割れも修繕しました。
そして、明日からは、東の街へ向けて出発する予定ですが、旅にはルッツ王子と部下も付いて来ると言っています。
「付いて来られても、お役に立つことは、ございませんよ」と、先生は断っています。
「そう言わずに、お二人の護衛ぐらいはさせて下さい」
「アキが目的なのでしょう?」
「イタコの技には興味ありますが、世界の綻びは、王国の大事でもあります」
「ご自由になさってくださいな」と、先生は答えました。
どうやら、このときの会話が、王子様の婚約者のアンネマリー・ボーリンド嬢に歪んで伝わってしまいました。
ここは、公爵邸です。
「お嬢様、王宮からの情報でございます」
「どうかしましたの?」
「ルッツ王子殿下のことです。何やら、アキとかいう平民の少女のことを気にかけておられる様です」
「平民? セバス、何の冗談ですの? 王子たるもの平民の少女を……」
「それが、申し上げにくいのですが、陛下もそれを支持されておられるとか」
「!!!」
「お、お父様には何と、陛下から、ご説明があったのですか?」
「『存ぜぬ』と」
しばらくアンネマリーお嬢様は考え、
「ルッツ様のところに行きましょう」と、言いました。
そして、アンネマリーお嬢様が王都に着いた時には、既にルッツ王子は、アキちゃん達と旅に出発して、数日が経っていました。
「ルッツ様、一体、どうしてしまったのですか? アンネマリーは、アンネマリーは悲しいです」
執事のセバスも、お嬢様が不憫に思えてくるのでした。
『あのルッツ王子が、こんなことを……』
さて、そんなことはつゆ知らず、アキちゃんと先生は東の街への旅を続けております。
アキちゃんの馬車の他には、ルッツ王子様と部下数人が馬に乗り、王宮の馬車2台が荷物を運んでおりますよ。
整備街道は、途中で2本に分かれ道になり、一つは、東の街まで大都市経由のメインルート。
もう一つは、やや小さい街道で、田舎を経由して東の街へ着くサブルート。
今回は世界の綻びが出たのは、サブルートですので、こちらに進みます。
さて、サブルートでは、途中、ベルガー領があるのですよ。
このベルガー領以外に、街道には泊まれそうもありませんので、この日はベルガー領に泊まることになりました。
ベルガー領に着くと!
領主邸が見えてきました。
何やら、女の人の銅像があります。
「先生! あれはどなたですか?」
「あれは、マリーネ ツゥ ベルガーさんの銅像ですね。ルッツ王子様のお祖母様ですわ」
「王子様のお祖母様でしたか。でも、メイド服なのは、どうしてなのですか?」
「実は、あの方は、私が王宮でのメイドを退職したあと、女王陛下のお付きをされたのです」
「そうなんですか。でも、先生とは、随分と感じが違いますね」
そうなのです。
マリーネお祖母様の銅像は、メイド服にツインの三編み、両方の掌を上げている、あまり可愛くない小柄な女の子の像でした。
王都にある巨大な女王陛下の白い像に比べると、とても小さく威厳を感じませんでした。
「アキ、まだマリーネさんは、お元気だから会っておいで」
「ワァオー! 本当ですか!」
「きっと、ルッツ王子もご挨拶に行かれるに違いないから、御一緒させてもらいましょう」
マリーネとカロリーネが接触ですって!?
読んで頂き、ありがとうございます。
カロリーネとマリーネが50数年ぶりに再会!
ヤバイことにならないはずが無い!?