6.王様だって、困るんだぞ!
第一章は、ここまでです!
第6話
王様だって、困るんだぞ!
「信じられない。広間の絵画にそっくりだ」と、言ったのは王様でした。
「そうなんです、父上」
「アキュリア陛下とワタクシの絵画かしら?」
「えっ、ご存知で」
先生は高笑いをしました。
「えぇ、あれは陛下と領地視察に行った際に描いて頂いたものですのよ。後ろはライン川ですね」
ヨハンネス国王とルッツ王子は、額から汗が流れるのを感じました。
見てもいない絵画を説明したのですから、この人はカロリーネ夫人、その人だと……
「カロリーネ夫人……」
「陛下、悩んでいると顔に書いて御座います。ワタクシで、お役に立つのであれば、お聞きいたしましょうか?」
国王様は、重い口を開きました。
「実は、世界の歪みが国内を荒らして、生産量も、年々、減っているんです。
それは他国も同じで、やがて、この世界は滅んでしまうのではと。
そこで、もし先々代のアキュリア女王なら、どうされるでしょうか?」
「戦うでしょうね。間違いなく、困難に抗うでしょうね。あの人なら」
「「……」」
「まあ、折角なので、うちのアキの占いを見てやってくださいまし。何かヒントになるやも知れませんので。アキや!」
「ハイ、先生!」
「水晶の用意をして」
「ヨハンネス陛下、直接、アキュリア様にお聞きなさることが良いですね」
「「直接、聞く? 死んだ人間に、直接」」
「えぇ、死んだ人と通信が出来る女をイタコと、東洋では言うのですわ」
「東洋?」と国王様は言い、王子様の顔を見るのでした。
見られた王子様も、首を傾げています。
そんなことは、お構いなしのアキちゃんは、水晶の前に、ロウソクを2本立てて、魔法の呪文を唱えています。
しばらくして、水晶に人影が写りました。
「ああぁ」と王子様が声を上げました。
なんと、王都の広場のアキュリア女王と同じ人が写っています。
「久しぶりですね。ヨハンネス!」と、言ったのはアキちゃんの口なのですが、声がアキちゃんの声ではありません。大人の声なのです。
「お、お、おとう……いや、伯母様」
「ヨハンネス、良い! カロリーネは知っているのだから」
「はい、父上」
国王様は、昔の女王様に『父上』と呼んでいます。
なぜ?
実は、女王様と国王様のお父さんは、昔、一人二役をしていたのでした。
それを知ったとき、国王様は、ショックで寝込んだとのことですが、その時、危うく機能不全になりそうだったそうです。
若い頃の国王様は、何をしていたんだろう?
アキちゃんには、まだ、わからんですぅ。
「実は、世界の綻びの事で、ご相談が」
「相談も何も、お前達に手の打ちようなど、端から無いのでは?」
「「……」」国王様も王子様も、何も言えませんでした。
女王様は、続けて、
「なので、私は、カロリーネとアキをこの世界に送った。二人に世界を修復させるために」
「えっ、では、世界は修復されるのですか? 綻びは無くなるのですか?」
「上手く行けば無くなる。だから、二人に協力せよ。あれを放置すれば、やがて世界が無くなる代物。どこかに原因があるはずだ。探すのだ」
そう言うと、昔の女王様は、水晶から消えました。
目を閉じていたアキちゃんは、目を開けて、大きなため息を付き、目を開けました。
「どうです。アキュリア様とお話をしてみて?」
「カロリーネ夫人、お二人はお父上の命により、ここに来たのですね」
「そうなりますね」
「心強い」
「ご協力しましょう」
そうして、王宮から援助が得られるようになり、アキちゃん達は、生活魔法で稼がなくても良くなりました。
めでたしめでたし!
第一章
フンドシを履いた魔法使い
終わり
いつもありがとうございます。
第二章は、先生とアキの旅にルッツ王子が付いてきます。
3人の旅路は、如何にです♪