4.怪しいアキと先生
第4話
怪しいアキと先生
「殿下、瓶入のリンゴのジャムのようです」
「リンゴのジャム?」
しばらく王子様は考えて、
「その娘を連れてきてくれ」と、言いました。
「おい、娘。ゆっくりと、こっちへ歩くんだ」
「う、動けないです」
「おい、ふざけるな」
「ふざけてなんかないです」
そうこうしていると、アキちゃんは兵士達に引きづられて、王子様の前に連れて行かれました。
「これは、君のかね?」
「はい、そうです」
「高かったろう?」
「は、はい。そうです……」
「そうだろう。これは王家直轄領、昔はカトー大公国のあったところで作られたリンゴのジャムだからね。カトー大公国は、お祖母様のご出身地だ」と王子様はアキュリア女王像を指さしました。
「リンゴのジャムは、お祖母様の大好物で、毎年、献上されていたので、私もよく食べたよ」
王子様は、うんうんと頷いていました。
「お祖母様の像の前で、リンゴのジャムを持っているなんて、何かの縁だろう。君の名は何と申す?」
「はい、アキでございます」
「アキ?」
「はい!」
「それは、お祖母様のニックネームと同じだ。何か不思議な感じがする」
すると、人垣から、一人の女性が歩み出て来ました。
白いドレスに黒い帽子を被っています。
帽子を取ると、カロリーネ先生でした。
「アキ、どうしたの?」
「先生ッ!」
先生は、いつの間にか、白いドレスに着替えて、お化粧もしておりました。
しかし、王子様と兵士達は、ビックリしています。
「似ている」
「はい、殿下。似ております」
何に似ているかと言うと、王宮に飾られている、白いドレスを着たアキュリア女王と専属メイドのカロリーネ夫人が並んだ絵画にそっくりなのです。
「カロリーネ夫人だ」
「そっくりだ」
「これは、ルッツ殿下! カロリーネ フォン バイエンルが戻ってまいりましたの」
と、先生はカーテシをしました。
カーテシは貴族のご婦人の挨拶です。
兵士達は、“ざわざわ”と、ざわめき立てております。
この女性は、50年前の伝説のメイド、カロリーネ夫人だと名乗りました。
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