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第3話 恋心

 デートに誘ったはいいが、どこで何をすればいいか見当もつかない。

  

 今日は金曜日だから、今日含めて3日後か。


 どうしよう。


「西口、大丈夫? 顔色悪いよ」


 

「おう、雪村。俺は大丈夫だ。大丈夫、大丈夫……やっぱダメだ」


「ダメなの!? 命の危険がある!? 遺書は書いた!? いや、死ぬな西口ぃ!!」


「そこまでじゃない。仮眠を取れば大丈夫だ」


 昨日は帰った後も俺の心臓が休まる事はなかった。

 もうドキドキしっぱなしだ。

 まともに寝れるわけがない。


 授業が始まるまで寝よう……。





 何とか体力を最低限回復して、今は昼休み。

 そういえば、恋人って昼も一緒に過ごすものなのだろうか。

 いや、そこまではいいか。赤川から来るわけでもないし、そもそも俺の心臓がもたない。


「雪村、聞いてもいいか」


「何?」


「デートって、どこに行って何をすればいんだろうな」


「え、何? もしかして彼女出来たの?」


 雪村がピクピクと青筋を立てる。

 こいつこの手の話に対して怖いんだよな。


「いや、昨日話した()()()()()()だよ」


「あーそれか。デートに誘ったんですねー。ふーん。ちっ、デートプランくらい自分で考えろよ」


 ごめんなさい。


「つっても、俺もデートなんかした事ないしな。よく分からないよ」


「そうか……」


「ただ、男の方はまだ恋人って実感がないんでしょ? だったら、一層彼女の気持ちに真剣に向き合わないとね」


「真剣にか」


「うん。例えば西口の場合だと、『ちゃんと相手の目を見て話す』とか。お前って結構出来てないと思うんだよね」


 言われてみれば、そうかもしれない。


「ありがとう雪村。参考になった」


「どういたしまして。じゃあ胃痛薬飲んでくる」


 雪村は腹を押さえながら教室を出て行った。





✳︎✳︎✳︎





 放課後、部活で家庭科室に来ていた。

 女子の意見も取り入れておこうと考えて、部員の梅咲(うめざき)にも相談してみた。

 大人しい子だから恋愛には疎いかもしれんが、他にこういう事を話せる女友達はいない。


 当然、デートに行くのは俺ではなく俺の友達という事にしておく。


「うーん、そうだなあ……。私だったら、男性側の好きな所に連れて行ってほしいかな。その人がどんな趣味なのかとか、普段とは違う姿を見てみたいし……」


 梅咲はフライパンで炒め物をしながらも俺の質問に真摯に答えてくれた。


「そうなのか」


「うん。あ、でも……あくまで私の場合だから、一般的には女の子の行きたい場所にも連れて行った方がいいかも……」


「難しいな」


「ごめんね。私にはこれくらいしか……」


「そんな事はない。参考になった」


「よかったあ……えへへ。デートかあ……」


 梅咲の顔が少し赤くなった。

 火を使ってると顔が熱くなるよな。


 それにしても、みんなは俺(の友達)の恋愛事情にちゃんと耳を傾けてくれる。

 持つべきものは友達だな。






✳︎✳︎✳︎





 今日は俺の方が遅かったようで、校門で赤川が待っていた。

 ちゃんと心臓は回復したし、昨日は俺が赤川を恋人だと認識して初日だったから過剰に緊張しただけだ。今日はきっと大丈夫だ。





 ダメだった。 

 赤川の顔を見た瞬間に俺の顔周りの血液が沸騰したような気分になった。

 2日前までは何ともなかったのに、俺は本当にどうしてしまったんだ。


 赤川と歩きながら何とか言葉を振り絞る。


「あの、デートの件なんだが」


「う、うん」


「お前、行きたいところとかあるか?」


 赤川はそう聞かれると、わくわくしながら色々考え始めた。

 こういう無邪気な所もかわいい。


 くそ、赤川。お前はどこまでかわいくなってしまうんだ。


「その……映画を見たい。恋愛のやつ」


「そうか。じゃあ見にいこう」


「いいの? ああいうのって男子には退屈じゃない?」


「いや、お前と一緒なら退屈しなさそうだ」


 主に心臓的な意味で。


「そ、そうなんだ。私と、一緒なら……ふーん……」


 赤川が自分の赤髪を撫でる。

 ふわりといい匂いが広がった。

 

 誰か、俺を助けてくれ。早くも心臓がノックアウトしそうだ。


「デート、楽しみね」


「ああ」


 帰り道一緒なだけでこれなのに。デートなんかしたら、本当に死ぬんじゃないだろうか。

 遺書を書いておこう。


 そして、俺の手に柔らかい感触した。

 昨日味わった感触。

 赤川の手が俺に握られていた。


 やばい、死ぬ。


 早く終わってくれ、この時間。

 いや、やっぱり終わらないでくれ。






 というか、もう普通に赤川の事が好きだろ俺。





 

 決めた。日曜日のデートで俺からの気持ちをちゃんと伝えよう。

 こんな曖昧な恋人関係じゃなくて、本当の恋人になるんだ。


 そう決意した俺だったが、はたして俺の心臓は無事で済むのだろうか。

 ちなみに雪村のフルネームは雪村風太郎です。

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