おまけ4 西口きょうだい、デート会議
最初のデートの時に兄と姉にも相談したい西口くん。
雪村と梅崎に聞いたが、やっぱりデートは不安だ。
他に相談出来る相手と言えば……いなくはないが。
家族に知られるには恥ずかしい。
だが、背に腹は変えられん。
「兄貴、姉貴、相談したい事がある」
俺の部屋で、兄貴と姉貴が俺の前に鎮座する。
性別は違うが、2人は双子だから似ている。
「どうしたの、天ちゃん」
「お兄ちゃんに何でも相談しろよ」
高校生にもなって『天ちゃん』はないだろ。
……と、そう何度も2人には抗議したが聞き入れてもらえなかった。
「俺……実はな」
緊張する……。
「その、女子と2人で出かけるんだ」
「ええーっ!!」
「なんですとーっ!!」
2人は思い切りずっこけた。
「どうしよう、兄さん! 天ちゃんに彼女が!」
「落ち着け、まずは落ち着いて赤飯を炊け!」
いやいや。
「落ち着いてくれ兄貴達。相談出来ないだろ」
肩で息をしながら呼吸を整える。
ああ、相談する相手間違えたな。
「ごほん、それで、相談事というのはなんだ」
「デートなんて初めてなんだ。だから、服装とかさ、よく分からなくて」
「……いいか天ちゃん。よく聞けよ」
兄貴が真剣な顔つきに変わった。
さあ、授けてくれ。俺に先人の知恵を。
「俺はデートに行った事がない!」
……。
ええ……。
「兄貴、昔に彼女いたんじゃなかったのか」
「1日で振られたんだよ! チクショー!」
ええっと、じゃあ姉貴は……。
俺と目が合うと、泣きそうな顔をして、首を横に振った。
「つまり、役に立たないって事か」
「ま、待て! 実際に行った事はなくても研究した事はある」
「わ、私も、いつか彼氏が出来た時のために……」
ええ……。
頼りなさ過ぎる。
「いや、無理しなくていいぞ」
兄貴は俺の両肩に手を強く置いた。
「お兄ちゃんはな。お前の力になりたいんだ」
「兄貴……」
「お前って、無口だし、友達少ないし、根暗だし、ファッションセンス皆無だし……」
おい、このやろう。
「だから心配だったんだ。そんなお前に彼女が出来たなんて、俺はものすごく嬉しいんだぞ」
「私もよ天ちゃん。絶対にデートを成功させたいの」
「兄貴、姉貴……」
ああ、いつも鬱陶しい兄姉だが、こんなにも俺の事を想っていてくれたのか。
「よし、土曜にユニ◯ロ行くぞ! お前の兄と姉を信じろ!」
「ああ、天ちゃんが大人の階段を登っちゃう……!」
初めてのデートなんて不安だらけだ。
でも俺にはたくさんの味方がいる。
雪村、梅咲。
兄貴、姉貴。
大丈夫だ。
日曜のデートは絶対に成功させる。
そして、俺に気持ちを伝えるんだ。