テンプレ的知らない天井
「知らない天井だ………………」
なんて言ってみたけど、本当は暗すぎてなんも見えてない。
冗談抜きで暗い。どれほど暗いかというと、自分の目の前に手を動かしても見えないくらいには暗い。
どこなんだここ?
とりあえず床を手で触り質感を確かめることによって、かろうじてわかったのが岩壁に囲まれた小さな部屋、ということだけだった。
いや、訳がわからない。
………なぜ俺はこんなところに居るんだろう……?
確か家で普通にゲームをしていたはずだよな……?
俺は考え事に耽りながらも、今度はじっくりと辺りを見回す。
多少は目が馴れたのか、さっきよりも見えるようになった。
そのおかげか、微かに光が漏れだしている場所を見つけた。
よく眼を凝らして見るとそれが扉ということがわかった。
俺はその扉の方へ慎重に近づき、手を伸ばす。
そして、手が扉に触れるとその扉は音もなく開き……。
「うわっ!?」
次の瞬間、大量の光が溢れ、俺の視界を一杯に包み込んだ。
突然の光量にやや怯みながらも、ゆっくりと瞼を開けた。
「なっ!?」
そこで、目に入ったのは朽ち果てた建物の内部だった。
所々床は抜けているし、光が差し込む程今にも崩落してきそうな屋根に出入口と思われる所は片方だけ外れた両開きのトビラ。
そして雑多に積まれた木製の長椅子。
そこら辺には破り捨てられた紙くずが散乱している。
「酷いな………」
俺は散らかっている紙の一枚を拾い、眺める。
長年放置されたのか、変色し、黄ばんでいた。
片面には何も書いておらず、裏返すが……
そこにも何も書いていなかった。
そして、思ったことを呟く。
「まさか、ここ教会かなんかか?」
雰囲気からそんな感じがした。
長椅子の配置、そして散らばっている色付ガラス。
ふと後ろに眼を向けると、やはりと言うべきか。
そこには十字架が飾ってあった。
だが、その十字架もボロボロである。
「なんか、不気味だな……」
そう言いつつ、まだ何か手掛かりがないか、辺りを探索する。
「うーん、何も無いなぁ。………外はどうだろう?」
しかし、一通り探索し、何の手掛かりも見つけられなかったので俺は、今度は出口の方へ向けて歩く。
そして━━
「は?嘘だろ………?」
トビラの近くまできた俺は、信じられない光景を目にして急いで外へ走り出した。
「えぇー…………」
外に出るとそこにはただ、草原が広がっていた。
「………戻ろう」
そう言葉を漏らし、さっきの薄暗い部屋へ向かった。
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「……………で、戻ってみた訳だけど………、なにコレ?」
俺は青白く発光する球体をまじまじと見つめる。
………扉を開けたことによって光が入り、明るくなったこの部屋で、その玉を見つけた。
何かはさっぱりわからない……。
だが、生きているかのように一定のペースで発光するこの球体に不思議と親密感が湧いた。
俺はゆっくりと無意識に、その球体に手を伸ばす。
そしてそっと指先が触れる。
「?………何も起きない?」
と、そう口にした瞬間、球体が激しく光り……
『生体反応を確認。……マスターを【佐久間 由紀】に設定………、完了。
続いて、迷宮権限をマスター、由紀様に移行………、完了
初期DP10000を設定しました。
権限を使用する際は《システムコール》と念じてください。
これにて初期システム設定を終了します』
と、機械質な女性の声が狭い室内に響いた。
「はぇ?」
俺は今まで以上に混乱する。
ま、マスター?迷宮権限………?
なんだそれ?
なんかヤバイのに選ばれちゃったかんじ………?
…………本当に何なんだ………………?