鍛冶職人ダネル・ライマン
この日はダネルに特別な役目があり、ハジメを鍛冶場に呼び出した。炉ではごうごうと火が燃えている。
「さて、やっと俺の本来の仕事がでかなるわけだが……旦那、どんなもんを作ってほしいんだ?」
「うん、とにかく行商人に高く売れる物がいいんだけど……」
「それなら、売値を考えたら剣がいいだろうな。だが、ナイフも悪くない。」
「それはどうして?」
「ナイフはだれでもほしいからな。それに材料も少なくて済む。それに高くは売れないが、釘なんかも確実には売れるだろうな。」
「需要もあるか……」
(ゲームだと、とりあえず作れば売れるけど、現実はそうじゃないよな)
「じゃあ、まずは剣とナイフをいくつか作っておいて、よく売れる方を量産していこう。」
「おう、じゃあ次は剣を作るが、何か要望はあるかい?」
「うーん……あんまり分からないけど、使いやすくて、壊れにくいのがいいかな。」
「そうなると、スモールソードがいいな。基本的に使いやすくするなら、短くて軽いものを作る。だけど、壊れにくいかどうかは使い手次第だな。」
「分かった。じゃあ、それで!」
ダネルは大きなハサミのような道具で鉄の塊を掴み、炉の中に入れた。
「俺の魔法は、鉄を早く溶かす。」
ダネルは、この魔法を使って、昨日うちまでに鉄鉱石をインゴットにしていた。炉に空気入れのようなふいごで空気を送る。
数十分ほどで、鉄は赤々と熱を帯びた。ダネルはそれを叩きはじめる。力強い一打ちをすると、火花が飛ぶ。
「そしてまた、鉄を冷えにくくする。」
ダネルは休まずに鉄を打ち続け、しばらくするとまた炉に入れ、また叩き……これを繰り返し、鉄は剣の形になってきた。
「すごい、こんなに早く作れるなんて。」
「まぁ、俺の一打ちはそこらの鍛冶師の10回分だからな!がははは!」
「頼もしいよ。じゃあ、あとは頼む!」
「おうよ、旦那!」
ハジメは鍛冶場を後にして、壁作りの作業に戻った。
翌日、ダネルは出来上がった剣をハジメに見せた。
「こんな感じでどうだろう?」
テーブルの上には、レイピアにも近い、細身の剣が置かれていた。鍔は手元を守るよう4本、柄の方に伸びている。
「すごいよ!立派な剣だ!」
「うむ、なかなかの物だ。」
ブレイクもその出来に感心している。ダネルは誇らしげだ。
「何本かは、村の防衛用に使うとして、売るとしたら、1本いくらくらいになるかな?」
「うーん、そこらの村で売られる剣の相場は2000か3000。兵士用なら5000ってとか。となると、買い付けの段階では1500くらいなんじゃねーかな。」
「行商人殿がどう判断するかですがな。」
「へぇ~、ちなみに、ブレイクさんのその剣はいくらくらいしたんですか?」
「これですか?いやいや、まぁ……ほいくらか、ですかな。」
ブレイクは茶を濁して、その場から離れた。ダネルはこっそりとハジメに耳打ちをした。
「旦那、あれは騎士団長クラスが持つ代物だ。100000は下らないぞ。」
「じゅ、じゅう……!」
(もしも、もしもホントにお金がほしいときは土下座かな……?)
4日後に行商人が来たときに、剣を見てもらうと、1本1700ゴルドで売れることが分かった。魔石などと合わせて、14000ゴルドの利益をあげた。これで家畜の購入も見えてきた。ハジメは、現金の管理のために、そのうち金庫を作らなければとも思い始めた。




