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異世界コロニーシム、スタート!

自分だけすごい力が目覚めて、悪から世界を守ったり、テレビで活躍したりすることをよく妄想する。

でも人生はそんな華やかなものじゃないし、社会の歯車として働くのがほとんどの人の人生だ。

だけど、案外その生活も悪くはないし、こんなものだと割りきれば楽しく生きていられる。

そうやってなんでもない人として生きていくんだと思ってた。

あの日までは。


気が付くと真っ白い部屋にいた。

(あれ?俺の…部屋じゃない…?)

男は辺りを見回した。窓もドアもない見覚えのない部屋だ。

(確か、いつも通り部屋で寝てて、それで)

「夢か?」

男はぼやける頭で自分がどこにいるのか考えた。

「夢じゃないよ。」

「!?」

突然後ろから声がした。振り替えると10歳ほどの少年が立っていた。

「き、君はここの子?ここって病院か何か?」

「ここの子ではないし、病院でもないよ。」

「じゃあ、何なのかな?そもそもどうやってここに来たのかも…」

「君はここに連れて来られたんだよ。」

(「君」って、大人に対する口の聞き方!……まぁ待て、この子は何か知ってそうだし、話を聞くか。)

「うーん、じゃあここってどこなの?」

「ここは、言うなれば時空の狭間ってとこかな。」

「はぁ、時空の狭間…」

(現代っ子め。ゲームのしすぎだろ。ワケわからないこと言ってるよ。)

「いやいや、ホントだってば!」

「え!?…いや、信じてるって。」

(顔に出てたか?)

少年は不服そうな顔をしている。

「ま、いいや。とりあえず、君にはこれから新しい世界に行ってもらうんだ。」

「あの、まずは俺の質問に答えてもらってもいいかな?」

「うーん、それでもいいけど、どうやってここに来たかを答えても、これからの生活には役に立たないよ。」

「お、俺の心が分かるの?」

「あ、察しがいいね。」

(何なんだこの子は)

「あー、もうそろそろ行ってもらわないと。」

「行くってどこに?」

「うーん、悪いけど、詳しいことは着いてから誰かに聞いてみて!それで‐」

「!?」

男は異変に気づいた。少年の奥に見える部屋の片隅に線が入っている。さっきまではなかった線が。その線に沿って壁は割れ、ジェンガのブロックのように崩れて落ちていく。

「な、なんだ!?」

「ごめんね、時間だ。僕が言えることは……」

遂に部屋の崩壊は男の足元まで来た。崩れ落ちる床。男も底の見えない暗闇に落ち始める。男だけが。少年は平然と宙に浮き、落ち行く男に叫ぶ。

「これから君の新しい人生が始まるよ!」

「うわーーーーーー!!!」


男はもうこれまでかと思い、目を閉じた。

ドタン!

頭と背中に強い衝撃を受けて、目を開けると、鮮やかな朱色の天井が見えた。

「アンタ、大丈夫か!?」

キョトンとしている男に髭を生やした中年の男が声をかける。

「すみません、どうも…ん?」

髭中年の服はまるでゲームに出てくる中世の外国の村人のようだった。周りを見ても、同じように馴染みのない服を着ている男や兵隊のような格好の男ばかりだ。そればかりか、今いる部屋も西洋風の大部屋だ。香水のにおいがきつい。

(コスプレ会場か?)

「ははは、お兄さん、緊張しすぎなんだよ。いや、でも仕方ないか‐」

髭中年は朗らかに笑う。唐突に大きなドアが開いて、兵士が男を指差した。

「よし、次はお前だ。着いてこい!」

言われるがままに兵士に着いていく。

(廊下もレンガ造りで本当によくできているな。)

少し歩いて、階段を登るとひときわ豪華なドアの前に来た。

「ここからは王との謁見となる。粗相のないように。」

兵士はそういうと、ドアを開けた。

「おう?」

ドアが開くと煌めく装飾と紅のカーペットが眩しい部屋の奥に、これまたきらびやかな玉座に座る初老の王がいる。

男は、兵士に促されるまま王の前に進み、周囲と同じように膝を着き、頭を下げた。

(な、なんなんだこれー!ま、まさか……)

「ふむ、顔を上げよ。」

男は顔を上げた。王の風格というのか、威厳と落ち着きのある声が静かに響く。

「若いな、名前はなんと申す。」

「く、クニミ・ハジメです。」

「クニミ・ハジメ、と…。聞かぬ名だ。異国からの放浪者か?」

「東京に住んでますが…」

「トウキョウ…」

王だけでなく、周囲の兵士たちもピンとこないようだ。

ハジメはそこでこの状況を理解する1つの答えにたどり着いた。

(知らない場所、西洋中世の雰囲気、そしてこの感じ……これってやっぱり……異世界転生だろ!!!!)

「まぁ、よい。異国者だろうと、予言の通りであれば。突然呼ばれて困惑しているだろうから、簡単に説明をしよう。」

そう言って、王は深く座り直した。

「今我が国、グランリベットは領土拡大の計画を進めている。まだ未開の土地に人民を送り、村を作ろうということだ。しかし、なかなか成果を得られず、弱ったときに、どこからか現れた風水士が、「翡翠が装飾された指輪の男が未来を開く。」との予言をしていった。ものの試しに兵士を町にやったところ、そなたたちが見つかったのだ。」

「翡翠の指輪…?」

ハジメが自分の手を見ると右手の人差し指に白濁感のある緑色の石が小さく付いている指輪があった。こんなものを着けた記憶はない。王は話を続ける。

「そういうわけで、そなたには、これから、数人のキャラバンを引き連れて、村をつくるのにふさわしい土地を探してほしい。」

(これを成功させるのが俺が転生した理由なのか?)

「…まぁ、やることもないので、お受けいたします。」

「うむ、では、契約に移ろう。」

そう言って、王は右手を差し出した。

「汝ハジメは、このグランリベット国のために土地を見つけ、必ず我が国にその土地を献上することを誓え。」

(なんだこの儀式は?)

「答えよ。」

「あ、はい!」

ハジメが答えた瞬間に王の指輪とハジメの指輪がほのかに光った。

「ん!?」

「よろしい、明日の朝にでも出立できるように用意をしておく、今日はこの宮殿の客室に泊まるがよい。」

「あ、ありがとうございます!」

これからの生活について考えながら、ハジメは眠りに着いた。


翌朝早くに、ハジメは衛兵に連れられ、王宮の外に連れられた。そこには、4台の馬車があった。その内の2台の荷台には人の姿が見られた。ハジメは、衛兵に言われるまま、馬車の御者の後ろにある席に乗せられた。一緒に恰幅の良いおじさんも乗ってきた。

「よし、じゃあ、それぞれの目的地で頑張るように。一月に1回は連絡鳥を送るので、随時報告することを忘れるなよ!」

そう衛兵に言われて、ハジメを乗せた馬車は出発した。見送りは数人の衛兵だけだった。

ハジメは、王都を出るまで時間、街の様子をよく見ていた。建物はレンガ造りが多く、2階建ての家がきっちりと並んでいた。大通りの地面は石が敷かれ、文明の発達具合を感じた。そして、ハジメが気づいたことは…

(亜人はいない世界なんだな。)


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