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あの襲撃の次の日…私たちは兵士達に捕まった。

抵抗しようと思えば抵抗できるけど…どうしよう…


「うぅ、私達、何もしてないのに…」


兵士達に捕まって、私たちはすぐに地下牢に投獄される。

だけどすぐに兵士達がやってきて、国王様の前まで連れて行かれた。


「貴様らが行なった行為は国に対する反逆だ。

 よって、貴様らを処刑する。決行は本日!」

「ど、どうして!? 私たち何もしてない!」

「王である私の命令に背いた罰だ! あの世で悔いよ!

 そしてジェル、お前も同じだ…家族共々処す」

「お、お父さんは何も悪い事は!」

「貴様の意見など聞いてない!」


私たちは反論する余地も与えられず、処刑の言い渡された。

…いつでも逃げる事が出来る。私たちならいつだって。


「ごめんね…お父さん…」

「いや、良いんだ」


私たちは家族皆で殺されることになった。

リズちゃんの方も同じらしい。

ミザリーさんもミリアさんもリトさんも…

皆、処刑されるという決定になった。


だけど、誰1人として私達の事を責めなかった。

私たちは正しい事をしたんだと、そう言ってくれた。


「…お姉ちゃん、恐いよ…」

「うん、大丈夫…だから」


涙を流してるリンを撫でる…出来るだけ優しく。

どうして私たちが処刑されないといけないの?

私たちは何もしてない。まぁ、口が悪かったからね。

でもさ、それだけで殺しても良い程、人の命は無価値なの?


「…処刑まで2時間です…」

「……」

「……ジェルさん、本当にこのままで良いんですか?

 ジェルさんも娘さんも…その友人や仲間達だって

 国の為に…市民のために努力をした…それなのにこんな仕打ち」

「国王が決めた事だ…私には何も言えない…だが…

 だがせめて…せめて娘達だけは…」

「ジェルさん…」

「俺はどうなっても良い、酷い拷問を受けようと処刑されようと…

 だが、娘達と妻だけは…どうにかして…」

「あなた…」

「……ジェルさん」

「無茶なお願いなのは分かってる…だが、どうか…」


お父さんは看守の兵士さんに土下座をしてお願いをしている。

看守の兵士さんの目には涙が浮かんでいるのが分かった。


「ごめんなさい…私が」

「いいえ、あなたは何も悪くない。リズちゃんも悪くない。

 あなた達は必死に自分が正しいと思った事をしただけよ」

「……やはり、間違ってる…必ず…信じて下さい、ジェルさん」


処刑の時間を伝えてくれた兵士さんが小さな言葉を残し

私達の前から姿を消した。

処刑まで2時間…逃げようと思えば逃げられる。


「…時間です、ジェルさん」

「……やはり、家族の事も…か…」

「はい…出て来て下さい」」


私たちは迎えに来た沢山の兵士さん達に連れられて処刑所…へ?


「…何処に連れて行く? 処刑所はこっちじゃ無いだろう?」

「……国王は間違っている、あなた達は死ぬべきじゃ無い!」

「まさか! お前達国王に反旗を翻す気か!?

 そ、そんな事をすれば国民達はどうなる!

 国が無くなれば、国民達が危険に晒される!

 家族を助けてくれることは嬉しい! だが!

 今は魔物が活性化してる状態だ! そんな事になれば」

「こんな国である以上、誰も安心して過せるわけが無い!」


私たちは兵士さん達に連れて行かれ、下層の避難所へ案内された。

そこには沢山の市民達が待っていた。


「連れてきたわね、よしよし。流石ジェルの指揮下にある兵士!

 あはは! お父様のために命を賭ける近衛は少なかったって聞いたけど

 やっぱりあなたの為に危険に身を晒す部下は沢山居るわね!」

「な、リンカ姫様!? 何故!」

「それはね、あなた達をここに連れてこいと命じたのが私だからよ!」

「な…」

「ど、どう言うこと?」

「勇者の皆さん、私たちはあなた達の決意を聞いた!

 私たちはあなた達に死んで欲しくは無い!」

「どう言う…」

「リズだっけ、気付いてなかったの? 高らかに宣言したとき

 あなたの宣言は避難所に逃げてる人達全員に聞えていた。

 勿論、その場に居た私の耳にも届いた。


 そんな覚悟を持ってる、凄い勇者をおめおめと殺させる訳にはいかない。

 これはね、国だとかそんなの関係無しに、市民全員が選んだこと。

 私はその意見を聞いて、あなた達を助けることを選んだの」

「…リンカ姫様、そ、そんな事をすれば国王様に!」

「あはは! 優しいわね、ジェル。本当さ!

 もう、どうして私の誘いを断ったの? やっぱり格好いいし

 私専属の近衛兵になって欲しかったのに」

「え!? 誘われてたのお父さん!?」

「あ、あぁ…リンカ姫様に直々に…俺も部下を持つ身だったからな。

 出世よりも後世を育てることを優先してな…」


は、はぁ、流石お父さん…やっぱり出世頭だなぁ…

まさかお姫様にまで誘われるくらいだなんて。


「本当、なんでお父様はジェルを近衛にしようとしなかったのかしら。

 絶対に凄い近衛兵になれるのにさ! 全体のことを考えても

 ジェルを出世させて、兵士達に出世の可能性を見せた方が

 戦力増強には最高だっただろうに。


 でも、ジェルに付いていきたいっていう兵士が沢山居たわけだし

 ジェルを近衛にしなくても戦力は十分整ったと言えるけど。

 あんな選択をしなければ、そう言う可能性だったと思って

 お父様を見直したけど、ま、今回の選択で失望したよ。

 

 私たちにここまで尽くしてくれたジェルと

 私たちを必死に守ろうとしてくれた勇者候補達を

 まさか処刑だなんてね…本当に恩知らずのクソ親父よ!

 私を筆頭に反旗を翻してお父様を玉座から引きずり下ろす!」

「そ、そんな馬鹿な事はおやめ下さい! 無為に犠牲を出す必要は!」

「いいえ、犠牲は必要無いわ。まぁ、任せなさい」


リンカ姫が何かを企むように笑った後、国民達に号令を掛けた。

そして、国民達全員で最上階へ進み始める。

道中、見張りの兵士達は全員、私達の道を空けてくれた。

最上階の近衛兵達以外、全ての兵士が私達と戦う事を避けて

一緒に付いてきてくれた。


「な、何を! リンカ姫様!」

「退きなさい、近衛…お父様に用があるの」

「なりません、その者達を連れて上がらせるわけには!」

「うっさいわね、制圧して」

「はい」

「な、何をするお前! 離せ!」

「なら抵抗しろよ、近衛なんだろ? 一般兵相手に

 手も足も出ない癖に、良く近衛になれたな」

「き、貴様!」


近衛兵達はお父さんが指揮していた兵士達に全員手も足も出なかった。

たった1人の兵士相手に、近衛兵達は全員拘束された。

……ここの近衛兵って、実は弱いのかな?


「な、何の騒ぎだ! ッ! リンカ!」

「お父様を玉座から引きずり下ろしに来ました」

「何を馬鹿な! 何の真似だ!」

「国の為に忠を尽くしてくれた兵士であるジェル。

 我々を命を賭して助けてくれた勇者の方々

 そして、その家族を処刑するという選択に失望しました。

 よって、私達はあなたに反旗を翻させて貰います」


市民の皆や兵士の皆が私達の前に出て来た。


「な…き、貴様ら! 反逆する気か!?」

「もう、あなた達には失望しました…国王」

「ふざけるな! 近衛! 抑えろ!」

「生憎ですがお父様、もはや近衛は残っていないでしょう?

 先の襲撃で殆どの近衛兵が命を落とした。


 ですが、一般の兵達の被害も大きかったとは言え

 城内での戦闘では魔術師が魔法を扱えなかったとか。

 その結果、城内下層の防衛をしていた兵士の被害はほぼ皆無。

 …戦力差は歴然でしょう」

「ふ、ふざけるな…ふざけるな!」

「あなたが正しい選択をすれば、このような事態は避けられたのです。

 ですが、あなたは選択を誤った。

 国の為に戦ってくれた勇者と兵士を処刑するという最悪の選択をした。

 もはやこれまでですよ、お父様…あなたの悪行はこれで終りです。

 兵士達、取り押さえなさい」

「は」

「や、止めろ! 貴様らただで済むと!」

「尊敬する方を殺されそうになったんだ…あんたへの忠なんて微塵も無い

 俺達はあんたに付いてきたんじゃ無い! ジェルさんに付いてきたんだ!」


国王様や貴族の人達は反旗を翻した私達に為す術無く捕えられた。

そして、彼らは全員地下牢に運ばれることとなる。


「よしっと、これで後は私が入れば終りだね」

「な、何をいってるんですかリンカ姫様!」

「私も王族だからね、お父様達が捕まったなら私も捕まるべきだよ。

 でも、弟の方は勘弁してね、あの子は何も悪くないし」


じ、自分も牢屋に入ろうとしてるの? ど、どうして…

わ、悪い事はしてないし、誰もそんな事は望んでないのに…


「り、リンカお姉様…」

「ふっふっふ、リュウ君、お父様みたいになっちゃ駄目だよ?

 お父様みたいなことをしちゃったら、天罰が下るからね?

 大事なのは一緒に戦ってくれる兵士さんや国民達だからね?

 自分第一なんて考えたら駄目だよ?」


リュウ王子…心配そうな表情でリンカ姫様に駆け寄ってきた。

リンカ姫様は優しい表情でリュウ王子の頭を撫でながら

やっては行け無いことを優しく諭すように伝える。


「り、リンカお姉様が入るなら、ぼ、僕も入るよ!」

「もー、駄目だよ。リュウ君は悪い事してないでしょ?」

「お姉ちゃんもしてないよ!」

「だーめ、私はお父様達を捕まえちゃったからね」

「そ、それはお父様達が悪い事をしたからで、リンカお姉様は悪くないもん!」

「そ、そんな事言われてもなぁ…」


自分も牢に入ろうとしているリンカ姫様だけど

リュウ王子に必死に止められて、少し困った表情をしている。


「リンカ姫様…リユース王子の言うとおりです。

 あなたは何も悪い事をしていません…ですので、これからは国王の代わりに」

「な、何? ま、まさか私が王様の代わりすんの!? 駄目駄目! 私は無理!

 そ、それはほら、ジェルの役目だって、次期国王はジェルだって!」

「いいえ、私なんぞに王など務まりません。私は仕えることしか出来ぬ身です。

 私なんぞが王になってしまえば、国民達が不満を抱いてしまいます。

 ですので、あなた様が次期王になるべきなのですよ、リンカ様」


兵士達も国民達も一緒になって、リンカ姫様に次期王になって欲しいと伝える。

まさかお父さんを王様にするつもりだったなんて予想外だけどね。

でも、お父さんがそれを拒むのは予想通りだった。


「…だ、駄目だって、わ、私はほら、そう言う器じゃ無いし…

 そ、それはリュウ君の仕事って言うか…」

「であれば、リュウ王子が成長するまでの間だ

 あなたが国を率いて下さい。

 ここに居る者達はあなたに付いてきたんです。私では無い」

「……で、でも、私に女王様なんて務まるの? ま、まだ小さいよ?

 まだ14だし…い、一応そう言う知識は学んでるけど…」

「大丈夫だよ! 決意があれば何とかなる! 多分!」

「…あ、あはは、あ、あのねリズだっけ、王様って大変なんだよ?

 私の選んだ道で国というか、沢山の人が危ない目に遭うんだよ?」

「だったら、自分の事が嫌いにならない選択をし続ければ良いよ!

 私は王様ってよく分からないけど、私はそうやって今まで頑張ってきた!

 勿論ね、後悔する事だってあったけど、最後に笑って過せれば

 昔選んだ選択は、全部正しい選択になるって分かったんだから!」

「……もう、王様と1人の人間じゃ…違うよ…なーんて思ったけど

 王様と勇者様だったら、そりゃ勇者様の方が大変かな。

 ……うん、分かったよリズ…私、立派な女王様になるよ!」

「うん!」


リズちゃんとリンカ姫様が笑顔で力強くお互いの手を握った。

リンカ姫様の目には確かな決意が見えた。


「…よし、はい握手しましょ? エル」

「え? わ、私も?」

「そりゃそうよ! 勇者様と握手ってのは王様ならやるっしょ!

 いやぁ、凄く名誉だね! 勇者様2人と握手が出来る何て!」

「わ、私は勇者なんかじゃありませんよ…でも、握手なら。

 すみません、ちょっと手が汚いかも知れませんけど」

「大丈夫! 多分、リズって子の方が汚いし」

「えぇ!? さらっと酷いよ!」

「なーら、自分を労りなさい。ふふ」


私もリンカ様と握手をした…うん、とてもとても…名誉な事だよ。

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[気になる点] >>ちゅ、中学生くらいだし…い 小中高の学校制度があるのかないのかわからないけど、中学生という言葉ではなく、年齢で書いた方が無難な気がしますね。他、まだ成人していないよ?とか子供がやっ…
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