国を目指して
長い間滞在したロッキード王国から
私達は帰る事になった。
私達の目的は達成されてアンデッドも退けた。
リトさんがやり遂げたかったクロノスの討伐も出来た。
だけど、私達は再びここに来ると言うことが確定してる。
「はぁ、何だか長い間滞在してたような気がするわ。
と言っても、まだ1週間とちょっとしか滞在してないけど」
「仕方ありませんよ、まぁ国から帰還の指示が来ればね」
私は詳しい事情は知らないけど、私がブレイズお姉様に付いていって
その1週間程度の間に国からの帰還命令が来たらしい。
だけど、リトさん達はその帰還命令よりも私の奪還を優先した。
「…ごめんなさい、私のせいで…」
「何言ってるのさ! エルちゃんよりも大事な事は無いよ!」
「…あはは、ありがとうね」
「まぁ、帰還命令と言っても
即座に帰還せよとかじゃ無いんで大丈夫ですよ」
「そうだな、だからエルが気にする必要は無いさ」
「ま、エルちゃん奪還のついでにドラゴンの素材取れたし
私は大満足って奴よ。エルちゃんも奪還できたしね」
皆、私に気を使わせないために、そんな事を…
あぁ、何だろう…凄く、懐かしい気がする。
こんな毎日は…凄く懐かしくて…
(エビルニア、魔法教えてくれよ)
(エビルニア、そろそろ休みましょうよ)
(エビルニア、召喚魔法教えてあげる)
(エビルニア、僕、魔法文字知りたいんだけど)
……毎日毎日、楽しかった…楽しかった筈なんだ。
辛い事もあった、恐ろしい思い出だって勿論あった。
だけど、それ以上に…楽しかった思い出の方が…多い。
私は裏切った、私は恐怖に負けて裏切った。
ブレイズお姉様が言うには……あの選択は正しかった。
私しかお父様は倒せなかったから…でも、そんなの…
受入れられる筈が無い。何か別の方法だって…きっと…
なのに私は…自分に負けて…最後だって結局…自分に負けた。
あの時、お父様を倒そうとした時だって…
あの時、私が非情になれたら…それで終わってた筈なんだ。
お姉様達やレイラードを…捨てる選択が出来ていれば…
出来ていれば…私はきっとお父様を倒せたはずなのに。
「しかし、エルがエビルニアだったのは予想出来てたが驚いたな。
でも、合点は行ったよ。エルがあそこまで強い理由がな。
そして召喚獣を呼び出せるのも納得だ」
「…200年前の仲間の真似をしたんです。
そしたら召喚出来て…」
「200年前の仲間…あぁ、あのサモナーの子か。
名前は確か…リンカ。暗そうな性格だが根は前向きだったな。
サモナーは可能性、確かそう言ってたかな。うろ覚えだが」
「はい…でも、サモナーはもう…だから、リンカの夢は…」
「サモナーはもう? ふふ、馬鹿を言うな。まだ生きてる」
「え?」
「エル、君が生きてるんだ。サモナーはまだ滅んでない。
まだサモナーの可能性は潰えてないんだ」
……ミリアさんに言われるまで、私はまるで気付かなかった。
サモナーの技術も潰えて、魔法文字も殆ど衰退してる。
だけど…サモナーの技術も魔法文字も全て知ってる存在…
それが私だ…天才魔法使いの技術を学んで
世界一のサモナーからも技術を学んだ…私が居るんだ…
サモナーは滅んでない…私が…生きてる限り…
「……」
「まだ可能性はあるだろう? 暗そうな顔をしてたからな。
昔の事でも思いだしてるのかと思ってお節介を焼かせて貰った。
200年前の事を唯一知ってるのは私だからな」
「あぁ、そう言えばそうですよね。サモナーは噂だけですが
考えてみればエルさんが居るならば技術も継承できますね。
サモナーが復活することだって、きっと可能でしょう」
「そ、そう…ですね、そうだ…私はまだ…」
「おぉ! じゃあ、私に呼び出す方法を教えてよ!
私も可愛い狼ちゃんを出して、一緒に戦うんだから!」
「でも、サモナーは魔物に近い人じゃ無いと使えないんだよ…」
「えぇー!? じゃあ、私無理なの-!?」
「その理論で言えば、一応巨人である私は召喚出来るのかしら」
「確かにリトさんなら…魔法文字を勉強すれば召喚出来るかもしれません」
「ま、魔法文字…あのグチャグチャしたよく分からない線みたいな奴?
ほら、エルちゃんの部屋に書いてあった…って、あ、そう言えば…」
少し急ぎ気味で移動してるわけだけど、さっきの会話で何かに気付いた。
「……私達すぐに国に帰れるじゃないの…」
「……あ、あぁー! わ、忘れてたぁ!」
「……だ、大丈夫でしょうか、この人達」
「ミザリー、お前が言えた事じゃ無いぞ…私もだが」
「あ、あはは…わ、忘れてましたね…」
私は軽く魔法陣を地面に描きマジックバックと繋げる。
そこに手を入れて、自分が持ってる紙を取り出した。
「べ、便利ねそれ…何処でもマジックバックと繋げられるって」
「あはは、頑張って再現しましたからね、じゃあ飛びましょうか」
「えぇ、あ、皆はあの紙持ってる?」
「うん!」
「はい、一応は」
「大事だからな…忘れてたが」
「じゃあ、使いますね!」
自分の紙に魔力を込めてしばらくの時間が経って転移が開始した。
「よし、無事に」
「うわ!? 何!?」
私達が国に戻ると同時に激しい揺れが襲った。
どう言うこと!? 何がどうなってるの!?
い、急いで状況を確認しないと!
 




