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ロッキード王国奪還作戦

ロッキード王国の前まで、私達はやって来た。

ミザリーさんは結局はお留守番になったけど仕方ないかな。


それにしても…ロッキード王国は酷い状態だ。

門は無残に吹き飛び、城壁も何カ所も穴が開いていた。

中からはゾンビ達のうめき声が聞えてきている。


迎撃したときよりも数が多いのは…間違いない。

何処でどうやってこれだけのゾンビを新調したんだろう。

あの間にクロノスはどれだけの人を襲撃したんだろう…


「ゾンビのうめき声が多いわね」

「はい…」


私達は兵士達に案内して貰い、城壁の上に移動した。

ここでどれだけ被害が出てるのかを確認するために。


「……被害は相当ね。人死にが出なかったのが奇跡としか思えない。

 とは言え、建物にそこまで大きな被害は出てないようね。

 血飛沫とかも見えないから、死者はやっぱり皆無、逃げ遅れは無しね」

「城門や城壁が何カ所も穴だらけだったのは何故でしょう?」

「クロノスが破壊したんでしょうね、ゾンビを侵入させるために。

 ミリアの拒絶魔法とやらが解除されるまで1日あった。

 その間、拘束されちゃって腹でも立ってたのかもね」

「そうだろうな、城壁は穴だらけ。

 しかし、建物に被害がないのは何故だろうか。

 怒りをぶつけるなら、建造物にも向いそうだが」

「再利用したかったのか…まぁ、ゾンビをかなり滞在させているのなら

 こんな風に建造物は残しておいた方が良いでしょうね。

 ゾンビは明るい所より暗いところが好きだからね。

 まぁ、日が出てる中でも活動は出来るんだけど」


ゾンビは基本的に日光を嫌う。日光に晒されたら死んでしまうとか

そう言う訳では無い。一応、そう言う種類も居るには居るけど

全てのアンデッドがそうであるという訳では無いんだよね。

通常のゾンビであれば、日光で死にはしない。


活動が若干鈍るだけで、獲物が居れば日光の下だろうと出てくる。

だから、アンデッドが多いのであれば、建造物を残すのは当然かも。


「巨人のアンデッドは視認出来ない、やっぱり用意できなかったのね。

 あいつらが居れば、建造物がかなり潰れてたでしょうね」

「ゾンビばかりだったのが幸いしましたね」

「えぇ、建造物が殆ど無事なら、奪還した後の復興も早いわ」

「じゃあ、早く奪還しないとね! 頑張ろう! でも、何処を狙うの?」

「兵士達はゾンビ達の撃破をお願いしようかしら。

 私達は本丸を潰しに行くわ」

「本丸というと?」

「クロノスよ、恐らく城に居るはず」


リトさんがロッキード王国の城に指を向けた。

そして、少しだけ苛立ってるような表情を見せ親指を下に向ける。


「必ず潰してやるわ! クソ魔術師!」

「あぁ、必ず倒すぞ!」

「えぇ! 兵士達! あなた達は国の奪還優先!

 ゾンビの大半は建造物に身を潜めてる! 暗がりに警戒しなさい!

 ゾンビは薄暗い所が好きだからね! 背後に常に気を配って!」

「はい!」

「私達は城を叩く! あそこには襲撃の首謀者が居るはずだからね!

 あいつが居る限り! アンデッドの脅威は終わらないんだから!」

「しょ、少数で大丈夫なのですか?」

「私達を舐めない事ね、少数だろうと必ず生きて帰ってきてやるわ!

 必ず撃破してやる…あのクソ魔術師は私が殺す!」

「リト、落ち着け。今は最低限撃退だけを目指すんだ。

 殺すよりも奴をこのロッキード王国から追い出すことを優先しろ」

「わ、分かってるわよ…ミリア…ただちょっとね、怒りを抑えきれない」

「感情に振り回されるな…お前は勇者候補達の見本…

 いや、今この場においては、お前は勇者2人の見本だ」

「……分かったわ。最低限撃退、これさえ叶えば深追いはしない。

 確かにここで長期戦になると国民達に合せる顔が無いからね。

 短期間で奪い返して、短期間で人々を安心させる。それが最重要!」


リトさんが大きく拳を振り上げた。

その振り上げた拳を兵士達が全員見る。


「アンデッドは頭を潰しなさい! 人の致命傷はゾンビの致命傷よ!

 素早く勝負を着けて、国民達に安寧の報を! 確実に排除するわ!」

「おぉぉおー!」

「あんたらの国を奪った死体共に恐怖の感情を蘇らせなさい!

 勇ましき軍靴とけたたましい雄叫びを響かせましょう!

 全員、掃討開始! ゾンビは1匹残らず排除しなさい!」

「進めぇぇぇ!!」


リトさんの号令により兵士達が一斉に進み始めた。

まさしく波の様だった。ゾンビ達はその異変に気が付き

建物から姿を見せるが、一瞬のうちに波に呑まれ排除される。


けたたましい雄叫びが静寂に包まれていたロッキード王国を覆った。

大地を揺らす程の力強い足音、空気さえ揺らす程の雄叫び。

ロッキード王国の兵士達は止まること無く進軍する。


「私達も行くわよ! 狙うは城! 兵士達の勢いに負けないで!

 私達は強い! 兵士達の犠牲をなくす事が出来るほどに!

 迷わず真っ直ぐ城に進むわ! 付いてきなさい!」


私達も兵士に負けじと全力で進軍する。

私達の数は少ないけど、実力は凄まじいんだ。

私達だけでロッキード王国を救えるかも知れないほどに。

だから、私達が怯むわけには行かない。

私達は今、ロッキード王国の勇者なんだ。


「雑魚は一撃で屠る!」


道中、飛び出してくるゾンビ達はリトさんが一撃で屠る。

正面の相手は全てリトさんが排除してくれた。


「私も負けない! だって私は勇者候補だから!」


左右から飛び出してきたゾンビをリズちゃんが迎撃した。

1体は首を蹴り飛ばし、もう1体はナイフで頭部を切断した。

短い間に的確に相手を一撃で仕留めていく2人。

やっぱり接近戦でこの2人の実力は飛び抜けてる。


「はん、無駄に数が多いわね!」

「道を開きます! 進みましょう!」


道を塞ぐように何匹ものゾンビ達が正面から出て来た。

私はすぐに自身の周囲に魔法陣を展開して

何本ものマジックアローで正面のゾンビ達を貫き、撃ち倒す。

殲滅力が最も高いのが私の魔法なんだから!


「ナイス! 道が出来たわ! そのまま進む!」

「ゾンビは数が多くて厄介だな」


唐突に側面の建物の2階からゾンビが飛び出してきた。

ミリアさんはすぐに防御魔法を使い、ゾンビの攻撃を防ぎ

すぐさま弓矢を構え、ゾンビの眉間を撃ち抜いた。


「私は本来後衛だと思うんだがなぁ」

「ミリア、あんたナイフも扱えたでしょ? 前でも戦えるって」

「確かに狩りの為にナイフはいくらか扱えるが」


そんな事を言いながら、飛びかかってきたゾンビの首を斬った。


「素人程度なんだよ、私の場合は」

「はっ! 説得力の欠片も無い言葉ね!

 飛びかかってきた相手の首斬って、何処が素人程度よ」

「ふふ、私がいつ、対人でナイフを扱うのが素人だと言った?

 狩りでナイフを使うのが素人なんだよ、基本は弓矢だからな」

「へぇ、そりゃ頼りになるわね!」


やっぱりリトさんの攻撃力は流石だった。

会話をしながらでも、不意に飛びかかってくるゾンビを

綺麗に真っ二つに両断し、一撃で仕留めた。


「やっぱり凄いね2人とも! 私ももっと頑張らないと!

 ゾンビになっちゃった人達には悪いけど…容赦なく倒すよ。

 きっとこれが1番の救い…そうなんでしょ? リト姉ちゃん」

「えぇ、アンデッドになった以上、もう救う事は出来ない。

 腐った死体として動き続けるよりは、ただの死体になった方が良い。

 そうなれば、きっと心優しい誰かがちゃんと葬ってくれるのだから」

「うん…頑張る! でも、それだと綺麗なままの方が良いのかな?」

「いや、一撃でもう動かないで良くなる方が、きっと良いでしょ」


リトさんはドンドン切断してるからね。

きっとそれはある意味では優しさなのかも知れない。

これ以上苦しまないように、せめて一撃でと言う…そんな優しさ。


「分かった、じゃあ一撃で! エルちゃん!」

「分かったよ! 1人じゃ2重強化は難しいもんね」

「うん、まだまだそれは出来ないから、お願い!」

「任せて!」


私はリズちゃんを2重で強化することにした。

脚力と筋力の強化。普通なら扱いきれない2重強化でも

リズちゃんは当たり前の様にその状態を扱う。


「はぁ!」


リズちゃんが周囲を飛び交いながら、何体ものゾンビを倒す。

1人を倒したと同時に、近付いてきた1人にナイフを投げて倒し。

すぐにそのナイフを引き抜くと同時に背後のゾンビを蹴り上げる。

蹴り上げた後、体を回転させる合間に近くの2人の首を裂き

落下してきた蹴り上げたゾンビを蹴り、正面の5人のゾンビを吹き飛ばした。


「結構数が多くても、今の私なら勝てる!」


素早い動きだった、本当に強化魔法を完璧に物にしてる。

ここまで素早く強化魔法を制御出来るのはきっとリズちゃん位だ。


「よし、良いわね! このまま行けるわね!?」

「はい!」

「うん!」

「任せろ!」

「よし、突撃! 必ずクロノスを殺す!」


城の出入り口をリトさんが蹴破り、私達はなだれ込むように城内に入った。

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