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ロッキード王国へ向けて

よし、私達は絶対に一歩進むぞ。

このままだと良い扱いされないみたいだしね。

お父様を倒すためにも、私達は進まないと。


「では、行きましょうか」

「うん」


依頼の結果を聞いた後、私達は戦いに備えて準備をした。

そして当日、私達はリリアン姫と合流する。


「あ、皆様! この度は危険な依頼を引き受けてくださり

 本当にありがとうございます! これで私も安心ですわ」

「いえ、我々程度、大した戦力にはならないと思います」

「そんな、ご謙遜を。私は確かに聞いたのです。

 巨人アンデッドを一瞬で撃破するあなた方の勇士を。

 しかし、この目でその勇士を見たわけではありません。

 ですので、どうか私にあなた方の勇士をお見せくださいませ」

「はい、お任せください。必ずや勇者候補達の力をお見せしましょう」

「リト姉ちゃん、何か喋り方変だよ?」

「お姫様の前でしょ、あなたはもっと畏まりなさい」

「いえいえ、私なんかに畏まる必要はありませんわ。

 むしろ、私の前では自然の姿で居てくださいませ!

 その方が私もきっと楽しいですわ!」

「だってさ!」

「そ、そうは行かないって…あなたは少し自重しなさい」

「えー…」


でも、リズちゃんは地位とかそう言うのに興味が無いからね。

一緒に馬車に乗って移動を始めた後だって

何度リトさんに注意されても、やっぱりいつも通りのままだった。

リリアン姫もかなり楽しそうにリズちゃんと話をしてるけど

何か変な事したりしなければ良いけど。


「……あの、リトさん…何故我々は当たり前の様にリリアン姫様と共に

 馬車の中で過ごしているのでしょうか…他の兵士は外ですし

 私達も外を歩いた方が良いのでは?」


こんな状況に慣れているはずが無い私達だけど

特にミザリーさんの動揺は激しい物だった。

声も震えてるし、体も震えてる。大丈夫かな?


「ミザリー、声若干振るえてるわよ?」

「そ、それは振るえますよ、だって…ねぇ」

「皆様は私が依頼をして来て貰っているのです。

 お客様の様な物ですし、おくつろぎになってくださいませ」

「し、しかし…我々のような下々の者と同席など…」

「何をおっしゃりますか、皆様は国を守ってくださった英雄です。

 その様に謙遜しないでくださいませ。あなた方は私なんかよりも

 とてもとても偉大な方々なのですから」

「そ、そんな滅相もない!」


うーん、1国のお姫様にここまで言われると何だか抵抗があるよ。

でも、お姫様の中ではそう言う事になってるのかも知れない。

それはまぁ…素直に嬉しいとは思うけどね。

評価してくれている相手に嫌な感情は基本的に湧かないし。


「何者だ! それ以上近寄るな!」


外から兵士達の声が聞えて、私達はすぐに外を見た。

何だろう…あれ…人に見えるけど…でも、普通という風には見えない。


「……」


外に居た人物は無言のまま両手に剣をだす。

その動作を見た兵士達は一斉にその人物に攻撃を仕掛けた。


「…何だ全く…襲撃者か? 1人で来るとは間抜けだな」

「身元を確認しろ、何処の人物か調べろ」

「はい」


兵士の1人がゆっくりと矢が全身に突き刺さった人物に近寄った。

ある程度接近し、倒した人物の前に伏せたときだった。

唐突に彼の背中から2本の刃物が飛び出し、血が飛び散る。


「な!」

「嘘だろ! おい! あれだけの矢を浴びて…」


近寄った兵士が投げ飛ばされて

血まみれになったさっきの人物が立ち上がった。

そう言えば、あれだけ矢が突き刺さってるのに血が出てない!


「クソ…どうなってる!」


兵士を1人倒した後、先ほどの人物はこちらに素早い速度で接近。

すぐに2人目の兵士の前まで移動した。


「ひ…」


兵士の1人が気の抜けた声を出す。

死を覚悟したんだろうけど、それは許されない!


「全くこの死に損ない!」


兵士の1人が殺される前にリトさんがその人物を蹴り飛ばした。

すぐに私達も馬車から飛び出して臨戦態勢を取る。


「意識ある死者の1人と言った所かしら、上位種ね。

 死鬼だとかそこら辺とは違うんでしょうけど

 多分クリムゾンデッドの綺麗な姿でしょ?」

「クリムゾンデッド?」

「えぇ、ゾンビの上位種というか殆ど別種だけどね。

 しかし、それが単独で来るとか馬鹿にしちゃって」

「……」


クリムゾンデッドはリトさんの姿を見た。

だけど無言のまま剣を取り出す。

そのまま正面から私達の方へ寄ってきた。

かなりの移動速度。私達へすぐに接近する。


「移動速度、他のクリムゾンデッドより早いわね」

「死者の支配者なるクロノスが居たわけだからな。

 特別な個体も用意してるんだろう」


私達への攻撃はミリアさんの防御魔法が阻んだ。

攻撃を防がれたクリムゾンデッドは大きく仰け反る。


「まずは1回目、これで2回目かしらね!」


大きく仰け反ったクリムゾンデッドをリトさんの巨大な斧が襲う。

大きく仰け反っているクリムゾンデッドにこれを避ける暇など無く

一撃でクリムゾンデッドは真っ二つに両断された。


「おぉ! 流石リト姉ちゃん! これで終りだね!」

「まさか、クリムゾンデッドの嫌な所があるのよ。

 クリムゾンタイガーの上位種だし、魔法も扱う場合がある

 それに普通ならこれで終りでしょうけど、意識ある死者ってのは」

「うわ!」


真っ二つに両断されてる状態でも動く。

意識ある死者は耐久力がえげつないのは知ってるけど

まさか真っ二つになっても動けるなんて…


「ま、すぐにハイハイ状態になるんだけどね!」


攻撃を避けると同時に、リトさんは真っ二つになった

クリムゾンデッドの半身に巨大な斧を叩き付けた。


「こいつらは5回殺せばもう動けなくなるわ。

 5回も致命傷を与えるのは面倒だけどね。

 クリムゾンタイガーは2発だったかしら。

 ま、こいつはあと2回、致命打を与えれば良い」

「でも、もう殆ど動ける状態じゃないよ!?」

「放置してたら再生するから、今のうちに殺しきらないと駄目なの。

 だから、こいつは仕留めきらないと被害が甚大になるわ。

 単独でもここに居る兵士を全員倒せるくらいには強いんだから」

「えぇ!?」

「クリムゾンデッドに痛覚はない。完全にバーサーク状態よ。

 私みたいに一撃で真っ二つに出来れば後は楽だけど

 ただの剣でこれだけの破壊力は無いでしょう?

 弓矢とかの遠距離攻撃じゃそもそも怯まないから制圧できないしね」

「バランスは崩すみたいだが、流石にここまで頑丈なのは厄介か」

「そう言う事、だから殺しきる必要がある。アンデッドの場合は

 大体が殺しきらないといけない種族なんだから」


リトさんは容赦なく2発目の斧をクリムゾンデッドに叩き付けた。

最後に頭部を踏み砕き、クリムゾンデッドの動きが止まる。

リトさんは少しだけ悲しそうな表情をしているように見えた。


「リト姉ちゃん…そ、そこまでしなくても…う、動けないなら」

「アンデッドになった連中に対する救いなんて殺す事だけよ。

 リズちゃん、あなたは優しいからね、覚えておきなさい」

「でも…」

「これ以上、被害を出したくないならクロノスを倒す事ね」

「う、うん…」


リズちゃんに少しだけ言葉を掛けた後

リトさんは死んだ兵士の元へ移動した。


「ちゃんと火葬はしてあげるわ。

 アンデッドになんかにはさせない」


私達は死んでしまった兵士を火葬した。


「……あなたの大事な家族にはお伝えしますわ…

 今までありがとうございます…」


火葬した兵士さんの遺骨を手に取り、姫様は小声で呟いた。

唐突のSSランクモンスターの襲撃に対して犠牲者は1人だけ…

本来なら喜ぶべき戦果だけど私達は素直には喜べなかった。

でも必ず、国を取り戻すって約束する、私達の手で。


この襲撃後も何度か襲撃は受けた、でもこの件があって

襲撃があれば、まず私達が出る事にした。そうすることで

被害は非常に少なくなり、ロッキード王国到着までの犠牲者は

最初の兵士さん、ただ1人だった。

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