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疑問

魔術師さんが拘束された牢獄。

既に彼女は逃走の危険は薄いと判断されてる。

でも、警備はやっぱり厳重だった。でも面会は出来た。


私達がいるからか、兵士達は誰も見張ってない。

面会の時だって、誰1人周りに兵士は居なかった。

少し警備が甘すぎるような気がする…


「どうしたの? 面会だなんて。あ、逃げてないわよ?

 1ヶ月後処刑って聞いたけど逃げなかったし。

 それもあって警備は大分甘くなったけど」

「あなたが逃げようとしてるかどうかを聞きに来たんじゃ無い。

 今回はちょっと知りたい事があってね…何か兵士に話したりした?」

「一応、当たり障りがない位には」

「全部は話してないのね」

「信頼が置けない相手には話せないしね」

「…ねぇ、私達には話してくれる? 兵士は居ないわ」


そうだよね、何処を見ても兵士が居ない。周囲を探知してみるけど

全然居る気配がない…うーん、でも探知魔法しんどいかも…


「……ねぇ、あなたはどうしてあの子が勇者候補だと知ったの?

 そもそもどうやってあの場所に勇者候補が来ると、知ったの?」

「勇者候補の依頼は基本的に私の様な専属の受付嬢が取り扱います。

 受付嬢通しであれば依頼の内容は知ることが出来ますが

 一般の方々が依頼の情報を得る手段はほぼ皆無です。

 ましてや敵対しているあなたに情報が漏れるなんて事」

「偶然…と、言って信じて貰えるわけがないか。

 ま、あなた達だし…確かに冒険者の数は多いし

 その内の1人が勇者候補で襲うことは普通は難しい。

 勇者に特別な魔力だとかそう言うのがあれば話は別だけど

 残念ながら、そんな都合の良い何かしらは存在しないわ」

「じゃあ、どうして彼が勇者候補だと?」

「……ねぇ、どうして私が勇者候補に希望を抱けないのか…分かる?」

「弱いからじゃないの? 最初あったときそう言ってたし。

 あ、後は魔王の娘に襲われて実力差を知ったからってのも」

「それが確かに大きな要員…だけど、他にもある」


その話は全くしてなかったと思うけど…一体何が…


「まぁ、話しもしてなかったけど…勇者候補達が

 何だか協力してるんじゃなくてお互い足を引っ張り合ってるんだよ」

「え?」

「勿論、あなた達2人はちゃんと協力してたし

 お互い確かな目標へ向けて歩んでる。

 そんな勇者候補もちゃんと居るんだというのも分かって

 少しだけまだ可能性はあると思ったというか…」

「ど、どう言うこと? 普通は協力するじゃん…

 だ、だって私達は魔王を倒すために頑張って…」

「多分…魔王を倒すために頑張ってるのは…あなた達だけ」

「……どう言う事!? そんなはず…」

「そうなんだよ…もし本気で魔王を協力して倒そうとするなら

 仲間の勇者候補の場所を教えるわけがないんだから」

「は…ど、どう言うことですか!?」

「考えてみて、どうして色々な勇者候補が襲われてると思う?

 あなた達の情報管理がずさんだから? ギルドにスパイが居るから?

 ならどうして、あなた達は襲われなかったの?


 ギルドにスパイが居るなら、あなた達の実績を見れば危険と判断する。

 勿論、最優先に潰そうとする…けど、今まで襲われなかったし

 私はあなた達が勇者候補だと言う事を知らなかった」


そう…だよ…勇者候補を襲ってる組織が居るなら…

い、1番難易度の高い依頼をこなしてる私達が邪魔になるはず…

邪魔なら戦力を集中して襲うか、奇襲をすれば良い…

もしスパイが居るなら、私達の事は知ってるはずだから…でも…


「……そんな…馬鹿な事が…」

「だから私は勇者候補に希望を抱けなかった。

 弱いのも大きいけど協力をする気が微塵もない奴らに」

「……ね、ねぇ、ど、どう言うこと…なの?

 ど、どうして…どうして勇者候補だって分かって…」

「本当は分かってるんでしょ? いくらあなたでも分からない筈がない。

 ここまでの情報が開示されたんだから、分からないはずが無い」

「……あ、あぁ…つ、つまり…」

「……勇者候補の誰かが…情報を渡したんだよ…邪魔な相手の情報を」

「……」


私の言葉を聞いたリズちゃんがヘナヘナと力無く床に座り込んだ。

リズちゃんにとって、これは衝撃的すぎる事実だった。

魔王を倒すために協力して戦うのは当然だと考えてるリズちゃん。

そして、人を信じている彼女にとって、この事実は衝撃的すぎる。


「……勇者候補は…同じ仲間じゃん…どうして、そんな…」

「勇者候補を同じ仲間だって考えてるのは、私達だけなのかもね。

 他の連中は邪魔な相手としか思って無いかも。

 名をあげる上で邪魔な存在だって…」

「名前なんてどうでも良いじゃん…辛い思いをしてる人を助ける。

 そ、それが勇者候補じゃん…自分の事なんてどうでも良いじゃん…

 強いから、弱い人を助ける…それが勇者候補の…やるべき事…」

「そう思ってるのはあなた達だけかも知れないと言う事よ。

 だけど、全ての勇者候補がそうじゃ無い…私はね

 あなた達に出会って、その事に気付いた…ありがとう」

「……」

「でも、だとすればどうして私達の情報は渡されなかったんですか?」

「先ほども言いましたが、あなた達は勇者候補から最も遠いのです。

 それに国に取って都合の良い存在だと言う事は

 他の勇者候補からしてみても都合の良い存在だと言う事。

 それに危険な依頼も多いので、何処かで死ぬと想定されてるんでしょう」


確かに普通なら死んじゃうような依頼ばかりだからね。

だけど、それを切り抜けてきてる。


「でも、いつか邪魔だと睨まれるかも知れない。気を付けてね」

「……はい」

「ありがとう、そんな危険な話を私達にしてくれて」

「え? き、危険ってどう言うこと!?」

「もしこの事を誰かに聞かれたら、彼女は邪魔者とされるわ。

 最悪、獄中で殺されるかも知れない…」

「そ、そんな!」

「あなたもそれを分かった上で話したんでしょ?」

「まぁね…あなた達への協力を惜しむつもりはないから。

 私に取って、あなた達は確かな希望。

 薄汚れた人類の中に埋もれた純粋で美しい人達。


 あなた達は勇者になる。どっちが勇者かは分からないけど

 例えどちらが勇者だったとしても、あなた達なら必ずやり遂げてくれる。

 私はそう信じてる。お願いね、どんな真実を前にしようとも

 あなた達は踏みとどまらないで、ひたすらに進んで」

「……うん、ありがとう。私達、頑張るよ」

「えぇ、それで良い。頑張ってね、勇者さん

 私をガッカリさせないでね? 信じてるから」


彼女に話を聞いた後、私達は自分達の部屋に戻った。

…衝撃的な事実をリズちゃんはまだ受け止めきれて居ないけど

それでも彼女は前を向くことを選んでくれた。

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