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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第4章、異常なアンデッド達
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リスデットの過去

しばらくして、ミザリーさんがやって来た。

そして、リトさんが自分の過去を語り始める。


「じゃあ、話すわね。これは私の昔話。

 今頃、何を言っても変るわけじゃ無いけど。

 この過去は私に取って、大事な過去だからね」

「うん、教えて」


昔の私ってね、最初のリズちゃんと同じ様な感じで遊びがなかったの。

毎日の様にひたすらに筋トレばかり。生まれ持った怪力を生かすために

私は自らの怪力を上げて、強くなることに重きを置いていた。

必死に強くなって、強い私は強くなって皆を助けないと駄目だってね。


その時はひたすらに使命感にかられて、私は行動していた。

使命感。強いから弱い人達を助けないと行け無いと言う使命感。

そこに遊びはないし、やりたいからやってたという感覚は無い。

ただひたすらに強いのだからやらなくては駄目だと思って動いてた。


勿論、笑顔なんて作った記憶も無いわ。

笑顔は必要無い、不要だったんだから。

助ける為に笑顔を作る必要は無いと私は思ってた。


「私は強くなくちゃ行けない…強く、怪力なんだから」


それだけよ、私の思いはそれだけ。強くなると言うただ一点のみ。

勿論ね、笑顔なんて無い無愛想な怪力馬鹿が居れば避けられるわ。

私は色々な人を助けた、幼い頃から色々な事をした。

困ってる人は毎日助けてたし、その怪力でなんでもやった。

笑顔なんて無い私だけど、結構積極的だったのよ。


「ねぇ、あのこ…」

「うん、凄い怪力だけど…人間なの?」

「魔物じゃないの? 笑わないし…」


誰を助けるにも、ただ機械的な事しか出来なかった私は

勿論、周囲の人間から避けられ始めたわ。

怪力過ぎたのよ、私は。人の身でありながら

人以上の怪力を持つ化け物。私は嫌われていく。

そんな事、私は気にも留めなかったけどね。


私にはどうでも良い事だった。当然の事だった。

元々生まれ落ちたときから嫌われ者だったんだからね。

でも私は強かったから、守らないといけないと思ってた。

その結果、私の周りには誰も寄り付かなくなった。


そんな状態でしばらく経って、私は冒険者になった。

村を飛び出して、色々な人達を助けることを目標にしてた。

助けないとと言う責任感のままに私は冒険者として活動したわ。

そんな時だったかしら、私はあの子に…イブに出会った。


「大丈夫? 早く帰って」

「あ、ありがとう…所であなたは?」

「リステッド、覚えなくて良い」

「ふーん…あのさ、助けて貰ってこんな事言うのは何だけど

 あなたって恐いよ? 笑顔もないし、近寄り難い」

「え…」


陰口は聞いたことはある。だけど、こんなにも面と向って言われたのは

この時が初めてだった。皆私を怖がって、怒らせまいと必死だった。

それなのにこの子は面と向って、こんな事を言った。

それが私には堪えたわ。分かってたことだけどハッキリ言われちゃうとね。

でも、ある意味幸運だった。この時に私は自分を自覚したんだから。


「だからさ、ちょっとまぁほら、私と友人になってよ。

 うわさは聞いてるよ? 独りぼっちなんでしょ?」

「あ、憐れみなんかで…そんな」

「大丈夫だって、1人だと変われないかもしれないけどさ

 2人なら何とかなるって。あなたは変った方が良い。

 だから、その切っ掛けを私が作ってあげる」


私は1人だったけど、彼女に出会った事で初めて友人が出来た。

初対面はそんなに好印象じゃなかったけどね。

そりゃ、いきなりあんな風に言われたら好印象じゃないわ。

で、彼女と出会ってからと言う物、私の世界は大きく変る。

知らなかったわ。誰かと話をすることがあんなに楽しいなんてね。

自分しか見て無かった私にはとても新鮮に感じた。


「ほら、リトも飲む? お酒」

「……お、お酒は…」

「私お酒好きなのよ~、絶対飲んだらリトも好きになるって!」


私がお酒好きになったのも彼女の影響よ。

イブはね、お酒が大好きなのよ。毎日飲んでたわ。

まぁあの子も小さな村に小さな酒場を作ってたしね。

それだけお酒が好きな子だったわ。お客さんはあまり居なかったけど。

その時に私はイブに誘われてお酒を呑んだ。美味しかったわ。


「何だ、笑顔凄く可愛いじゃん。やっぱり美人さんよね!

 その顔で過ごしてたらきっと幸せになれるよ~」


お酒を呑んで頬が緩んだときにこんな風に言われた。

私はね美人だとか、そんな風に言われた事は無かったし

自分も笑えるんだと言う事を、この時自覚できた。

その日以降、私はよく笑うようになったわ。


「あ、ありがとうございます」


それからという物、私は色々な人から感謝をされるようになった。

笑顔で人を救えば、救った人はより笑顔になる。

私はこの時、その事を自覚して、笑顔の大切さを知った。

人を幸せにしたいのなら、まず自分が笑顔にならないと行けない。


痛感したわ、本当にね。笑顔の大切さという物を痛感した。

そして、しばらくの間、ここで活動してたけど

私は久しぶりに両親に会いに行こうと思ったの。

笑えるようになったと、両親に報告するためにね。


「リト…幸せそうだね」

「うん、ようやく笑えるようになったよ…」

「よかった…」


この時に私はようやく両親が私の事を心配してたんだと気付いた。

そしてこの時に私は大事なことに気付いたの。

誰かの命を助ける事よりも大事なのは誰かを幸せにすることだと。

そして、自分の大事な人達の幸せを守ることなんだってね。

だから、私自身が幸せにならなきゃ、家族は幸せにならない。


ならもう、使命感で助けるんじゃなくて

私自身が助けたいから助ける。そういう風に考える事にしたの。

だって、そうじゃ無いと私はまた笑えなくなって家族も不安になるから。


だけど、私に取っての最悪の事態は唐突に起った。

イブが死んだの。私が仕事をしてる最中に村が襲われて。

私はすぐに戻って、イブの安否を確認しに行ったけど

イブの姿は何処にも無かった…アンデッドは居たけどね。

村の人達は死んでた。私はアンデッドを全部片付けたわ。

怒りのあまり、自分でも何をしてたのか分からないけど

気付いたら周囲はアンデッドの山だった。

確かこの時に死鬼とかクリムゾンデッドが居たわね。


「……アンデッドは絶対に滅ぼす…イブの仇を必ず…」


もうキレたわ。私はとにかくアンデッドを殺す事を最優先に考えた。

依頼だとか、そんなの関係なしに私はアンデッド狩りを続けた。

イブを殺した奴らを全部滅ぼすためにアンデッドを狩りまくった。

だけど、今度は…私の村よ、私の故郷が滅びたという話を聞いた。

私はすぐに故郷に戻った…えぇもう、村があった場所には何も無くなってた。


両親の姿だって無い…またアンデッドよ、私は村を襲ったというアンデッドを

全て排除した…そして心がアンデッドへの憎しみに支配されそうになった。

けどね…けど、復讐の鬼にはなりきれなかった…やっぱりイブの言葉があった。

そして両親の言葉もあった…失った物よりも得た物を数えろとね。

ポジティブに生きろと、そんな言葉があった。


だから、私は得た物を数えて、幸せに前向きに生きていこうと決めた。

だから、私はその復讐心を殺し、酒をよく飲むようになったわ。

毎日ね…まぁ、最近はあまり飲んでない気がするけど…あなた達のお陰かしら。


「それが…リト姉ちゃんの…ごめんなさい、何も知らなくて…」

「強いな、リト。そんな思いをしたのに」

「でもね、私はやっぱり1人じゃ駄目なのよ。

 あなた達が居たから、私はこうやって生きてる。

 イブが居たから、私は笑うようになったし、両親が居たから

 私は生まれて、そしてこうやって前向きに生きる事を決めた。

 私は1人じゃ駄目だけど、誰かに支えられて生きてきた。

 

 一瞬だって、私は1人で強くなったとは思ってない。

 そして私自身が強いとも思ってない。私は弱いけど

 大事な人達が私を強くしてくれてる。勿論、あなた達も含めて」

「うん、私もリト姉ちゃんやエルちゃんが居てくれてるから

 頑張れるって思うもん!」

「私もです…リトさんの話を聞いて、本当にそう思いました」

「そ、ならよかったわ」

「なる程、確かにそれならアンデッドは嫌いになりますね…」

「えぇ、今でも嫌いよ。でも、先に進むことを私は決めたわ。

 ありがとう、自棄になった私を助けてくれて。

 お陰でまだ幸せに生き続けることが出来るわ」


リトさんが優しく笑った…凄く優しい笑顔。

こんな人が昔は笑わないような人だったなんて思えない。

それだけ自然でとても優しい笑顔だった。


「じゃあ、やっぱりクロノスを倒さないとね!」

「そうね、このままだともっと被害が出るでしょう…

 やらなくてはならないわ」

「とは言え、まだ準備の段階です。急がないでくださいね。

 急いては事を仕損じると言う言葉もありますから」

「えぇ、分かってるわ。とにかく今は対策を考えましょう」

「うん!」


クロノスを倒すことはとても大事な事だからね。

これ以上の被害を出させないためにも、しっかりと準備をしないと!

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