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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第4章、異常なアンデッド達
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事態の報告

「よしっと、じゃあ良い雰囲気の中あれですが

 何があったのか、私にお話ししてください」

「そ、そうね…でも、もうちょっと待って…」

「はいはい、大人が子供に甘えちゃうなんてね」

「う、うるさいわね…たまには…良いじゃない」


リトさんはそれからしばらくの間、私達を抱きしめた。

そして、少しだけ落ち着いた後、私達から手を離す。

もうちょっとあんな風に抱きしめられててもよかったけど…

えへへ、何だか暖かかったし…


「ごめんなさい2人とも、窮屈だったでしょ?」

「いえ、全然…」

「もっと抱きしめても良いよ! むしろ私が抱きしめちゃう!」


そう言うと、今度はリズちゃんがリトさんに抱きついた。


「おっとと、ふっふっふ、これが本来あるべき姿よね」

「リトさん、やっといつも通りですか。

 立ち直るまで1時間かかりましたね。

 時間掛りすぎですよ」

「あの…普通はもっと掛ると思うんだけど?

 私に求めるハードル高すぎよ…」

「はいはい、良いから何があったか教えてください。

 こんな形で帰ってきたと言う事は非常事態でしょ?

 また魔王の娘から奇襲でも受けましたか?」

「そっちならまだ楽だったわ、私的にはね。

 ただ今回、私には衝撃的な事実だったけど

 あなた達ギルドからしてみれば

 かなり有用な情報を持ってきたと思うわ」

「ほぅ、お教えください」


確かにギルドにとって、この事実は大きいはず。

アンデッドの異常な行動の元凶が分かったんだから。

それさえ叩ければ、被害が多少とは言え軽減される。


「それよりも、ロックバード山脈越えた先にある国。

 あそこから何か通達無い? 私達はそれも知りたいの」

「ロッキード王国ですか? ふーむ、一応申請してみます」

「そう、お願い…まぁそれは後で良いわ。結果がどうなったか…

 とにかくまずは私達が得た情報を伝えましょう」

「はい、お願いします」

「リズちゃん、抱きしめたままでも良いけど

 せめてほら、背中に回って? 前はちょっと」

「はーい」


リトさんに言われたとおり、リズちゃんは背中に回った。

離さないんだね、結局は。


「じゃあ、話すわね。まずは残念なお知らせ…

 と言うか、殆ど残念なお知らせなんだけど

 まず残念なお知らせの1つだけど…

 ギルドが送った偵察、全滅したわ」

「な…そ、そうですか…やはり…」

「とは言え、死亡が確定したのは男性のみ。

 女性は消息不明だけど…恐らくは死んでるわね」

「女性は? 何故女性だけ?」

「そうね、それが次の報告になるかしら」


リトさんが軽く咳払いをし、深呼吸をする。

リトさんに取って、クロノスの話をすると言うことは

一旦落ち着かないと、感情的になってしまうからだろう。


「ふぅ、最近、アンデッドの活動が活発化してるって気付いてるわよね?」

「えぇ、気付かない方がおかしいくらいに、分かりやすいですからね」

「そうね、そしてその活発化している原因があるの」

「何ですか!?」

「正直、そんな事あるのかって思ってたけど…

 アンデッド達を指揮する存在がいる」

「アンデッドを指揮するって…そんな馬鹿な!

 アンデッドには知性は無いはず…そ、それにですよ!?

 それに魔物が魔物を指揮するなんて馬鹿な事が!

 もしかして、魔王の娘達が動いてる…ですが

 魔物を統治するのは魔王で…その娘達が…

 いや、魔王の娘なら魔物の統治くらい…」


そうだね、これは異常事態。魔物が派閥を作るなんてね。

ユミルの時もそうだけど、やっぱり色々な派閥が居るみたい。

だけど、その全てがお父様に敵対しているというわけじゃないんだ。


「そう言えば、指揮してた奴は魔王の娘に取り入るために

 行動しているという風に言ってましたよね?」

「そう言えば…でも独断で動いているのか

 それとも指示をされて動いていたのか…」

「だが奴は擬似的な魂がどうのこうの言ったぞ

 その魂とやらを作る為に独断で行動してたんじゃないか?

 指示されたのはあくまで擬似的な魂を作る事であり

 その擬似的な魂を作る為のサンプルは独断で動いてるんじゃ?」

「アンデッドを統率して…ですか…そんな事、今まで…」


私もこんな事は初めてだよ…今までこんな事態はなかった。

今まではお父様の存在が大きかったから魔物は徒党を組まなかった。


「ブレイカー襲撃もあったし、異常事態が起ってるのは違いないわね」

「……確かにそうですよね…どうしてこんな事態が…」

「魔物が派閥を作り出しているという事は間違いないだろう…」

「どうすれば…特にアンデッドは数が多すぎる…このままでは被害が…」

「……手段があるにはあるんだけど…いや、確定じゃないけど」

「何ですか!? 手段があると言うならそれを教えてください!」

「アンデッドに関する手段であれば、私を差し出す事よ」

「はぁ!? 何を馬鹿な!」


当たり前の様に自己犠牲の選択肢を掲示するんだ…


「あいつは擬似的な魂とやらを作りたいとか言ってたわ。

 で、どうも私はサンプルとしては最高らしいのよ。

 あいつが探してるのは女性でハーフで魔法を扱える人物

 まさしく私にピッタリよね。巨人と人間のハーフであり

 魔法も扱えて、そして女の子だから」

「……」

「私を差し出して、その擬似的な魂とやらのサンプルが手に入れば

 わざわざ襲撃をするよりも、擬似的な魂を作る事に専念するはず。

 そうなれば、しばらくはアンデッドの活動は沈静化できる。

 その擬似的な魂が何の為に必要なのかは分からないけど」

「あなたを失うと言う事は、人類にとって大打撃も良いところです。

 勇者候補に厚い信頼をされており、実力も非常に高い。

 現状生きている戦力の中で、あなたはかなり上位なんですよ」

「何を馬鹿な、私よりも上は居るでしょ?」

「えぇ、数は少ないですがね…殺されてる人物も多いですし」

「……やっぱり上を潰して回ってるのね」


お父様が動けない状態だから可能な限り戦力を削ろうとしてるのかも。


「だから、気を付けてくださいよ?」

「と言っても、強いと言うなら頑張らないと駄目だけどね」

「そうですが、無茶はしないでくださいよ…」

「……そうね、もうしないわ…やっちゃいそうになったけど」


自分の行動を思いだし、リトさんは少し辛そうに笑った。


「はぁ全く…情け無いわね、最初会ったとき、あんな事言ったのに」

「大丈夫だよ、リト姉ちゃんが辛い時は私達が支えるよ」

「…ありがとう」

「でもさ、リト姉ちゃんどうしてあんなに…」

「……まぁうん、一応そろそろ話しましょうか…私に何があったか。

 私の昔話って奴…興味があるならね?」

「聞かせてよ、リト姉ちゃん」

「私も興味はありますが、とりあえず他の報告の後で」

「空気読まないわねあなた」

「情報収集の方が先です」

「はいはい、分かったわ。そうね、今はその統治している奴なんだけど

 ミリアの拒絶魔法とやらで隔離している状態なのよ。

 だから、近くの国の人達は避難できてると思うけど…」

「拒絶魔法というと?」

「エルフの秘術というか、古い魔法だな。

 昔は結構使ってたんだ。代々エルフの長が扱える魔法。

 外部からの侵入も阻害する事が出来る。

 魔法による侵入も阻害できるんだ。

 今回はその魔法を逆に展開して隔離に使ったと言うことだ。

 私の魔力量から考えて…そうだな、1日は隔離できるはずだ」


1日の間だ、あの魔法を維持できるんだね。

流石はエルフの長…凄い魔力量だよ。

エルフは魔力量が少ない種族だけど、やっぱりミリアさんは凄い。


「1日…ですか…その間に避難が出来るとは思いますが」

「全ての住民が避難するだけの時間は稼げるわね。

 とは言え、隔離できたのは確かあの2人だけよね?」

「あぁ、後はゾンビ共くらいか。巨人のアンデッドは全滅したし

 ゾンビ程度では城門は破壊できないはずだからな。

 避難する時間を稼ぐことは出来るだろう」

「あのですね、さらっと聞きたい情報が増えました。

 え? ゾンビの大群もそうですけど…さらっと言いましたよね?

 巨人のアンデッドは全滅とか言いましたよね?」

「そうだ、ゾンビの大群までは手が回らなかったが

 巨人のアンデッドはエルとリトの活躍で撃破まで漕ぎ着けた」

「あれも殆どエルちゃんのお陰だけどね。

 私の強化魔法だと倒しきれるか怪しかったし」

「でも、リトさんじゃないと倒しきれませんでしたよ」

「ま、私もそれなりに強いからね。それなりにしか強くないけど」


接近戦闘がここまで秀でている人を私は知らない。

リトさんはあんな風に言ってるけど十分過ぎるくらいに強いよ。


「不測の事態に遭遇し、当たり前の様に依頼を達成。

 更には1国の救助に挑み、事実上成功させるとは…

 やはり私の見立て通り、あなた達は凄まじい実力者ですね。

 人類で最大戦力と言っても過言では無いほどに。

 やはり、リトさんを2人の保護者に選んで正解でした」

「私は皆が居なかったら、1人勝手に死ぬようなろくでなしよ」

「でも、生き残ってます。そして支えられている。

 人望がなければ、あなたは見捨てられてるだけですよ。

 あなたにはこの子達に慕われているという証拠です。

 それは、あなたが素晴らしい人物である証拠です」

「ん…ありがとう」

「リト姉ちゃんは凄い優しい人だからね! 大好きだよ私!」

「ふふ、ありがとうね」


リトさんはリズちゃんに凄い慕われてる。

私もリトさんの事は慕ってる…それはただ単純に

凄く強い人とか、そう言うのが理由じゃない。

悪いところだってあるけど、それを含めてリトさん。

リトさんだって私達の悪いところを知ってるけど受入れてくれてる。

リトさんは私達に取って、掛け替えのない存在なのは間違いない。


「良い雰囲気ですね、私も良い人だとは思います。

 それで…他の報告は?」

「あなた、もう少しこう、一緒に抱きしめたりしようとか無いの?」

「おや? 抱きしめて欲しいのですか? そっちの気でもあるんですか?」

「無いわよ! まぁ何かあなたは最近容赦ないなとは思ってるけどね。

 さて、じゃあ他の報告と言っても、さっきので一気に終わったかしらね。

 ゾンビの大群の話とアンデッドの隔離とロッキード王国の件。

 で、ついでに巨人のアンデッドは狩れたという話。

 伝えたかった話はこんな所でね。もう話したって訳」


うん、さらっと全部話しちゃったからね。

重要な話だし、もうちょっとしっかり話せればよかったけど。


「なる程…短い報告でしたが何とも濃厚な報告ですね。

 では、それらの資料を書き記します。

 国王に報告し、ロッキード王国にも話をしてみましょう」

「お願いね。あなたが仕事をしてる間に昔話済ませちゃうから」

「……えっとですね、私にはお話ししてくれないのですか?」


リトさんの言葉を聞いたミザリーさんだったけど

少しだけ困惑した表情を見せて、リトさんに言葉を返した。


「ん? 興味あんの? 私の昔話。聞いても良い事は無いわよ?

 私の事を少し知れるだけで、あなたが欲しいだろう成果とかは」

「じょ、冗談だとは思いますが…もしかして私が

 成果以外に興味が無いような、お仕事人間に見えてるんですか?」


普段の生活を見てると、仕事第一に見えちゃうもんね。

でも、実際は専属になった相手の事をしっかり考えてくれてる。

普段は淡々としすぎちゃってる感じはするけどね。


「えぇ、その通り。たまにお酒飲む位で、後は仕事ばかりだと思ってる」

「酷いでしょうそれは! 私だって色々あるんですからね!?

 人間関係の構築とか大事だと思ってますし!

 あなた達の事を知りたいとも思ってます。いやほら、あれです。

 言いませんけど、友人として会話もしたいと思ってたり」

「そうなの? 雰囲気からは想像出来なかったわ-」


そんな風に返してるリトさんだけどからかうような表情だった。

リトさんだって、ミザリーさんの事は分かってる筈だもんね。

あまり会話をしていない私よりも確実に。


「く、くぅ…絶対分かってて言ってますよね…」

「まぁね、ほら、書類整理なり何なりさっさとこなしてきなさいよ。

 私の話を聞きたいってんならあなたにも話してあげるから。

 と言っても、私の昔話なんてそんなに面白い話でも無いけどね」

「人の一生なんて、大体面白みに欠ける物ですよ。

 だから、他者の一生に興味を抱くのです」

「そうかもね。さ、ほら、早く処理してきなさい」

「分かりました」


ミザリーさんが書類の整理をするまでの間だ、私達は待機することになった。

その間に今後、どう動くかも考えておかないとね。

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