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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第4章、異常なアンデッド達
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小さな努力

お父さんに戦う技術を学ぶ。魔法では無いけど

接近戦闘とか、そう言う技術。

私は魔法の能力は秀でているけど身体が弱い。

回復魔法とかがあるから多少はカバー出来るけどね。


それでも、近付かれた場面での離脱方法が今の所

テレポートによる離脱くらいしか無い。

でも、テレポートは接触している物も一緒に移動させてしまう。

近付かれて組み付かれてしまったりした場合、逃げる方法は無い。

そう言う場合に助けられるのをただ待つだけって訳にもいかない。


強くならないといけない。私は、強くならないと。

魔法にばかり頼る強さじゃ無くて、それ以外でも強くならないと。

だから、お父さんに教わるんだ。強いお父さんに、強くなる方法を。

正直な話し、リズちゃんやリトさんに学んでも真似できないもんね。


リズちゃんは身体強化魔法への順応が異常なほどに早いし

戦い方も凄く早い動きと、その力を利用したスピードタイプ。

リトさんは単純に圧倒的な力で相手を圧倒するようなパワータイプ。

私はリズちゃんみたいに速く動けないし、リトさんみたいに力は無い。

身体強化を自分に掛けても、リズちゃんみたいに上手く扱いきれないからね。


だから、お父さんに技術を学ぶ必要がある。

リズちゃんがスピード、リトさんがパワーなら

私はテクニックで戦うしか無い。その方がバランスも良い気がするしね。


「よし、鍛える以上は手加減はしないからな」

「うん!」

「はーい!」


よーし、頑張るぞ! 絶対に強くならなくちゃ…

って、あれ? そう言えばさっき変な声が聞えたような…


「よーし! 頑張ろうね! お姉ちゃん!」

「…え!? リンも参加する気なの!?」

「勿論! 私もお姉ちゃんを守るんだ!」

「いやいや! リンはまだ駄目だって! まだ小さいんだから!」


リンはまだかなり小さい…そ、それなのにお父さんに鍛えて貰うって…

そ、そんなの危ないって! 絶対に怪我しちゃうよ!


「…うーん、エイリーン…その、どうして止めなかったんだ?

 ここにリンが居るって事は、君が止めなかったって事になると思うけど」

「いやね、私も止めたのよ? でも、リンったら言うこと聞かなくてね。

 初めてよ、あの子があそこまで頑なに言う事を聞かなかったの…

 それでその…ちょっと、ね? あの子の好きにさせてみようかなって。

 それに何だかあの子の目が…昔のあなたによく似ててね。

 それで止めようとしても無駄だって、分かっちゃった」

「お姉ちゃん! 私だってお姉ちゃんの為に強くなるんだから!」

「だ、駄目だってリン、ほら、お母さんと一緒に見ててよ、ね?」

「いやだ! 私もお姉ちゃんと一緒にお父さんに鍛えて貰うの!」

「うぅ…」


り、リンがここまで言うことを聞かないなんて…初めてかも…

どうしてそんなに強くなりたいんだろう。

私はリンに危ない目には遭って欲しくないだけなのに…


「だ、だからリン…あ、危ないんだよ? 怪我しちゃうかもよ?

 凄く痛い痛いするかも知れないよ? 転けちゃうよりも痛いんだよ?」

「い、痛いのは嫌だけど…でも、私だって!」

「あぅ…」


駄目だ、リンは大人しくするつもりは無いみたい。

きっと、何を言っても一緒にやるって言うよ、これ。

……はぅぅ…し、仕方ない…無理に言っても駄目なんだし

こ、ここは魔法で意識を奪って、お母さんに見て貰おう。


「エル、リンの好きにさせてみよう」

「えぇ!? お父さん本気!? だって、リンはまだ!」

「俺も不安だけど、ここまでやりたいと言うんだ、無理には止められない。

 それに妹の成長を見るのも、姉としては良いことだと思うぞ?」

「私! お姉ちゃんを守れるくらい強くなるよ!」

「……う、うぅ…わ、分かったよ、リン。そこまで言うなら…

 うん、一緒にお父さんに鍛えて貰おう」

「うん! その後、魔法を教えてね!」

「ま、魔法も!? う、うーん、リンにはまだ難しいんじゃ無いかなぁ」

「難しくてもやるのー! お姉ちゃんみたいになるの-!」

「あ、あはは、わ、分かったよ。じゃあ、疲れてなかったら教えてあげるね?」

「うん!」


結局、リンも一緒にお父さんに技術を教わることになった。

うぅ、大丈夫かなぁ…だって、まだリンは5歳だよ?

まだまだ小さいし…それなのに…うぅ、だ、大丈夫かな?


「じゃあ、まずは基礎的な技術。これは素手での技術かな。

 エルが教わりたいのは魔法が使えない場合の戦い方だろう?

 魔法を使うのなら、剣を常に携帯しているわけじゃ無い。

 だから、最初は格闘術から教えるよ」

「ありがとう、お父さん」

「基本的に格闘術というのは力が無くても扱える物が多い。

 勿論、力があるに越したことはないが、力というのは

 一朝一夕で手に入るような代物じゃ無いからね。

 基礎という物は日々の努力でしか体得し得ない。

 ちょっとした訓練で教わる事が出来るのは知識と経験かな」

「うん」


それは分かってる。1日やそこらで力が強くなれるわけがない。

そんな簡単に手に入るような物じゃ無い。それは魔法も同じ事。

私が魔法をすぐに扱える様になったのも、何百年の努力の結果。


同じ事を飽きずに繰り返し、理想を目指した結果なんだ。

体力や力、そう言った物でもひたすらに努力するしか無い。

理想を叶えるのはひたすらな努力。努力しても叶わない理想はあるけどね……

でも、努力しなきゃ確実に叶わない。それは私もよく分かってる。


「じゃあ、教えようかな。基本的に格闘術は相手の力を利用するんだ。

 ちょっとお父さんに強く掴みかかってきて」

「うん…でも、私が掴んでも力はお父さんの方が上だと思うんだけど」

「そうだね、だからちょっと実感できないかも知れないけど。

 あ、痛いと思うから嫌なら」

「いや、大丈夫…覚悟してるから」

「じゃあ」


お父さんは私が掴みかかると同時にすぐに私を引っ張った。

不意の感覚。何だか宙を掴んだ様な…掴んだ瞬間も手応えが無かった。

そのまま私は宙に浮かぶような感覚と同時に地面に落下した。


「いたた…」


ま、全く立て直せなかった…空を飛んでるような感じで

何処にも力を入れられなかった…こ、こんな事があるなんて。


「こんな風に決れば殆ど相手は抵抗できない。

 自分の力を利用された技だから、力があるだけじゃ対処出来ない。

 むしろ力があればあるほど、これは対処出来ないんじゃないかな?

 完全に相手に自分の力を利用されてる訳だからね。


 技術があれば対処は出来るけどね。例えば体幹をかなり鍛えていれば

 相手に引っ張られてバランスを崩すことを避けられるかも知れないし」

「うん…そうだね」


うん、私もこれ位出来るようにならないと。

自分の服に付いた泥を払いながらそんな事を思った。


「よし、もう一度!」

「いや、今度は細かく教えようと思うんだけど」

「いいや、何度か投げて…感覚を掴みたいの」

「…分かった、じゃあ次だ」

「うん! うりゃぁ!」




そのまま何度か投げられて、ようやく少しだけ感覚が掴めた気がした。

相手が掴む瞬間に相手の軸をずらして態勢を崩してるんだ。

そして、そのタイミングも分かってきた。


「よし…少し掴めた気がする」

「経験して学ぶのは良い事だけど、大怪我をしたら全部水の泡だぞ?」

「大丈夫だよ、もう一度!」

「…分かった」

「うりゃぁ!」


お父さんに掴みかかる瞬間、少しだけタイミングをずらしてみる。


「ん?」


やった! お父さんに投げられずに掴めた!


「へぇ、タイミングを少し外したのか。

 と言う事は、タイミングが分かった?」

「うん…何度も投げられて、やっと」

「…そうか、凄いな」

「うぅ! お姉ちゃんばかり! 私も!」

「り、リンも?」

「うん! リンはお姉ちゃんに! お姉ちゃんじゃ無いと届かないもん」

「あはは、そ、そうだね」


うぅ、でもなぁ…リンにやっても良いのかな…私、まだ分かってないよ。

タイミングは分かったけど、力加減が…

り、リンを怪我させちゃいそうなんだけど…


「よーし、えーい!」

「あぅ…」

「あ、私は普通に掴めた!」

「やっぱり恐いのかい?」

「う、うん…や、やっぱりリンを投げるのは…」

「あ、お姉ちゃん何もしてないの!? 酷いよ!」

「うぅ…ご、ごめんね」

「じゃあ、次だもん! えーい!」

「うぅ、ご、ごめんリン!」


心を鬼にしてリンをお父さんが私にやってくれたように投げた。


「痛い!」

「ご、ごめん!」

「うぅ…で、でも大丈夫! も、もう一度! 私もお姉ちゃんみたいに!」

「リン…うぅ、い、痛いよ? それでもまだやるの?」

「痛いのはさっき分かった! だから、大丈夫! えい!」


心が痛いけど、私はリンが諦めるまでリンを投げた。

何度か投げたけど、リンは泣かないで私の方に来る。

自分だって出来るようになる。そんな思いを感じる。

私もその思いに答える様に、リンを投げた。


「痛い…で、でも、何となく分かったかも…えい!」


少し涙目になりながらだけど、リンは私の方に走ってきた。

私もここで心が折れたら駄目だ…酷い事だけど

これはリンのためなんだ、リンがやりたいからやってるんだ。

リンの成長の為なんだ!


「よ、よーし、それ!」

「うりゃ!」


リンをもう一度投げようとした…でも、少し感覚が変だった。

今までは軽かった、軽いダンベルを持ち上げる程度の力で済んだ。

だけど今回は少しだけ重量を感じた。


「うぅ、駄目だった!」

「……り、リン、もしかして」


リンがタイミングを絶妙にずらした…私が気付けないギリギリで。

リンも何度も投げられてる間にタイミングを掴みかけてる?

いや、もしかしたらもうすでに掴んで…


「よし、じゃあ今日はここまでだな」

「えぇ!? ま、まだ!」

「服が泥まみれだし、これ以上しても怪我するかも知れないだろう?

 それに日も少し暮れてきてる。早く帰ってご飯にしよう」

「ほら、リン。わがまま言わないの」

「お母さんまで…」

「……リン、ご飯食べたら、魔法を教えてあげるよ」

「あ、本当!? じゃあ帰る!」

「うん」


……リンはまだ小さいのに、あんなに頑張り屋さんだなんて…

私も姉として負けられないよ。頑張ろう。

今度こそ、立派な姉に…立派なお姉ちゃんにならないと。

前は立派なお姉様にはなれなかったけど…頑張らないと。

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