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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
第3章、違和感の始まり
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闇夜の客人

暗闇は、いつも私を嫌な思い出へと誘ってくる。

だけど、今日はそんな事は無いみたいだった。

だって、こんな暗闇でも静かじゃ無いから。


「うぅ…お、おかわりぃ…」


今日は何だかテントの中から聞える寝言が大きい。

凄く楽しそうな寝言が多い。

だけど、少しだけ気になる寝言も聞えてくる。


「……ごめんね…イブ…」


この声は多分リトさんだ…何だか物寂しげな声に聞える。

テントの外からも聞えるくらいに大きい声だけど…でも、明らかに…


「イブ…誰のことだろう」


もしかしたらリトさんの友達かも知れない。

だけど、リトさんがその友人と会ってるところは見ない…

私達の保護の仕事をしてるから会いに行ってないだけなのか…それとも。


「アンデットは…絶対に滅ぼす…約束…するから…」

「リトさん…」


リトさんとアンデットの間に何があったのか…聞きたいけど

言わないって事は…まだ、私達には知って欲しくないって事なんだろうね。


「うぅ、お酒臭い…」

「これはリズちゃんの声かな…大丈夫かな?」


ちょっと気になって、私はテントを開けて中を見てみた。

そこにはミリアさんとミザリーさんに抱きしめられてるリズちゃんの姿があった。

抱きやすいのかな? まぁ確かにリズちゃんの身長から考えると抱きしめやすいかもね。


「あはは…これは確かにお酒臭そうだね。でも、リズちゃんモテモテだね」


酔ってるからなんだろうけどね。

でも、リトさんだけは少し離れてる。

布団も掛ってないし…はは、風邪引いちゃうよ。


「よいしょ…あ」


私がリトさんに布団を掛けると同時に腕を掴まれた。

だけど、力はそんなに強くない。だけど…何だろう、しがみついてる…?


「いか…ないで…イブ…」

「リトさん…」


普段のリトさんからは想像出来ないほどの弱々しい声だった。

既に目には涙が流れたような跡もある。そのイブという人がどうなったか

ここまで来たら、何となく分かってしまった。


もしかしたら夢を見て、離れて行くイブという人を止めようとしてるのかも知れない。

なら、このまま振りほどかないでこの場にいるのが良いのかもね。

……だけど、それは出来なかった。私はイブじゃ無い。

それに、安全のためにもここには居られない。


「あ…」

「大丈夫です。私達は何処にも行きませんから…おやすみなさい、リトさん」


きっと、イブという人は死んでいる。魔物に殺されたんだ。

多分…アンデットに殺された。だからリトさんはアンデットを怨んでる。

アンデットを滅ぼすと、リトさんはそう考えてるんだ。

だけど、復讐にだけ囚われてる訳じゃ無い…復讐にだけ囚われてたら

こんな風にお酒を呑んで、遊べるときには遊ぶ。そんな風にはなれないと思うから。


「……静かな場所なのに、賑やかよね。エビルニア」

「…!」


テントから出ると同時に不意に何処からか声が聞えてきた。

私は咄嗟に声が聞えた方向に目を向ける。だけど、そこには何も。


「やはり、あなたはエビルニア…そうでしょ?」

「え!?」


今度は後ろから!? そんな! さっきと全然声の場所が違う!


「あ…あなたは!」


私が咄嗟に振り返ると、そこにはブレイズお姉様が立っていた。


「むぐ!」


私がブレイズお姉様の方を向くと同時にブレイズお姉様は私の口を塞ぎ

そのまま地面に私を押し倒した。す、凄い力…抵抗できない!

それにいつの間に魔法を組んだのか分からないけど、両腕も両足も拘束されてる!

触手…召喚系の魔法!? それとも魔力で組んだの!?


「静かに、無益な争いはしたくないでしょう? お互いにね」

「むぐ! むぐぅ!」

「今日はあなたに話があってきたの。と言っても、今この状況では

 私が一方的に話をする事しか出来そうに無いわね。

 まずはおかえり、エビルニア。

 命を落としたはずのあなたがどうして人の姿になったのかは深くは聞かないわ。

 もしかしたら、私の勘違い…なんて、あり得ないとは思うけど

 もし勘違いなら謝罪するわ。あなたはエビルニア・ヒルガーデン。そうでしょう?」


私は押さえつけられながらも微かに首を振る。

そんな事がバレてしまったら、私は…


「安心しなさい、あなたを取って食おうって訳じゃ無いから。

 私としても、あなたには同意の上で戻ってきて欲しいのよ」


でも、どうしてブレイズお姉様は私がエビルニアだって! いつ何処で!?


「一応、説明しておくと最初、あなたがミルレールと戦ってたとき。

 私はあの戦いを見ていたの。多彩な魔法にテレポート、オーバーヒート。

 あなたの戦い方を知ってる私が見れば、すぐにあなただと言う事は分かったわ。

 戦い方もあなたそっくりだし。ついでに容姿もそっくりだしね。

 

 人間であそこまで緻密な魔法陣を組める魔法使いの数はそういない。

 更にミルレールを出し抜くほどの魔法に戦術。そして最初の躊躇い。

 全てを総括して、私はあなたが私の妹、エビルニアだと確信したわ。違う?」


必死に違うことを首を振って答える事にした。

今の私に出来る事はそれ位だった…完全に拘束されてるし

ブレイズお姉様に魔法攻撃を仕掛けたとしても勝算はない。

私の攻撃は全て反射されて終りに違いない。


「……そう、あくまでシラを切るつもりらしいわね…じゃあ、最大級の証拠。

 何故、あなたは今、私に対して魔法による攻撃を仕掛けてきていないの?」

「んん!?」

「あなたほどの魔法使いなら、拘束されている今この状況でも

 魔法陣を組み、私に攻撃をすることくらい可能でしょう?

 でも、それをしていない。それは何故? 答えは簡単よね。

 あなたはエビルニアなのだから、この状況での魔法攻撃は無意味だと理解してるから」


そんな…私の行動全部…ブレイズお姉様には完全に読まれてた。

この状況さえ、私がエビルニアだって確信するための!


「む、むぐぅ!」


こうなったら…こうなったらブレイズお姉様相手でも…す、少しは時間を稼ぐしか無い。

私はすぐにドレインフィールドを発動して拘束されている両手両足を解放する。

あの触手はブレイズお姉様が魔力で作った魔法だったみたいで、あっさり吸収できた。


「やっぱりね」


そしてすぐにブレイズお姉様のお腹に手を置いてマジックソードを発動する。


「おっと…」


私の攻撃で少し驚いたブレイズお姉様が私から離れた瞬間にテレポートを発動。


「ブレイズお姉様に勝てないことは分かってる。でも、仲間は守らせて貰うから!」

「仲間…あの子達ね。全くあなたって子は…また悔みたいの?」

「今度は…間違えない!」


ブレイズお姉様の攻撃が当らない様にテレポートを多用しながら魔法攻撃をする。

出来るだけ大きな物音が立たない魔法でブレイズお姉様に攻撃するしか無い。

もし、4人が起きてしまったら絶対に戦う事になる。それじゃ勝てない!


少なくとも今の私達じゃブレイズお姉様にはとても敵わない。

4人を守る為にも、何とかしてブレイズお姉様をこの場から!


「あまりバレたくないのでしょう? なら、抵抗しないで」

「あぐぁ…」


そんな…私が次に何処に出てくるかも読まれて…だめ、い、一撃で…意識が…


「エビルニア、出来れば無理矢理連れて帰るのはいやなのよ。

 だから、今回は見逃してあげる。だけど、戻ってきてくれることを祈るわ」

「あ…ぅ……」

「レイラードはあなたが死んでからずっと部屋から1歩も出て来てないわ。

 生きているのは間違いないけど、かなり衰弱している筈よ。

 200年以上も部屋に籠もっていれば、当然よね」

「く…ぁ…」

「そろそろ意識を保つのも限界みたいね。なら最後に一言。

 また会いましょう。また向かえに来てあげるから。

 おやすみなさい、エビルニア。一応、あなた達の身は……」


ブレイズお姉様の言葉が途中で途切れ、私の意識は暗闇に落ちた。

ブレイズお姉様には…やっぱり…まだ…勝てない…よ…

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