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帰還後の大問題

「…はい、1つよろしいでしょうか?」

「何?」

「……どうしてあなた達はこの部屋に居るのでしょうか?」


私達が部屋で話していると、扉が開きミザリーさんが出て来た。

その表情は怪訝というか何と言うか…俗に言うジト目って奴…かな。


「えーっとね…まぁ、多分信じないと思うけど

 一応ね、私が知ってる現状を凄く噛み砕いてお話しするとね。

 私達死にかけたから逃げてきたのよ」

「はぁ!? あなたがついて置きながら!?

 と言うか噛み砕きすぎです! どうやって私が知らない間に

 こんな場所に帰ってきたのかと聞いているのです!」

「あ、それはエルちゃんの帰還魔法よ」

「はぁ!? 何馬鹿な事を…って、何ですか?

 その部屋に飾ってあるかなり精密に組まれた魔方陣は…絵? ですか?」

「はい、絵です」


ミザリーさんはかなり不思議そうに私が書き記して設置して置いた

大きな魔方陣を見始める。


「……ま、待ってください…えっと…その…ですね…

 エリエルさんって…その…魔法使いの家系…ですか?

 それも賢者や、そこら辺の…」

「はぁ? 何言ってるのよ。エルちゃんは一般の家庭よ。

 父親はジェルさん。あなたも知ってるでしょ?」

「それは知ってます…エリエルさんの家系図とかも調べてます。

 勇者候補ですし、身元の確認はしっかりとしてます。

 その上で…ガーデン家には賢者の存在は確認できてません」


ま、まぁ、魔法文字は解読が困難だしね…それを利用した魔方陣を組んでる。

…や、やっぱり目立ちすぎだよね…ど、どうしよう。どう言い訳しよう!?


「で? 何をそんな怪訝そうに見てるわけ?」

「いやまぁ、私としてもそこら辺確信があるわけじゃ無いんですけど…

 うーん、でも今までこの文字は見たこと無いし…勘違いですかね…」

「勘違い? 何と勘違いしたの?」

「いや、この場所に書いてある文字で」

「文字? ただの難解な図面じゃ無いの?」


うん、魔法文字は文字とは分からないくらい変な形をしてるからね。

どちらかというと記号に近い文字になる。

この文字は魔力を制御出来たりと完全に解読できれば汎用性は凄く高いけど

その分、解読は困難で書き記すのも中々にしんどいからね。


「図面…うーん、恐らくそうなんでしょうね…

 でも何となく魔法文字に似てるんですよね」

「魔法文字って確か賢者が使うって言う部類の文字だっけ」

「はい、魔力を込めることが出来る文字…としか知りませんが」


実際は魔力を込めるだけでは無く、そこから制御が出来るんだけどね。

と言うよりか、魔力を込めるという行動は魔法の制御の為に必要な行程で

魔力が込められるって言う点が重要って訳じゃ無いんだけどね。


「うーん…まぁ似たような図面って事でしょう。魔法文字を扱える筈は無いでしょうし」

「そうそう」

「…さて、それではお三方、最終授業のお話しを再開しましょうか」

「そ、それはさっきも説明したでしょ! 疑うんだったらエルフ達に話を聞いて」

「エルフ達の存在を何故…」


多分エルフ達は気配を消していたし、そんなに姿を見せるつもりじゃ無かったんだ。

でも問題が起きた。だから私達の前に姿を見せたって事だね。


「エルフ達が姿を見せるほどの事態…そんな事態が本当に…」

「そうよ、私達がエルフの存在を知ってるのが証拠…

 しかし、エルフが隠れているとはね…予想外だったわ」

「身の安全を保証するっと伝えたのは、そう言う理由ですからね。

 で、エルフ達は? あなた達は問題が起き

 そのまま逃走したと言う事でしょうか?

 実際、勇者候補を守るという点は重要な部分です。

 その選択は確かに正しい選択ではありますが」

「あら、誤解しないで欲しいわね。私がそんな真似をすると思う?

 そもそも私が逃げようといったところで、この2人が分かったとか言って

 逃げるような奴だと思うの? この2人は問題児よ? そう言う点ではね」

「勿論! 危ない事が起こったとしても逃げない!」

「私は…逃げちゃいそうだけど…」

「でも逃げなかった。最初は戦意喪失気味だったけど

 あなたは最終的に逃げるという選択をしては居ない。

 あなたも十分、立派に戦ったわ。そもそもあなたが居なければ

 私達はエルフ共々全滅だったでしょうしね」


リトさんの言葉を聞いたミザリーさんの表情が一気に険しくなった。

さらっとリトさんは聞き捨てなら無い言葉を使ったからね。

私が居なければ私達はエルフ共々全滅…その言葉は

エルフの実力を知っているであろうミザリーさんが聞けば

ただ事では無いと言うことくらい、容易に想像出来る。


「馬鹿な…エルフ達が全滅するほどだなんて、そんなはず…

 エルフの実力は底知れません。生半可な魔物であれば単独で倒せる程。

 それを今回の警備で何人も動員して貰ったんですよ…それが全滅だなんて」

「魔王の娘でも出て来ないと無いでしょうね」

「……まさか…そんな馬鹿な話が…」

「話をしに行けば良いわ。私もエルちゃんやエルフのお陰で傷も癒えてるしね」

「…分かりました、一緒に行ってみましょうか」

「そうね」


この話が本当かどうかを確認するために、私達はミザリーさんと一緒に

エルフ達と戦っていた、あの悠久の森の方へ移動した。

でも、何処に何が居るかとか正直簡単には分からない…と、思った。

だけど、凄く簡単に場所が特定できた。だって、目立っていたから。


「魔法の音…それにこの規模は!」

「なんでよ! エルフ達がまだ戦ってるって言うの!?

 でも、ミルレールは確かに撤退した…ブレイズも戦う様子は無かったし」

「なんで2人も名前が…いや、それどころじゃありませんね。急ぎましょう!」

「でも、結構深いよ!? 走ってもすぐ間に合う距離じゃ無いんじゃ!」

「いや、魔法の音はこっちに近付いてきてる。つまりエルフ達は

 戦いながらこちら側に向ってきてるんだと思う。

 だから急げばあの場所より前の場所で合流出来るかも!」

「あぁもう! 何が何だか分からないっての! 最悪な日ね、今日は」

「うぅ、帰還魔法が発動しなかったら…」

「いや、あの魔法のお陰で私は無事だからね。正直連戦になってたら厳しかった。

 今は態勢も整ってる。ミザリー、あなたは来ない方が良いと思うわ」

「……私も状況確認の為に行きたいんですよね。一応は戦えますから」


ミザリーさんは受付嬢なんじゃ無いの? 戦える能力があるの?

一般人と同じ様な感じだと思ったけど、意外とそうでもないのかも…


「あなた、戦えるわけ?」

「私は勇者候補専属の受付嬢。その候補が勇者であれば勇者専属の受付嬢になります。

 当然、勇者と共に行動するために戦闘能力は磨いているのですよ。

 とは言え、流石にリトさんの様に怪力ではありませんし

 エルさん程の魔法を扱える程という訳ではありませんがね。

 本来、初期の段階の勇者であれば私の方が強い筈なんですがねぇ」

「へぇ、強いのね」

「魔法の扱いは一般人の比ではありませんよ、私は…と言っても

 エルさんと比べてしまうとどうしても見劣りしてしまいますがね。

 一応私の得意な魔法などを教えておきます。連携となれば必要な情報でしょう。

 私は主にサポートの魔法に秀でています。

 回復、防御、身体強化はちょっと無理ですがね」

「なら今回はあなたにサポートを任せるわ。エルちゃんは攻撃ね」

「はい」


私達の役割を再確認した後、私達は再び悠久の森へ進んだ。

エルフ達の戦闘音はドンドン近付いてきている。

一体…誰と戦ってるんだろう。ブレイズお姉様?

ミルレールお姉様はもう戦える状態では無いし…

でも、ブレイズお姉様の可能性も低い。


ブレイズお姉様は傷付いているミルレールお姉様を放って置いて戦う人じゃ無い。

それに、1度言った言葉を変えるほどに卑怯な人でも無い。

どんな相手に対しても敬意を示し、正々堂々と戦う。

そんな魔物の部類では考えられないほどに騎士道精神に富んだ人。

そんなブレイズお姉様が卑劣なだまし討ちなんてする筈も無い。


「よし、あとすこ…な!」


ある程度まで接近したとき、私達の眼前に広がったのは

巨大な火属性魔法。これ程の規模がある魔法を扱えるのは

私の知る中ではテイルドールお姉様しか居ない…だけど

テイルドールお姉様の魔法であれば、この程度の規模である筈が無い!


「不味い! 逃げて!」

「この距離じゃ不可能ですよ!」

「この規模が瞬間的に出てくる筈が…まさかもう近くに…でももう!」

「誰だか知らないけど…邪魔だよ!」


私がその炎の魔法を引掻くような動作をすると同時に

その火球は引き裂かれるように消滅した。

ドレインフィールド。今回は展開しないタイプ。

広範囲に及ぶ単独の魔法が相手ならこれが1番早い。


「あの魔法が…掻き消えた…」

「何で私達の魔法が消えたんだ!」

「知らない! エルフの増援だ! 行かせるな!」


そんな焦った声の会話が聞えた方に視線を向けた。

そこには…エルフの姿がある。だけど肌は黒いし髪の毛も白髪。

あれはエルフによく似ているけど、エルフじゃ無い存在。

ダークエルフ…悠久の森奥地に居るって言ってたけど何でこんな場所に。


「ダークエルフ! 何故!」

「エルフが壊滅的な被害を受けたと聞けば当然動くさ。

 私らのボスの命令もあるし、動かない訳がない」

「まさかミルレールがこっち来てるとは思わなかったけどね。 

 目的は多分私らの殲滅だったんだろうが、邪魔が入ったとかね」

「へ、いい気味だ、魔王の娘だか何だか知らないが雑魚だったんだな」


ミルレールお姉様本来の目的がダークエルフの殲滅…

でもそうだよね、ミルレールお姉様ならダークエルフ程度なら潰せる。

魔法の一撃一撃は強力だけど、ダークエルフの放つ魔法では

ミルレールお姉様に大きなダメージを与える事は出来ないだろうからね。


だって、ダークエルフは魔力量が少ないから。例え大規模だったとしても

魔力量の少ないダークエルフが放った魔法であれば大した効果はない。

それにブレイズお姉様も動いて居たし、ダークエルフは手も足も出ずに潰されてた。


そもそもミルレールお姉様とダークエルフだった場合

ダークエルフが魔法を放つ前に1人1人潰される。

不意打ちが本来なら全く聞かないミルレールお姉様相手に

一撃を確実に当てなければならない魔法しか扱えないダークエルフは相性が悪い。


そして、ダークエルフと私の相性は実に最悪と言える。

だって、ダークエルフの魔法全ては私に効果が無いのだから。


「何であなた達がエルフを憎んでるかは知らないけど。

 私達はエルフに助けられた恩があるの…だから、そこを退いて!

 エルフを襲うって言うなら私達が戦ってやるんだから!」

「なら私らを退けてみな! ブラックショック! 闇属性の魔法をくらいな!」


やっぱり巨大な範囲攻撃。それも何人も同時に打ってきたね。


「闇属性でも、魔法であるなら!」

「何!」


私は放たれたブラックショックを全てかき消す。

ダークエルフの少ない魔力で放たれる魔法なら私は簡単に吸収できる。


「それに規模がデカければ良いって訳じゃ無いよ」


ブラックショックをかき消すと同時に周囲に魔方陣を展開する。

そしてダークエルフに向けてマジックアローを放った。


「な! ただの基礎魔法なのに…」


私が放ったマジックアローは周囲の木々を貫き倒す。

ダークエルフはどうやら高いところが好きみたいだった。

それはエルフ達も同じだけど。やっぱりエルフと言う種は木の上が落ち着くのかな。


「そこだぁ!」


ダークエルフの落下と同時にリズちゃんが瞬時に間合いを詰めていた。

それは予想出来ていたから、急いでリズちゃんに強化魔法を掛けた。

この場合、リズちゃんが必要とするのは脚力強化。

ダークエルフは身体が弱いから接近戦はそんなに得意じゃない。

エルフも同じ。接近戦となれば分が悪いからね。


扱える装備は短刀か弓かのどちらかだし、接近戦に持ち込めれば

圧倒することはそんなに難しい事じゃ無い。


「いきなり速さが!」

「どりゃぁ!」

「ガフ…」

「クロミア!」

「悪いけど…あなたも仲間の心配が出来る立場じゃ無いわ」

「しま! うぁ!」

「2人だけで来るからよ。相手を侮らない事ね」


もう一方はリトさんが簡単に圧倒してくれた。

ダークエルフは魔法が強力ではあるけど弱点がハッキリしてるからね。


「さぁ、急ぎましょう」

「…もう何だか…しかしあなた達…

 エルさんがあの魔法を消したこと…驚かないんです?」

「ハッ! エルちゃんがやることにいちいち驚いてたらキリ無いわ」

「隠しテクニック多いですからね、私。隠し芸大会に向いてるかも」

「隠し芸ってレベルじゃ無いけどね。まぁいいわ、急ぎましょう」

「はい!」


急いでエルフ達と合流しないと。エルフとダークエルフなら

恐らくダークエルフの方が優勢だからね。

エルフはダークエルフと肉体的には同じ条件。でも魔法は違う。

エルフがサポートに秀でてはいるのに対して

ダークエルフは攻撃に秀でている。

だから同じ条件であればエルフの勝算は低いんだから。

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