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強くなる覚悟

「ふぅ、いやぁ死ぬかと思ったわ…」


転移魔法が発動した後、私は更にリトさんの傷を癒やした。

あれだけの重傷で良く意識を保ててたと思うよ。

それに何だか、少し元気そうにも見えたし。

エルフ達の回復魔法がそれだけ優秀だって事かな。


「うぅ、リト姉ちゃんやられちゃったと思ったよ…」

「実際やられてたけどね…はぁ、情け無いわね私。

 あなた達の前であんなお姉さん面して、結局これじゃね」

「あれは相手が悪すぎただけです」


魔王の娘であるミルレールお姉様が相手なら当然といえる。

勇者では無いリトさんがまともに戦って勝てる相手じゃ無い。

ミルレールお姉様が本気を出せば、国くらいは簡単に潰せるんだから。


「でも、あれが魔王の三女…ミルレール…

 そして最後に出て来た魔王の長女…ブレイズだっけ」

「うん…ブレイズの方はミルレールとは全然違ったね」

「えぇ、雰囲気は大分温厚に思えた…でも、恐らく勝てる相手じゃ無いわね。

 私の予想でしか無いんだけど…ミルレールより強いわよ、あれ」

「そうなのかな? 雰囲気はそんな風には思えなかったけど」


ブレイズお姉様は他の姉妹達と比べれば温厚で礼儀正しい。

それ故に、ブレイズお姉様は私達姉妹の中で1番強いと言える。

ミルレールお姉様はテイルドールお姉様はまず相手が格下だとすれば

確実に油断して行動する。だけどブレイズお姉様は違う。

相手が格下だろうと敬意を示すし、油断することは無い。

だから、ブレイズお姉様に対して切り札を切っても対策されてしまう。


ブレイズお姉様は私達の長女…私達全員が尊敬するような存在。

作法も実力も、ブレイズお姉様は姉妹の中で随一だから。


「ああ言うタイプは絶対に敵対したくない相手…何せ、決して相手を侮らない。

 そんな奴は攻略の隙すら見せてくれない…強いわよ…確実に」

「どう言うこと?」

「分かりやすく言えば、実力差を覆すのが困難って事よ。

 ミルレールとの戦いでは、エルちゃんの奇策が上手く嵌まったけど

 恐らくブレイズならあんなヘマはしない…最後の瞬間まで油断しないわ。

 勝利が確定するまで、勝利を確信することが無いタイプ…確実に強いわ」


ブレイズお姉様に私が勝った事は1度しか無い。

勇者様達と共闘した戦いの時だけだった。

その勝利も、ブレイズお姉様は手加減をしてくれていたからこそ。


勇者達一行に…私が居たから…ブレイズお姉様の唯一の弱点は恐らくそこ。

ブレイズお姉様は私達を凄く大事にしてる。そこがある意味では最大の弱点。


「もし…戦う事になったらどうすれば良いんだろう」

「さぁ…最善は戦わないことだけど、あなた達が勇者であるなら

 確実に倒さないと行け無い相手…って、事になるし…

 撃退方法を考えないと不味いわよね」

「でも、きっと勝てるよ! 今回だって何とか勝てたし!」

「あなたは何をしたの?」

「え!?」

「今回、ミルレールを撃退したのはほぼ全てエルちゃんの活躍よ。

 私だって何も出来なかった…エルちゃんが立ち直ってくれなかったら

 私達は全員殺されてた。そう楽観視できる状況じゃ無いのよ。

 今回の戦いで、エルちゃんは確実にミルレールに目を付けられた。

 次は確実に殺しに来る。その時、あなたはエルちゃんを守れるの?」

「そ、それは…」


リズちゃんは解答に困っている様子だった。

普段ならすぐに答えるのに、今はかなりバツが悪そうにしてる。

断言できないんだ…今度ミルレールお姉様が襲ってきたときに戦えるって。


「…だ、大丈夫だよ、今度来ても私は何とか」

「嘘おっしゃい…次、襲われたら勝てないって…あなたが1番分かってるでしょ?」

「……」


次…ミルレールお姉様に襲われたら…私じゃ敵わない。

ミルレールお姉様は私との相性は最悪過ぎる。

未来予知がこなせるから私の作戦は筒抜けだし

魔法による攻撃も殆ど効果が無い。勇者様と協力して撃退したときも

あれは実質、数の力で辛うじて撃破しただけに過ぎない。

今度ミルレールお姉様と戦いになれば…私は確実に殺される。


「今回撃退出来たのはミルレールが相手を見下していたからと言うのが大きな要員よ。

 だから、エルちゃんの作戦に気付かず、あっさりと嵌まったってだけ。

 でも2度目は違う。2度目はエルちゃんを侮って挑んで来たりはしない。

 当然そうなると、今回の様な不意打ちでの撃退は不可能よ」

「なら話は簡単だよ…私達が強くなれば良い! エルちゃんを守れるだけ強く!

 そして、一緒に戦ってミルレールを倒せば良いんだ!」

「簡単に言うけど、正直それしか方法が無いと言うのが事実なのよね。

 私の斧も折れちゃったし、龍の鱗も切り裂ける得物を作らないと駄目よね」

「あ、そう言えば武器大丈夫なの? 斧が折れちゃったら」

「あら、私を誰だと思ってるの? 斧は何本もあるわ。

 武器を1本しか携行してない奴なんて三流以下よ」


そう言うと、リトさんは自分の鞄から再び巨大な斧を取り出した。

何本も入ってるんだ…あの魔法の鞄の中。


「何本あるの?」

「10本は常時携帯してるわ。万が一魔法の鞄をロストした時用に

 自分の家にも10本くらいは常備してるわ。

 一応、魔法の鞄の予備も大枚叩いて買ったのよ。

 支給品は1個しかくれないからね。はぁ、魔法の鞄高過ぎるわ」

「おぉ…流石リト姉ちゃん」

「うーん、エルちゃん。無理なのは分かってるけど魔法の鞄作れない?」

「作れますよ」

「そうよね、作れるわけ…って、え!? さらっと言ったけど何!?

 作れちゃうの!? 魔法の鞄まで作れちゃうわけ!?」


さ、最初流したと思ったけど、普通に聞えてたんだ…


「ま、まぁ…魔法の鞄の構造はそもそもこの帰還魔法と似たような物ですし

 第一、魔法の鞄の魔方陣をヒントに帰還魔法を作ったわけでして

 同じ様な構成の物を作り出すことは出来ます」

「それ、量産したら絶対に売れるわよ」

「いやぁ、それは流石に…そんなに量産できる物でもありませんし」

「まぁそうよね、賢者達ですら作るの手こずってるらしいのに

 1人でポンポン出来るわけないか。でも、良い事聞いたわ。

 これでもし魔法の鞄に何かあっても問題無いわね」

「はい、魔法の鞄が無かろうと魔法の鞄の中にあった物を取り出すことも出来ますしね」

「そうそう……え!? 出来るの!?」

「あ、は、はい」


魔法の鞄にある魔方陣はあくまで道具を入れる空間への入り口でしか無いからね

同じ構成の魔方陣を組めば何処でも入り口が出来上がって道具を出せるし。


「…どうなってるの? 魔法の鞄の中って」

「魔法の鞄はあくまで道具が入ってる空間への入り口でしかありませんから。

 魔法の鞄に使われてる魔方陣は維持している魔力によって繋げる空間を変えます。

 例えば同じ鞄でもリズちゃんが使っていればリズちゃんの道具が取り出せて

 リトさんが使えばリトさんの道具が取り出せるようになってるんですよ。

 

 鞄はあくまで魔方陣を描いているだけの入り口でしか無いので

 同じ魔方陣を別の場所に描いたとしても同じ空間に繋がるんです」


私は絵を描いてそのイメージを見せることにした。

絵はシンプルな物で、ただ家を書いてるだけだけどね。

考え方としてはそんな感じだし。


「ただ魔法の鞄の場合は常時繋がってる状態で維持してるんですけど

 新しく描いた場合はその空間に繋がるまでの時間がどうしても掛るので

 道具を取り出すまで少し時間が掛ってしまうんですよ。


 帰還魔法も同じ様に距離があれば発動まで時間が掛りましたよね?

 この魔方陣も同じ様な物です。

 まぁ、帰還魔法以上に時間が掛るんですけどね。


 ですから、切羽詰まってる状態では無理ですけど

 唐突なサバイバルとなっても何か陣を描ける物があれば問題無いです。

 でも、基本的に繋がる先が変る度に時間が掛ってしまうから

 自分用の魔法の鞄を常備してるってのが1番ですけどね」


私の説明が一通り終わった後、2人の顔を見たところ

2人とも全く分かってる様子じゃ無かった。


「……分かったわ、私には分からないと言うことが分かったわ」

「さっぱりだよ…どう言うことなの?」

「ま、まぁ簡単にえば魔法の鞄を無くしても

 私に言ってくれればどうにか出来るって事です」

「それは凄いわね…いやぁ、エルちゃんは本当天才的で恐いわ」

「良くわかんないけど魔法の鞄は何処でも繋がる扉って事だね!」

「いや、どっちかというと魔法の鞄にある空間が

 どんな場所でも出来る扉で繋がる倉庫…かな?」

「うん! わかんない!」


そんな笑顔で言われても返答に困るけど…

まぁいいや、説明するってなると大変だしね。

とりあえず魔法の鞄に何かあっても私がどうにか出来るって分かってくれればいいや。

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