学生として
あの襲撃以降、魔物達の活動が活性化してきた。
今まで警戒はして居たけど臨戦態勢ではなかった人類側も
この活性化から常時臨戦態勢を敷くようになった。
私の父親もこの村を守る兵士であり、凄く優秀とされていた。
その事もあってか、お父さんは人間達の大国へ召集される。
その際に、私達もその大国へ引っ越しと言う事になった。
この国へ移動して、そろそろ6年ほど。私は13歳だった。
少しだけ背も伸びてきて、胸も出て来ている。
人間の成長速度は本当に速いと自覚できた。
たった13年で、ここまで大きくなるのだから。
「お姉ちゃーん! 行ってらっしゃーい!」
「うん、行って来ます」
6年の間で妹も出来た。
やっぱりリリンの成長速度を見ても人の成長速度が
速いってよく分かった。
私によく似た姿をしているけど目は少し垂れてる
身長は同い年の子と比べると小さいかな。
でも、私達の容姿はやっぱりお母さん似かなぁ
お母さんはつり目だけどね。
「魔法を扱う際に重要な要素はいくつかあります。
まずは魔力。これは魔法を使うためのエネルギーであり
生き物なら誰でも持っているエネルギーではありますが
個人差が大きく、低い人は強力な魔法を扱う事が困難となります」
私も一応は国にある学校という施設へ行くことになった。
勉強を教えてくれるらしいのだけど、私には常識の話ばかりだった。
魔法に関して言えば、人間よりも魔物サイドの方が詳しい。
正確に言えば魔王が最も詳しいと言える。
何せ、お父様は殆どが魔力で出来ている魔物を操れる。
それだけ魔力の扱いには長けていて、その娘である
私達姉妹も魔法について詳しいのは当然だった。
でも、ミルレールお姉様は魔法に関してはさっぱりだったけど。
「次に魔法陣です。この魔法陣は対応した魔法陣を呼び出し
そこから魔法を放つ事が出来るようになっています。
魔法陣の組み方次第で対応する魔法の性能が変ります。
この魔法陣は技術ですので、極めれば上達することでしょう」
「先生、でも魔力が少なかったら意味ないんでしょ?」
「まぁ、残念ながらそうなりますね。魔法陣を上手く組んでも
魔法の威力や消費は僅かしか変化しませんから」
「へ、じゃあやっぱり魔力が多い奴が凄いんだな! じゃあ、俺が最強」
これは嘘の情報…と言うよりは、人の技術がその域に達していないんだと思う。
魔法陣は僅かな組み方で威力は激しく増減する。
組み方を変えれば消費魔力を抑える事も出来るし
高火力の魔法を放つ事も出来る。上手く扱えば身に纏うことも出来る。
魔法陣を身に纏うのは私達姉妹の中では出来て当然の技術だった。
と言うか、生まれて間もない小さな頃でも出来るような技術。
でも、人類はこの身に纏う技術を持っていない見たい。
身に纏えば僅かでも身体能力の向上も狙えるし
上手く身体の部位と合わせれば予想外の方向からの攻撃も出来るし
魔法の威力を上げることだって可能なほどに有用性が高い。
魔力が多ければ多いほど有利なのは間違いないのだけど
魔力が多ければ有利、と言うのはあくまで魔法の技術が高い水準であれば。
多分、今の人類サイドでは魔力の多い少ないは殆ど意味が無い。
「ふぅ、今日もしんどかったね、エルちゃん」
「そうだね」
こっちに来て、私にも友人という物が出来た。
村に居た頃はあまり子供が居なかったから、友人は居なかった。
そもそも、私は家に籠もって魔法の研究や練習をしてたから交流は無し。
でも、こっちに来てからは無理矢理学校に行かされるから友人が出来た。
彼女の名前はリズ・ヒストリー。高い魔力を持っているけど
魔法を使うのは苦手で、身体を動かすのが大好きな少女。
だけど、ご両親は歴史の研究をしたり、勇者様の事を調べてたりする。
結構重要な仕事らしくて、少しお嬢様と言う感じかもしれない。
見た目は全然そんな感じはしないけどね
かなり活発な子だから、普段着は動きやすさ重視だからね
茶色く短いクセが大きいからね。
髪の毛を整えても、確かうねってしまうとか言ってたし
天然パーマなのかな。少し大変そうかも。
私は髪の毛は肩にかかるくらいのストレートだけど
癖を直すの大変なのにリズちゃんは癖が強いし天然パーマって
中々直すのに苦労しそうだなぁ、大体直してないし。
でも、私が通ってる学園は両親が凄い人と言うパターンが多い。
私のお父さんだって、こっちに来てかなり出世してるからね。
「正直さー、私って魔法覚えるの苦手だから頭痛いよ。
でもさ、エルちゃん以外の人は魔力量が多いなら魔法使えーっていうからさ」
「魔法は使えたら強いからね」
「でも、私は身体が丈夫だから身体を鍛えたいんだよねー。
どう思う? やっぱり私も魔法を練習した方が良いかな?」
「うーん、リズちゃんは身体を鍛えた方が良いと思うよ?
苦手な事を無理にやっても、あまり成長出来ないと思うから
やっぱり自分が出来る得意な事を鍛えた方が良いと思う」
「だよね! うん! やっぱりエルちゃんに相談するとスッキリするね!
何で他の子はエルちゃんとあまりお話ししようとしないんだろう?
魔力量が少ないからって関係ないと思うんだけどなぁ…」
「リズちゃんは魔力量凄く多いよね」
「そうだけど…でも、魔力量ってそんなに大事なのかな?
それよりもさ、頑張ろうって方が大事じゃないかな?
エルちゃん、いっつも凄く頑張ってるのにさ」
あまり下手な事をしちゃうと凄く質問をされそう。
質問の時に、もし下手な事を言っちゃって
私の正体がエビルニアだなんて事を知られたら絶対に私は殺されちゃう。
それが恐いから、出来れば目立たないように息を潜めることにしてる。
「あ、そう言えば今日の授業でさ、魔王のお勉強があったよね」
「……う、うん」
「凄く悪い人達なんだよね? 何でそんなに悪い事をするんだろう。
特にエビル二アって奴、酷い奴だよね! 勇者様を騙して殺しちゃうなんて!」
「そ、そうだね…」
そう、私がした事はそう言うことだ、全ての人に怨まれても文句は言えない。
私は世界を救おうとした英雄を…騙し、殺した。
……私には誰も味方が居ないのは当然なんだ。だって、私は仲間を殺したのだから
「でもさ、勇者様って他の魔王の娘さん達倒してるんだよね?
昔のお話しが本当なら、エビルニアってずっと勇者様と一緒に居たんだよね?」
「そ、そうなるね…」
「だったら、どうして勇者様は他の娘さん達を倒せたの?
エビルニアが一緒に居たんなら、その時にエビルニアが裏切れば良いのに」
「……きょ、教科書にも書いてあったじゃん…魔王に好かれたかったから…
自分の姉妹も騙して、勇者様も騙して…お父さんの目の前で勇者様を…殺した」
人間達の本にはそう書いてあった、そんな風に思われても仕方がない。
実際、私は他の姉妹達も殺してる…
時間が経てば蘇ることは分かっていたとしても、それは変らない。
「でも、魔王の娘さんって魔王が死なないと復活するんだよね?
だったら、そんな事してもお父さんに嫌われるだけじゃないかな?
他の姉妹達とも仲が悪くなっちゃいそうだし、意味なくない?」
「そ、そんな事無いよ、多分」
「うーん、何だか少し疑問だよね。エビルニアは何がしたかったんだろう?
勇者様を殺しちゃってるんだから、悪い奴なのは間違いないんだと思うけど
何か事情があったのかな?」
「さ、さぁ…」
……リズちゃんは少し頭が良い…普通、昔の話を聞いてそこまで読み解けるかな。
普段はそんな風には見えないけど、やっぱり頭が良いのかな。
それとも、ご両親が歴史を調べているからその影響なのかな…
「でもさ、最初にそんな風に呟いてたのはエルちゃんだし」
「え!?」
聞かれてた!? 授業をしてる時に言い訳がましく呟いた言葉を…
(事情も知らないくせに…)
私は授業の時、小さな声でこう呟いてしまった…
本当に私は馬鹿だった…そんなの言い訳でしか無い。
どう解釈されていようと、私が勇者様を殺した事実は変らないんだから。
「エルちゃんは、何か知ってるの?」
「い、いや、な、何も知らないよ」
「うーん、そうなんだ…エルちゃん頭良いから
何か気になるところがあるのかと思ったけど」
下手な事は言えない…些細な事でバレてしまう可能性があるんだから。
「で、確かその後、勇者様の力が爆発して魔王に重傷を与えたんだよね?
それでエビルニアは死んじゃって、魔王は重傷を負って……あれ? おかしいな」
「ど、どうしたの?」
「なんでエビルニアは死んだの?」
「え!?」
「だって、魔王が死なないと死なないんだよね、娘達って。
じゃあ、なんでエビルニアは死んだの? 魔王が生きてるのに」
「き、きっと娘さんを倒してたから、おと…魔王が怒って
エビルニアは復活しないようにしたんだよ!」
「あ、そうかも」
ご、誤魔化せた…この子、勘が鋭くて何だか恐いよ。
…でも、実際何で私はこうやって人間として蘇ったんだろう。
お父様が生きているなら、私は蘇るはずなのに…
お父様が裏切った私を怒って復活しないようにしたってさっきは言ったけど
…正直なところは分からなかった。自分から離れようとしたのが理由?
でも、そんな事をしたような記憶は無いのに…
「でも、何だかこの昔話、良く聞いてみると少し変な気がするよね?
こう言うのちょっと気になる。色々と調べようよ」
「昔の話なんだから、そんなに詳しく知らなくても良いと思うよ。
それよりもほら、今は魔物が活発になってきてるんだし
私達は強くなって、国を守らないと!」
「あ、そうだね! よーし、私もっと強くなるぞ! エルちゃん!
私と一緒に頑張って鍛えよう!」
「え?」
「私の相手になってよ!」
「え、えぇ!?」
「まずは格闘技の練習だー!」
「ま、待って! 私は魔法使いだから、格闘技は!」
「走る時とかあるし、鍛えた方が良いと思うよ! だから!」
「え…えぇえ!」
その日は1日中リズちゃんの相手をする事になった。
あまり運動はしないから、練習が終わった後は汗でびっしょりだった。
それに熱中していたから真っ暗…うぅ、これは…
「うん、良い練習になったよ!」
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぅぅ…」
「凄い汗だね、大丈夫?」
「わ、私…ま、魔法使い…だ、だから…た、体力…はぁ、な、無いのに…
こ、こんなに…身体を動かしちゃったら…はぁ、も、もう、動けない…」
「じゃあ、私の家に泊まる? お家まで結構遠いよね?」
「うぅ…そうする」
今日はしんどかったよ…




