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最終授業の準備

「はい、それでは今日は勇者候補としての最終授業です」

「やったー!」


……え? も、もう最終授業? でも、私はそんなに何かやった記憶が…


「どうしました? エリエルさん、そんな表情をして」

「あ、いや…その…も、もう1ヶ月経ったんだなーって」


私としてはまだほんの数日程度って感覚しか無かった。


「あ、あんなに長かったのに…エルちゃん的には短時間だったのかな…」

「それはまぁ、エリエルさんはずっと籠もってましたしね。

 …そう言えば、お部屋はちゃんと片付けてくれました?

 おふたりから話を聞いたところ、かなり散らかってるとか」

「あ…」

「ここ、一応お城の内部なんですけど…まぁ良いです。

 この最終授業が終了し、勇者候補として活動となった場合

 基本的にここを拠点にあなた達には動いて貰いますからね」

「帰って良いんじゃ無いの!?」

「帰宅は自由ですが、呼びかけがあったり、何かしらの依頼をこなそうとした場合

 この部屋に来て貰います。作戦会議だったりが会った場合等もこちらで。

 勇者候補が他の冒険者と一緒というのはちょっと問題ありますしね」

「ふーん…そう言えばさ、私達以外に勇者候補って居るの?」

「一応は。まぁ、そっちは私は管轄外なので詳しくは知りませんがね。

 一応、話は聞いていますが、話を聞いた感じあなた達が突出して優秀です」

「流石私達!」


リズちゃんが得意気な表情で腕を腰に当て、にっこりと笑った。

その表情を見たミザリーさんは相変わらずのあきれ顔で言葉を続ける。


「ま、あなた達の場合はエリエルさんが突出してるだけです。

 リズさんの高い適応能力は目を見張る物がありますが

 魔法の腕はまだまだであり、自身の強化も出来ない。

 あなたの能力は現状、エリエルさんありきであり単体では弱いです」

「別に良いじゃん、1人で強いって言ってもたかが知れてるもん。

 勿論私はこれからも強くなろうとするけど、私がどれだけ強くなっても

 エルちゃんやリト姉ちゃんと一緒に戦った時より強くなれないよ」


リズちゃんの躊躇いの無い言葉にミザリーさんはキョトンとした表情を見せる。

その横ではリトさんが嬉しそうながら、小さく笑っていた。

その笑顔は安心している笑顔…私にはそう見えた。


「ハッキリとそこまで言えるなら十分ね。大した物よ、あなた。

 将来有望よ、全く。最初の方は自分勝手な奴の為に戦いたくないって言ってたのに」

「それは今も一緒だよ。でも、守りたい人を守れば自然とそんな人達も救うんでしょ?

 なら、私は守りたいって思った人を守る為に戦うよ。

 その影響で誰が救われるのか気にしないで」


そう言えば、1ヶ月の間でリズちゃんちょっとだけ積極的になったかも?

最初は勉強嫌だ嫌だ言ってたけど、今は言ってないし…

私が魔方陣の研究ばかりしてる間に何かあったのかも。


「…ふぅ、もしかしたらリズさんの優秀な部分は戦闘面では無く

 性格の面なのかも知れませんね…最初は問題児だと思いましたが

 少しくらいは成長したとして多少は認めてあげます」

「えへへ、ありがとう」


ミザリーさんに褒められることが殆ど無かったエルちゃんは

この言葉を聞いて、かなり嬉しそうに笑いながらお礼を告げた。

やっぱり褒められるって言うのは嬉しいからね。

普段褒められなければ特に…おめでとう、リズちゃん。


「でも、この最終授業を突破できなければあなた達は勇者候補から外れます」

「そうなの!?」


衝撃的なひと言に私とリズちゃんは驚いた。

勇者候補から外れるって、学校を強制卒業までさせたのに!?


「まぁ、実力が伴ってないと言う事で…なんて言ってみましたが

 正確にはリトさんがあなた達の担当から外れるだけですが」

「えぇ!? どうして!?」

「勇者候補は勇者候補のまま教育担当が変るって感じですね」

「1ヶ月の間だであなた達を育てられなかったら、私の教育方法が

 あなた達に対して効果的では無かったという事になるしね。

 だから人物を変えて再トライって事よ」

「そんな…」


私達が上手く出来なかったせいで、リトさんが責任を負うって事?

どうして…それは私達が駄目だからで…リトさんは悪くないのに…


「まぁ、最終授業って奴も私が一緒に戦うわけで

 ここで突破できなかったら私の実力不足もあるだろうしね。

 危険な仕事が多い勇者候補の補佐としては力不足って事でしょう」

「その通りです。教育方針とかよりもそっちの方が大きいです。

 勇者候補に何かあっては困りますからね」


勇者候補を教育する立場は…勇者候補を絶対に守らないといけない…

そう言う事なのかな…学校から卒業させられた訳だけど

扱いその物は、学生自体とそんなに変らない、一応は保護されてる立場って事…


「まぁ何にせよ突破できれば問題無いのよ。で、最終授業は?」

「あぁ、そうですね。今回最終授業の舞台となるのはある森です」

「森?」

「はい、悠久の森と言われてます。人類の干渉は極僅かでして

 一応、入り口と出口の位置は分かって居ます。

 あなた達はこの森で3日間生存、あるいは森の中心に住まうとされる

 ダークエルフを撃破することが出来れば合格です」


ダークエルフを撃破って言うのは難易度が高そうだし3日間生存が無難かな。

ダークエルフは高い魔法技術を持つ、エルフの中でより強力な魔法を扱える種族。

エルフと魔物のハーフとして生まれる。高火力の魔法を扱う事が出来る存在。

弱点とすれば、高い魔法能力を持ってはいるけど魔力量が少ない所かな。


継続戦闘能力はエルフと比じゃ無いけど、瞬間火力は恐ろしい存在。

分類的には魔物って事にはなってなかった気がする。感情があるし高い知性もある。

確かダークエルフはダークエルフ同士で集団で過ごしてるって聞いたけど

あの話だと、森に住まうとされてるダークエルフは単独みたいだね。

集団で生活してるダークエルフに勝利しろなんて鬼畜にも程があるし。


でも、ダークエルフはそんなに危険って程では無かったと思う。

確か200年前は一緒にエルフと住んでた個体も居た気がするし…

どう言うことなんだろう? もしかしてダークエルフと協力してるのかな?

だとすれば、このダークエルフを撃破しろって1人を倒せって事?

…うーん、分からないけど、戦うのはやっぱり難易度高いよね。


「まぁ、冒険者と同じ様な仕事をするってなった場合

 サバイバル術って言うのは最重要だからね」

「そうですね、ですが今回はあくまで授業ですので

 あなた達の身の安全は保証します。ご安心を」

「うん…頑張るよ!」

「では、早速授業を始めます。はい、これ」

「ん?」


ミザリーさんは懐から封筒を出し、私に手渡してくれた。

封筒の中を見てみると、そこにはお金が入っていた。


「これは?」

「今回の予算です。この資金から装備を整え、食料も整えてください。

 そして明日、3日間のサバイバルをして貰います」

「サバイバルって言うの?」

「冒険者において重要なのは事前の準備よ、当然でしょ?

 事前にどれだけ装備を整え、食料を用意しておくかが重要なの。

 ま、今回は予算が決ってるみたいだし、しっかりと考えて使いなさい」


封筒の中にある資金は1000ビルド…私が買う本は大体1冊が5ビルドだから

200冊買えるほどの大金って所だね。

装備や食料を整えるなら、これくらい無いとキツいか。


「では、準備を」

「う、うん」


私達は早速街へ出て買い物をすることにした。

まずはリズちゃんの武器を買う必要があるよね。

リズちゃんは魔法を多少は使える様になっているけど

基本的には接近での戦いが多いからね。


「うーん…武器が高い…」


短刀が300ビルド…通常サイズの剣は600ビルド…とても高い。


「ま、武器ってのも手間暇掛るからね、出来れば高い物が良いんだけど

 残念ながら、予算は1000だけ、こりゃ考えて買わないと不味いわね。

 1000ビルドで後、寝具、食料、調理器具、服とかも買わないとだし」

「うぅ、私が買ったとしたらエルちゃんが何も買えない…」

「私は良いよ? 魔法が基本だからね」

「普通は魔方陣を組むのに難易度を下げ、魔力供給の補助をする為に

 杖とか魔導書とか使うんだけど、あなたの場合は必要なさそうだしね」

「そうですね」


私の場合はそう言った補助無しでも魔法を扱う事が出来る。

これは私だけじゃ無く、テイルドールお姉様も同じ。

私の場合は補助があると消費魔力が大きくなるから魔力の節約のために。

テイルドールお姉様の場合は魔力が高すぎるから補助装備が壊れてしまうから。


魔力を完全にコントロール出来る術を身につけているからね。

むしろ、補助となる装備があると私に取ってはマイナスになるだけだし。


「うぅ…私も素手で大丈夫だし、節約しようかな…」

「あなたの場合は買った方が良いわよ、いや本当。

 格闘だけじゃ、いつか限界来るんだからね。

 私のお勧めはこの短刀よ、あなたの素早い動きの妨害にならないからね」

「…でも、300ビルド…」


リズちゃんは300ビルドと書かれた値札と睨めっこをして居る。

欲しいけど、でも高いし手が出せない、踏ん切りが付かない感じがした。

何だか、少し微笑ましい雰囲気すら感じる。


「思い切りも時には必要な要素よ?」

「……うぅ、わ、分かった! 買うよ!」

「それで良い」


でも、リトさんの後押しもあり、リズちゃんはついに購入!

少しだけ後ろめたそうな表情をしているけど、短刀を受け取って少し嬉しそうだった。


「これで、エルちゃんを少しでも守れれば良いな」

「あら、私は守ってくれないの?」

「あはは! リト姉ちゃんは私なんかが守らなくても余裕じゃん!」

「まぁね、むしろ私があなたらまとめて守らないといけないわけだし。

 ま、前衛2人、後衛1人ってのは案外悪くないパーティー編成だしね」

「ですね、あ、私も守られるだけじゃ無く守りますからね」

「うん! 護り守られって事だね!」

「そうだね」


リズちゃんが短刀を買ったことで、少しだけ私達の覚悟も引き締まった。

その後は食料や寝具とかのサバイバルで必需品となる物を買った。

残り10ビルドで私は紙と紙に文字を書くためのペンを購入した。


この2つを買ったときに、私は2人に渡そうとしていた物を思い出せた。

危ない危ない、忘れちゃうところだったよ。


「そうだ、はい2人ともこれ」

「んー?」


私は2人に帰還用の魔方陣を描いた紙を手渡した。

もし何かあったらこの魔方陣で城へ帰れる。

身の安全は保証してくれるそうだけど何があるか分からないし

手渡しておいても損は無いよね。


「これは?」

「私がずっと部屋に籠もって研究した成果だよ。

 出来れば使いたくは無いけど、無くさないように持っててね。

 何かあっても、この魔方陣があればいつでも帰れるから」

「どう言うこと?」

「何かあった時、この魔方陣に魔力を流し込めば帰還魔法が発動するの。

 距離が近かったら、1人が使えば全員が帰れるから」

「ふーん、ちょっと試してみよっと」


リズちゃんが私の魔方陣に魔力を注ぐ。同時に光りが私達を包み

目の前には私のボロボロに捨てられた紙が散らかってる部屋が広がった。


「……凄いわね」

「……リト姉ちゃん、どっちの意味で言った?」

「……両方」

「あ、あはは…片付けるの忘れてた…」


こ、これは素直に…失敗してしまった…片付けてれば良かった…


「だぁもう! 片付けるわよ! 匂いも籠もってるし窓開けて!」

「臭いですか!? やっぱり私の部屋臭いですか!?」

「何日間もお風呂入らなかったりしてたしね…まぁ、臭くないけど」

「ほらもう! 明日大事な日なんだから身の回りはしっかりよ!

 いつくたばっても良い様に!」

「は、はひぃ!」


そのままの流れで、私達3人は一緒に私の部屋を掃除した。

うぅ…2人に悪い事しちゃった…うぅ、掃除しようと思ってたのにぃ…うぅ…

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