魔方陣の完成
魔法の研究は中々に時間が掛った。
だけど、リズちゃんのひと言から一気に進展した。
魔方陣と魔方陣を繋げる研究。今までの分と比べると楽だった。
だって、その繋げるという方法は私がよく使っている
テレポートでよく使う技術だから。
テレポートの技術を応用することで魔方陣と魔方陣を繋げる事が出来た。
これで入り口となる魔方陣を動かす事で出口となる魔方陣も動き出し
魔方陣と魔方陣の間にトンネルとなる道を作り出すことに成功した。
今日はこの魔方陣が距離があろうとちゃんと動いてくれるか。
それを実験するために1人で遠出をすることにした。
流石に真っ暗な中で起すなんて事は出来ない。
「ふぅ、結構歩いたなぁ…これは明るくなってから来た方が良かったかな」
そんな事を今更後悔しても正直、もう遅いって言うね。
「ふぅ」
よーし、とにかくここで片割れの魔方陣を起動してみよう。
これで帰還が出来ればこの魔方陣は実用性が出来る。
もし外出先で大きな問題が起こったとしても変える事が出来る。
「ぐるる…」
やっぱり少し外出しすぎたのかも知れない。
嫌な鳴き声が聞えて周りを少し見渡してみたら
いつの間にか野犬に包囲されている…
いや、大きさや姿から考えて野犬じゃ無いかな。
確かこんな魔物が居た気がする。ナイトハウンド。
夜に活発に活動し、集団で獲物を狩る魔物。
普通の野犬と違うのは人を積極的に狙おうとすること。
ナイトハウンドの食事は魔物である関係上魔力だからね。
魔力は魔物の方が多いけど、人間の魔力は摂取しやすいからね。
「うーん、ごめんね。今はあなた達に構ってあげる暇は無いの
出来れば急いで実験したいから、少し離れてて?」
「ぐるるぅ…」
ナイトハウンド達は私にこの上ないほどの警戒をしている。
いつでも近付けるのに、1匹も近付こうとはしない。
ただ威嚇しながらこっちを見ているだけ。
中には少しだけ震えている個体も居る様に見えた。
もしかして、ここってナイトハウンドの縄張りだったのかも?
だから威嚇して追い払おうとしてるのかな?
うーん、暗い中で適当に歩き回ったから迷っちゃったんだ。
悪い事しちゃったな。でも、すぐに帰るし大丈夫かな。
「ごめんね、縄張りだったんだね。すぐ出ていくから大人しくしててね?」
「ぐるる…」
でも、これだけ近いともしかしたら誤ってナイトハウンドも転移されるかも知れない。
そう考えた私は、まずはナイトハウンドたちから離れることにした。
包囲されている状態だけど、私はナイトハウンドたちに近付く。
ナイトハウンド達は私に強い敵意を向けながら私の歩く道をゆっくり空けてくれた。
ナイトハウンドは非常に勘が鋭い魔物でもあるからね。
実力の差があれば例え包囲しても襲おうとはしてこない。
今回は私が縄張りに入っちゃったから仕方なく出て来たって感じかな。
とにかく急いでここから離れよう。あまりナイトハウンドを刺激したくないしね。
もし下手に魔法を使ったら怯えた1匹が襲いかかってきちゃうかも知れない。
そうなると、一気に全員が襲いかかってくるだろうし、刺激はしないようゆっくりと。
これ位なら別に苦労するような相手じゃないけど
無闇に倒しちゃうわけにも行かないしね。
「よしっと、これ位離れれば良いかな」
ナイトハウンド達は私を追っては来なかった。
ジッとこちらを睨み付け、うなり声を上げながら
離れて行く私を見守っていただけだった。
実際賢い選択だと思う。私1人でもナイトハウンド位ならすぐだよ。
危険度で言えば、ナイトハウンドはCランク位かな。
数が多いと言う点を除けば野犬とそんなに変らないし。
「ふぅ、よし、じゃあ魔方陣を起動してみよう」
ナイトハウンドの巣から距離を取って、私は魔法陣の起動を行なった。
魔方陣は黄色く淡い光りを放つ。
「ぐるる!」
「うえぇ!?」
だけど、私が魔方陣を起動したタイミングにナイトハウンドの1匹が飛びついてきた。
流石に驚いたけど、ナイトハウンドが私の腕を噛み付くと同時に消えた。
正確には私がナイトハウンド達の前から消えたというのが正しいのかな。
「痛たぁ…」
すぐにかまれた腕に回復魔法を掛け、感染症の予防も行なった。
だけど、この一連の騒動でこの転移魔法の弱点が分かった。
魔方陣を起動した場合、その魔方陣を持ってる人物しか転移しないと言う事。
帰還するときに少しの時間のラグがあると言う事。
その間に襲われるから、切羽詰まったときに発動させるのは難しい。
発動までのタイムラグは仕方ないとは言え、何か方法を考えないと。
「うーん、でも…」
でも、距離が短い場合はすぐに転移する事もさせる事も出来る。
試しに2つの魔方陣を描いて、至近距離で起動して見たけど
予想通り、すぐに私の指先が出口となる魔方陣から出て来た。
距離が近い場合は瞬時に転移させることが出来るって事だね。
でも、距離が離れると発動まで時間が掛ってしまう。
更に入り口となる魔方陣を持っている人物以外は転移できない。
……だったら、複数の入り口を用意して同時に発動させたらどうだろう。
早速私はそれを試してみたけど、これは正しいみたいだった。
「複数の入り口を用意すれば良いのかな…でも、問題はどうやって
同時に入り口となる魔方陣を起動するか…」
何とかして入り口同士の魔方陣を繋げないといけない。
このままだと個人しか転移できないし
いざと言う時に全体で逃げる事は出来ない。
…でも、これも考えてみれば繋げる方法は思い浮かぶ。
単純に入り口となる魔方陣全てに魔力が流れる道を作れば良い。
これもテレポートの技術とよく似ている。
でも、この場合は近くに居るときしか効果が無い。
離れている場合は個人個人で転移して貰う必要がある。
通話する手段があれば、意思疎通から距離があっても変えれるし
はぐれた場合、転移したと伝えることも出来るけど…うーん。
あ、そうだ、出口となる魔方陣が起動した場合
入り口となる魔方陣に起動したと言う事を光りで示せば良い。
既に入り口となる魔方陣と出口となる魔方陣は繋がってるわけだし
出口が動けば入り口も動く様にする事は出来るはず。
流石に転移までは入り口を動かさないと無理だけど
光らせること位は出来るはずだしね。
「これも今までの知識から十分応用出来るね」
そのまま私は1日中徹夜で魔方陣の改良を行なった。
結構時間は掛って、その後何度か試したけど無事に効力を発揮してくれた。
この魔方陣の研究だけで何日間も時間を費やしてしまったけど
無事に魔方陣を完璧な物に出来て、私は満足できた。
これで、もし皆に何かあっても撤退することが出来る。
流石に距離がある場合、帰還魔法が発動するまで時間が掛るという
難点までは解消できなかったけど、十分前進できたと思う。
後は実戦でどれだけ活用できるか…出来れば使いたくは無いけどね。
 




