平和な時間を
はふぅ…久しぶりにお家のお風呂入ったー。
お城のお風呂と比べたら当然小さいお風呂なんだけど
何だか安心するよね、この感じ。
うん、ちょっと足を伸ばしたらお風呂の縁に足が届くや。
そのままお風呂の縁に足掛けて、のんびりぷかぷかしよう。
うぅ、でも私、こんな所でのんびりして良いのかなぁ…
うーん、少しでも速く完璧な魔方陣を組めるようになりたいのになぁ。
「うぅ…」
風呂場にある曇った鏡、私はその鏡に魔方陣を描いてみた。
だけど、当然魔方陣を書き切る前に鏡は再び曇る。
…だけど、少しだけ今まで書いた魔方陣とは反応が若干違った気がした。
「ちょっと発動したのかな?」
なんて、鏡に魔方陣を書いても、すぐに水滴で切れるし意味ないんだけどね。
仮に若干発動していたとしても、今までと変らないんじゃ変化は無いよね。
「うーん」
とりあえずタオルを頭に乗せてもう一度湯船に深く浸かる。
えへへ、こう言う風にタオルを頭に乗せるって
何だか恥ずかしいけど、やってみたくなるよね。
温泉とかだったら特に、でもここは家のお風呂なんだけどね。
「ふんふふふーん」
自然と鼻歌まで出てしまう。お風呂って何だか不思議だよね。
心が落ち着くって言うか、何だか安心出来る…
「う、うぅーん…」
な、何だか眠たくなってきた…うぅ、お、お風呂で寝ちゃったらのぼせちゃう…
「お姉ちゃん!」
「ふぁ?」
「私も一緒にお風呂入りたい!」
「え? リンってお風呂嫌いだったんじゃ…」
「お姉ちゃんと一緒には居るから大丈夫なの!」
「で、でもお姉ちゃんは臭いって…」
「大丈夫!」
そう言って、リンは私が入ってるお風呂に飛び込んだ。
うぅ、嬉しい…嬉しいよ私…
「うぅ、リンー!」
「お姉ちゃん? ど、どうしたの!?」
「お姉ちゃん、リンに嫌われないように毎日お風呂入るようにするよー!」
「私がお姉ちゃんを嫌いになるわけ無いよ!」
「ありがとう! ありがとう!」
うぅ、よ、良かったぁー! 嫌われたわけじゃ無くて良かったよぉ-!
「はぁ、エルが居ないときはお風呂入るのいつも渋ってたのに
あの子がお風呂に入るとあっさり入るのね…私の苦労…」
「ま、まぁまぁ、姉妹が仲良しって言うのは良いことだし」
「それは分かってるんですけどね…あの子はずっとお姉ちゃんっ子だし。
エルがしばらく帰ってこないって知ったときは落ち込んで大変でした。
さっきも暗い雰囲気だったんですが、エルの声が聞えると同時に
いきなり表情が変って、一目散にお出迎えするほどですしね」
「リンちゃんはエルちゃんの事大好きだからね。逆もだけど」
「それは最初のやり取りをちょっと見ただけで分かったわ」
「まぁ…所でリズちゃん。あなたはお家へ帰らなくても良いの?」
「私の場合は妹とか居ないし大丈夫だよ」
「親はどんな時も娘を心配してる物よ。顔くらい見せても良いんじゃ無い?」
「そうそう、後から後悔しても遅いわよ? 会える内に会わないとね」
「むー…でもなぁ…いつでも会えるし別に今日じゃ無くても…
それに1ヶ月だっけ? それ位すぎたら後はお家に帰れるから
わざわざ今日会いに行く必要は無いと思うんだけど…」
何だかお風呂の外で真剣な話をしている気がするよ。
でも、私はリンの相手をするので手一杯だけどね。
「お姉ちゃん頭洗ってあげるね!」
「うん、ありがとうね」
「じゃあ、えい!」
冷たい! けど、私は我慢するんだ…折角リンが頑張ってくれてるんだしね。
うぅ、まぁ今日はそんなに寒くないから大丈夫だけど…冬場だったらキツいかなぁ…
「ゴシゴシ、ゴシゴシ」
リン、髪の毛引っ張りすぎ…ちょっと痛いけど…が、我慢我慢…
「うんしょ! うんしょ!」
「うんうん、上手上手、ありがとう」
「えへへ、じゃあ、次はお背中流すよ!」
「うん、ありがとう。でも、その前に髪の毛に付いたシャンプーを流して欲しいなー」
「あ、うん分かった! それ!」
あ、相変わらず冷たい…す、少し寒くなってきたかも。
「じゃあ、このままお背中流すね!」
「あ、待ってね-、その前にもう一度お風呂に入らせて」
「うん、分かった!」
ふぅ、危ない危ない。後もう少しで震えてしまうところだったよ。
流石に震えちゃったりしたらリンに水だって事がバレちゃうよ。
ふぅ、暖かいなぁお風呂……何だか本当に癒やされるよ。
リズちゃんに引っ張り出されてなかったらこんな気持ちにはなってないんだろうね。
あのまま部屋に籠もって研究を続けていたかも知れないよ。
リズちゃんには感謝しないと…お礼を…
「お姉ちゃん、お風呂温かいね…あれ? お姉ちゃん?」
「すぅ…すぅ…」
「あ、お姉ちゃん寝てる! 駄目だよ! お風呂で寝ちゃったらのぼせちゃうよ!」
「まぁ、多分3日間は寝てないし、眠くなるのは当然なのかしら」
「3日間も寝てなかったんですか!? 通りで、目の周りに酷い隈があると…」
「多分、しばらくは起きないよね。エルちゃんをお部屋に運ぼう」
「そうね。ゆっくりとおやすみなさい、エルちゃん」
心の底から安心出来る…そんな、平和な空間…
私には……少し…尊すぎる……けど、少し位は…せめてもう少し位は…




