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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
エピローグ、夢へ向けて
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乗り越えた先に

「エルちゃん、起きた?」

「あ、リズちゃん」


目を覚ますと、私の目の前にはリズちゃんが居た。

楽しそうに笑ってる、そんな笑顔を見て、安心出来た。

ここは……魔王の城…まだこの場所にいるんだ。


「リズちゃん……今日は、良い夢を見たよ」

「そうなんだ! 実は私も良い夢を見たよ!

 えっとね、何だか男の人と女の人達が出て来てね

 エルちゃんをお願いねって! あはは!」

「あはは、私もだよ」

「本当!? 凄いね! 同じ夢を見るなんて!

 あの人が200年前の勇者なの?」

「うん、リズちゃんの夢に出て来た男の人は

 私、見て無いから分からないけど、きっとそうだと思うよ」


リズちゃんも同じ夢を見た…なら、あの夢はただの夢じゃ無かったのかな。

夢だけど、同時に1つの現実だったんだと思う。

私が見たのは、ただの夢じゃ無いって事だね。

実際に来てくれたんだ、きっと…勇者様と皆が。


「そうなんだ。じゃあ、200年前の勇者ってまだ死んで無いんだね。

 何処かで聞いた気がするよ、人が本当に死ぬのは忘れられた時。

 良い意味でも悪い意味でも、忘れ去られない限り死なない。


 どんな状況でも、誰かに覚えて貰っていれば

 心の中で生き続けてるって、そう言ってた気がする」

「私の場合はどっちかな」

「良い夢を見たんなら、良い意味だよ」


……そうかもね、私は200年前に勇者様達を裏切った。

その事を今は後悔してないと言えば嘘になる。

私は今だって後悔してる。だけど、縛られるのはもう終り。

今度からは縛られるんじゃ無くて、支えられて生きていこう。


私の……私の大事な…仲間達…もう、負けないから。

私はもう負けない。必死に努力して、受入れて

必死に前を向いて進み続けよう。それが大事だ。


皆の姿を見て、私がやるべき事はそれだと分かった。

前を向いて歩く。もう、後ろは振り返らないし後悔はしない。


「私、もう後悔しないよ。これからは前を向く。

 まだ、全部が終わったわけじゃ無いんだからね」

「うん! 魔物と人間達が手を取り合えるように頑張らないとね!

 魔王を倒せたけど、それで全部が終りじゃ無い!

 これから大変だけど、私達ならきっと出来るよ!


 あ、でも……リト姉ちゃんとか一緒に来てくれるかなぁ?

 ミザリー姉ちゃんやミリア姉ちゃんも…魔王を倒したから」

「あらあら、随分とくだらない事を悩んじゃってるのね」

「おぉ! リト姉ちゃん!」

「ここまで一緒に来たんですよ? あなた達が目的を失わないなら

 一緒にその目的を追いかける覚悟くらいはありますよ」

「ミザリー姉ちゃんも!」

「私も協力はするさ、まぁ里のエルフ達に相談はしないと駄目だが。

 恐らく、大丈夫だろう。里の方はフレッグも協力してくれるからな」

「おぉ! 皆、来てくれるんだ! でも、どうして?

 私達はもう勇者じゃ無いよ、魔王を倒しちゃったからね」

「知れた事よ、仲間だからね」


リトさんがリズちゃんの疑問に対して笑顔で答えた。

同時にミリアさんとミザリーさんも笑顔を見せる。

その笑顔を見たリズちゃんも笑顔になり、

嬉しそうにリトさんに抱き付いた


「……これが本当の勇者の姿なんでしょうね」

「ブレイズお姉様!?」

「おはよう、エビルニア。いや、エルといった方が良いかしら?」

「いや、エビルニアで良いよ。今の私はそのどっちでもあるから」

「ふふ、そうね。あの子達の活躍で、私達もそしてあなたも無事。

 ま、私達はそれぞれの能力が消失しちゃってるわけだけどね」

「そうなの!?」

「そうよ、気付いてないの? ドレインフィールド出してみなさい」

「え? あ、出ない!」


で、出なくなってる…これはつまり…お父様から解放された証拠…?


「まぁ、あなたは今までと殆ど変わってないでしょうけどね」

「そうだね、ドレインフィールドが使えなくても大丈夫だし

 魔法は……あ、今まで通りかも」

「それはあなたの努力の結果だからね。消えるわけが無いわ」


そうだね、この魔法の発動速度は私が長い時間努力をした結果。

お父様の特性に頼ってたわけじゃ無いしね。


「ふふん、まぁ努力してなかった連中は情け無いことになってるけどね!

 そうでしょ? ほらほら、もはや抵抗とか出来ないでしょ?」

「く、クソ! 何で俺がこんな奴に!」

「魔法を扱うのがこんなに大変とは思わなかったわ…」

「え!? ミルレールお姉様とテイルドールお姉様!?」


み、ミルレールお姉様…リトさん相手に手も足も出てない。

片手で制圧されてる…そ、そこまで弱くなったの!?


「まぁ、命を助けて貰ってるのだし、感謝しろと言ったのだけどね

 あの子達、プライドばかり無駄に達者で変わらないのよね」

「じゃ、じゃあ、レイラードは!?」

「レイラードも無事よ。殆ど力を失ってるけどね」

「えぇ、あなた達魔王の娘の中で未だに実力が健在なのは

 エルさんとブレイズさんの2人だけでしょうね。

 他の3人はほぼ見た相応程度にまで弱くなってます」


ブレイズお姉様はやっぱり常時反射が無くても強いんだね。

あはは、当然としか言えないけど。


「まぁあれね、弱体化してもブレイズが強いのは予想通りよね」

「あぁ、あれほどの実力だったからな」

「今の私も、エビルニア程強くはないわ」

「そ、そんな事!」

「エルちゃんはすっごく強いからね! 魔法の達人だし!」

「でー、もう1人の達人さんは、殆ど魔法使えないってね!」

「黙りなさい! この雌ゴリラ!」

「魔法殆ど使えないくせに生意気ね、私がその気になれば

 今のあなた程度なら容易に圧倒できるのよ? ほら」

「痛! な、何するのよ! 腕を放しなさい! 魔法打つわよ!」

「撃てるの~? ほれほれ」

「いだだだだ!」


て、テイルドールお姉様もリトさんに遊ばれてる…


「テイルドールが研究してた魔法は自分の魔力ありきだったからね。

 殆どが莫大な魔力を消費する魔法なのよね。

 だから、今の人相応程度の魔力じゃ扱える魔法が限り無く少ない。

 エビルニア見たいに少ない魔力で頑張ろうと研究をしてないのが

 一気に裏目に出ちゃったと言えるわ」

「本当、あなた達は才能ありきでやって来たって分かるわね。

 エルちゃんとかブレイズはそんな事無いのにね」

「離しなさい!」

「クソ……何で俺がこんな奴ら何かに……」

「恩人達よ、もっと行儀よくしなさい……」

「誰が助けてくれって言ったよ!」


せ、性格は変わってないんだね…やっぱり恐い…


「ブレイズはやっぱり凄く強いんだね、どうして?」

「知れた事だろう。ブレイズは自身の能力だけで戦ってない。

 正直言うと、ブレイズの能力も分類的には弱い類いだしな」

「まぁ、そうね。戦闘向けの能力ではあるけど

 これだけで戦えるような能力では無いでしょう。

 攻撃力にも転じることが出来ない、防御だけの能力」

「だから、攻撃面を強化してきたって事なんでしょうね。

 同時により安定して戦えるように防御も鍛えてたんでしょ?

 結果、まさしく要塞と言えるほどの耐久力を得た」

「えぇ、でもエビルニア程では無いわ」

「そ、そんな事!」

「自覚を持ちなさい、今のあなたは姉妹の誰よりも強いんだから。

 もう、あなたが最弱だった時間は終わったのよ。

 今のあなたは私たちの中で精神的にも能力的にも最も強い」

「エルちゃん凄いからね!」


す、凄く恥ずかしい…だ、だけど、ブレイズお姉様にそう言われるのは

何だか嬉しかった……こんな風にまた褒めて貰えて、嬉しかった。

あぁ、よかった……やっぱり死ななくて…よかった。

今、私が幸せを噛みしめることが出来るのは、皆のお陰。


「……ありがとう、皆…私を…私達を助けてくれて」

「ん? どうしたの? いきなり。あはは! 助けるのは当然だよ!」

「そうだな、今まで私達は助けて貰って来たんだ。

 助けるのは当然だ」

「困ったときはお互い様って奴よ! それが仲間って奴よ!」

「私は殆ど力になれませんでしたけどね、努力します」

「何言ってるんですか! ミザリーさんのお陰で私達は!」

「そうだよ! 200年前の勇者が蘇ったのはミザリー姉ちゃんのお陰じゃん!」

「きっかけを与えただけです」

「そのきっかけが何よりも重要なのよ、どんな事だろうとね。

 あなたのお陰で勇者は一時的でも蘇り、私達は勝てたのよ。

 あなたは今回のMVPに近いんだから、自信持ってよ」

「…あはは、じゃあ、そう言うことにしますね。私も頑張りました」

「それで良いわ」


ミザリーさんって、結構謙遜するんだね。

ミザリーさんが居なければ、私達は勝ててないのに…

そして私も、勇者様達の思い出に囚われ続けてたかもしれない。

ミザリーさんのお陰で、私は本当の意味で…蘇れた。


「本当、あなた達は歴代勇者とその仲間の中で、最も仲が良いわね。

 これが本当の勇者の姿。魔王倒した後も手を取り合う姿。

 あなた達は今でも勇者として健在の様だしね」

「およ? そうなの?」

「そうよ、弱くなってるようには見えないからね。

 あなた達の姿に触発され、あなた達に希望を抱く人は減ってない。

 きっとあなた達に恐怖を抱く人物は少ないでしょう。


 悪人は恐怖しそうだけどね、とにかくおめでとう。

 あなた達は勇者の呪縛を自らの力で解き放った。

 あなた達こそ、真の勇者よ」

「おぉ? 何の事か分からないけど、とりあえずありがとう!

 でも、私だけじゃないよ! 皆もそうだし

 そして何より、200年前の勇者、ガルム兄ちゃんのお陰だから!」


勇者の悲惨な運命…それをリズちゃんと勇者様は書き換えたんだ。

本人は全く自覚してないだろうけど、リズちゃんは

色々な人を助けてきて、そして勇者になった。

勇者様と同じ形で、リズちゃんは勇者になった。


魔王を倒すための道具としての勇者じゃ無い。

世界を救った英雄としての勇者になったんだ。

勇者の呪縛はこれで終わった。


「それに、まだ終わってないよ! 世界を救ったついでに!

 魔物と人の手を取り合わせる! 必ず成し遂げてみせるよ!」

「そうね、私も協力するわ、テイルドール、ミルレールも手伝いなさい」

「な、なんで俺達がそんな事をしねぇと!」

「まぁ分かるわよ? あなた達は散々怨みを買ってきたからね。

 貧弱な今じゃ殺されるかも知れないし、恐いんでしょうけど。

 大丈夫よ、私も付いていってあげるから」

「な! 何言ってるんだよブレイズお姉様! 恐いだと!?」

「流石にそれは聞き捨てならないわよ! ブレイズお姉様!」

「……自覚しなさいよ、あなた達は今、相当弱いわよ?」

「はぁ! っざけんな!」

「はいはい、暴れないでー」

「うぎぎ! こ、この! 離せぇ!」

「この雌ゴリラ! 汚らしい手で触れないで!」

「あらあら~、ゴリラに勝てる人間は殆ど居ないのよ-?

 まぁ、私は圧倒しちゃうけど。つまり私はゴリラ以上だから」

「いだぁあ! 腕が折れる! 強く握るなぁ!」

「止めなさい! 私の腕は細いのよ!」

「私の腕も細いわよ? ほれ」

「ぎゃぁあぁ!」


……あ、あの2人がリトさんに遊ばれてる! 凄く遊ばれてる!

リトさんが凄く嬉しそうに笑ってる!


「……まぁ、お灸を据えてるって事で良いかしら。

 全くあの2人は…はぁ、プライドだけは無駄に高いんだから。

 でもまぁ、リトだっけ? あまり私の妹を虐めないで頂戴。

 まぁ、腕を折るくらいなら良いけど」

「良いの!? 何!? 腕を折るってそんな軽い事なの!?」

「その2人は散々エビルニアの腕をもいだり折ったり

 そもそも何度も殺してるから、自業自得なのよ」

「えぇ!? そ、そうなのエルちゃん!?」

「あ、う、うん…あはは、何度か死んでるよ。

 さ、流石に木っ端微塵になったことは無いけどね…」

「恐い事を当たり前の様に言わないでよ!

 し、しかしこの2人、本当にろくでもないわね。

 マジにこのまま腕の骨を折ってやろうかしら」

「や、やってみやがれ! やれるもんならなぁ!」

「……ほい」

「いだだだだ! 止めろやぁ!」

「……はぁ、あれね…本当あなた達、マジに弱くなったわね」


かなりからかうような笑みを浮かべた後、リトさんが2人の腕を放した。


「この野郎!」

「っと、野郎じゃ無いわよ? 女の子だから」

「ぐふぁ!」

「……本当、もう止めてよね」


あ、遊ばれてる…最初から最後まであの2人はリトさんに遊ばれてる!


「……はぁ、まぁろくでもない妹達で申し訳無いわね。

 ちゃんと教育するから、そこまでにしてあげて頂戴」

「な、何をブレイズお姉様! 止めないで!」

「落ち着きなさいよ」

「あだ!」


て、テイルドールお姉様があっさりと意識を奪われた。


「騒がせちゃったわね、また来るわ。安静にしてなさいよ」

「あ、うん」

「それと、レイラードは少しの間、動けないわ。

 動けるようになったら、もう一度来るから」

「う、うん」


そう言い残して、ブレイズお姉様は部屋から出ていった。

……あはは、何だか凄く…楽しいかもね。

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