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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
最終章、勇者達の意志と遺志
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2人の勇者

レイラードの攻撃は止まる気配が無かった。

激しい攻撃…だけど、魔法は飛んでこない。

それは、私には魔法の効果が無いって分かってるから?

それとも、何か別の理由? 暴走してて魔法を使えない?


「邪魔なんだよ! 勇者! エビルニアお姉様の隣に立つな!」

「うぅ! わ、私は退かないんだから!」


リズちゃんとレイラードが激しい戦闘をしている。

リズちゃんは私の強化魔法で最大限の力を出し戦ってる。

それなのに、レイラードはあの状態のリズちゃんと互角以上。

やっぱり、お父様の能力を吸収したのは凄くでかいんだ。


「ふん!」

「邪魔だ!」


リズちゃんへの援護として、ミリアさんの矢が飛んでくる。

レイラードは即座に後方に撤退して、攻撃を大きく避けた。

最初、私が仕掛けた不意打ちを警戒してるんだ。


「距離が開けば、一気に仕掛けられるわよ!」


レイラードが大きく後退すると同時にリトさんが距離を詰め

大きくなぎ払う様に斧を振るった。


「そんな貧相な斧で! なん!」


最初、使ってた斧であればレイラードは防げたんだと思う。

だけど、今回リトさんが取り出した斧は

ジーラスの鱗さえ斬り裂いた、ロッキード王国産の斧。

レイラードはその切れ味を止めきれなかった。


「でも、隙だらけ!」

「私は一撃特化だから、攻撃の直後、隙が出来るのは分かってるわ」

「そこだよ!」

「うぁ!」


大振りの攻撃によって生じた大きな隙だけど

即座にリズちゃんが間合いを詰めて、その隙を無くし

同時に攻撃しようと動いてたレイラードの隙を突いた。


不意に飛びかかってきたリズちゃんに動揺して反応が遅れ

僅かに攻撃が擦り、後方に大きく退いた。

だけど、そこには既に私達の仕掛けた罠が置いてあった。


「そこ!」

「きゃう!」


私とミザリーさんが同時に仕掛けた罠を起動させる。

一斉に周囲から伸びたマジックチェーンがレイラードを拘束した。

今まで、私とミザリーさんが動かなかったのはこれが狙いだった。


「こ、こんなの! 何で! 何で何で何で私がこんなに苦戦するの!

 お、お父様の能力を奪ったのに! レクイエムの能力を奪ったのに!

 こんなにも! こんなにも気分が良いはずなのに! 苦戦するはずが無い!


 苦戦するはずが無いのに! 苦戦するべきじゃ無いのに!

 私は最高の状態なの! 最高の状態なのに、なのにどうして!?

 どうして消耗してるはずの勇者達とエビルニアお姉様に追い込まれて…」

「そんなの、私達が1人じゃ無いからだよ!

 そして、揺るがない目的がある! 絶対に救ってみせる!

 あなたもエルちゃんも魔王の娘達も、全部助けるって決めたんだ!」


拘束されているレイラードに向って、リズちゃんが走り出す。

そう、私達の目的はこれだった。レイラードを拘束したのも

この瞬間のために、リズちゃんが見出した可能性に賭けるために!


「私の魔力を流し込んで、魔王を通して娘達、全部に送れば!」

「邪魔しないで! 馬鹿な事考えないで! 勇者ぁ!」

「不味い! リズちゃん!」


リズちゃんが接近して、手を伸ばした瞬間にレイラードの

右腕の拘束が砕かれ、リズちゃんにその手が伸びる。

不味いよ! リズちゃんは反応出来ない!


「下がりなさい!」

「きゃぅ!」


ブレイズお姉様がリズちゃんを引き離し、

代わりにレイラードの攻撃を受けた。


「邪魔しないで!」

「うぐ!」


やっぱりレイラードの攻撃力は今はとんでもない事になってる!

ブレイズお姉様が受けても、大きく怯んでしまうほどに!


「ま、参ったわね…ここまでとは」

「邪魔なんだよ!」


同時に、レイラードを拘束していた鎖が全て砕かれた。

や、やっぱり今のレイラードは…あまりにも驚異的!


「あ、あと少しだったのに…だけどまだ、私は諦めない!」


リズちゃんが一気に駆け出した! 急いでカバーしないと!

リズちゃんを守るように、防御魔法を展開して!


「無駄なの!」


だ、駄目だ! やっぱり今のレイラードには効果が薄い!

私の防御魔法がまるで紙のように簡単に破られた!


「うわぁ!」

「リズちゃん!」


リズちゃんが辛うじて攻撃に反応して防いだけど

そのせいで、リズちゃんの剣は大きく弾き飛ばされ

扉の近くに突き刺さった。きょ、距離がかなり離れてる!


「うぅ!」


急いでリズちゃんは後方に退き、渡された勇者の短刀を抜きだした。

決定的なチャンスを取り逃したのは、あまりにも大きい!


「マズったわね、順調に行ってたけど、一瞬で崩された」

「これがレイラード……これが、魔王の力」

「無駄な抵抗なの…全部!」

「リズちゃん!」

「無駄なの!」

「くぅ!」


リトさんの斧が砕かれた! ジーラスの鱗を断ち切れるほどの斧が!

このままだと不味い、追い込まれてる…どうすれば打破できるの!?


「エビルニアお姉様ぁ!」

「クソ!」

「邪魔なのよ!」


レイラードが私の方に飛びかかろうとするけれど

レイラードを止める為にミリアさんの矢が飛んできた。

だけど、今はほぼ不死身のレイラードを止めることは出来ない!


「捕まえた!」

「うぁ…くぅ…」

「エルちゃん!」

「アハ! このままレクイエムの能力で魂を引きずり出して!

 そして、エビルニアお姉様の本来の体に戻して! 取り返す!」

「あ、ぅぁ…」

「この! エルから手を離せ!」

「無駄!」

「きゃぅ!」


れ、レイラードからかなりの衝撃波が放たれた。

同時に皆は吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。

こ、このままだと…わ、私の魂が……


「アハ、アハハ! アハハハハ! 全部無駄だったね!

 勇者も何もかも全部無駄なの! 私の勝ち!

 エビルニアお姉様を! 私は取り戻せる!

 アハ! アハハ! アハハハハ!」

「あぁ……い、しき…が…」


折角ここまで来たのに…私は…やっぱり何も出来なくて…

結局、勇者様の遺志を継ぐことも出来ずに…仲間も皆…


「私は……やっぱり、何も出来なかった…

 ごめんなさい……勇者…様……」

「何も出来ないなんてあるかよ、諦めんな!」

「え?」


何処からか声が聞え、目をゆっくりと開けてみた。


「……何? これ…」


レイラードの力がゆっくりと抜けて、私は地上に落ちた。

そして気付いたこと……レイラードのお腹にリズちゃんの剣が…?

で、でも、り、リズちゃんはリズちゃんはさっき吹き飛ばされてたし!


「そらよ!」

「きゃぅ!」


レイラードが吹き飛ばされ、その背後に立ってたのはリズちゃんじゃ無い。

今まで見たことが無い顔…いや、何度も見てきたけど

この姿になってからは、殆どその顔を見て無い…

そこに立ってたのは……立ってたのは……他でもない、私だった。

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