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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
最終章、勇者達の意志と遺志
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狂気に堕ちた妹

レイラードは暴走してしまってる。

だから、どうしても助け出したい。

私のせいで、あんな風になってしまった。

だから、助け出さないと。暴走した妹を。

お姉ちゃんとして…助けないと。


「アハハ! エビルニアお姉様ぁ!」


レイラードが一瞬の間に、私の近くに!

やっぱり早い! 凄く早い! 今のレイラードは

レクイエムの能力も持ってるみたいだし、捕まると不味い!


「レイラード、落ち着きなさい」

「ウグァ!」


だけど、即座にブレイズお姉様が私の前に立ち

レイラードの攻撃を自分の体で受け止めた。

同時に、レイラードの腕が吹き飛んだように見えた。


「何…」

「邪魔しないでよ、ブレイズお姉様」


だけど、一瞬の間にレイラードの腕が生えてくる。

後ろに飛んでいったレイラードの腕は消滅してる。

あの一瞬で、吹き飛ばされた腕を再生させた……

……まさか、ブレイズお姉様と同じ


「いいや、姉として私はあなたを止めないと行けないわ」

「本当に邪魔だよ!」

「うぐ!」


ブレイズお姉様の盾にレイラードの攻撃が当る。

同時に、ブレイズお姉様の腕まで吹き飛んだ…

盾ごと…そんなとんでもない攻撃力を今のレイラードは持ってる!


「全く、姉は労りなさいよ」


だけど、ブレイズお姉様も当然の様に腕を再生させる。

この2人、こう見てみると凄まじく驚異的…


「こ、こりゃ相当不味いわね……ブレイズも容易に退けるとか」

「不味いのは分かってる、でも止まらないんだから!」

「邪魔なんだよ! このクソ雑魚が!」

「退かないよ! 私は!」


レイラードの攻撃をリズちゃんはギリギリで捌いた。

私はすぐにリズちゃんに強化魔法を掛けて

同時にリズちゃんがレイラードに強烈な蹴りを叩き込み

一気に距離を引き離した。


「チィ! 何でこんな奴に!」

「流石勇者コンビね。私も負けてられないわ!」


距離を引き離したレイラードに向けてリトさんの斧が飛んでいく。


「はん! 無駄な鉄塊だよ!」


だけど、飛んで来た斧をレイラードは肘と膝で挟み、砕いた。

一瞬だった、レイラードのそんな一瞬の行動だけで斧が木っ端微塵になった。

とんでもない攻撃力だったのが分かる。だけど、隙が大きい。


「ふん、これでどうだ!」


即座にミリアさんがレイラードに向けて矢を放つ。

大きな隙があったし、狙い、放つには十分な隙だった。

だけど、それは相手が普通の相手であった場合。

今のレイラードはお父様の力を奪い、暴走してる状態。


「無駄」


特に表情を変えることなく、レイラードが矢を避けた。

殆ど動くことも無く、最小限の動きで避ける。

凄い反射神経…だけど、それ位は分かってるよ。


「んな!」


ミリアさんが放った矢からマジックチェーンが伸びて

レイラードを拘束し、更に距離を取ることに成功した。

例えどれだけ能力が高くても、不意を突かれたら動かされるよね。


「エビルニアお姉様だよね? アハハ! やっぱり凄いよ!」


やっぱり簡単に砕かれた…私が使った不意を突いた魔法。

そんな無茶な運用をすれば、精度が落ちるのは当然だからね。

マジックチェーンの耐久性が落るのは当然だった。


「だけど、距離を取っても無駄なんだよね!」

「えぇ、そうでしょうね。だから、私が居るのよ」


一気に接近しようとしてきたレイラードをブレイズお姉様が受け止める。

その瞬間、周囲の空気が激しく振動したのが分かった。

それだけ、あの2人の衝突は大きな衝突だった!


「何で! 何で何で! 何で邪魔するのさ! ブレイズお姉様!」

「レイラード……目を覚ましなさい……む、無理矢理心を奪っても…」

「邪魔なんだよ!」

「うっぐぅう!」


ブレイズお姉様が押されてる! レイラードの強化はブレイズお姉様以上!

だけど、何か考えてる……魔法陣…私達に向けて魔法陣を…組んで……

あの魔法陣……見覚えがある、リズちゃんに教えた…まさか!


「エビルニア!」

「……そう言う! 分かった! リセット!」

「何、いっぎぃい!」


リセットの効果があった! ブレイズお姉様がレイラードを押し返した!


「そこ!」

「いぐぁ!」


一気にレイラードを引き離し、一瞬でレイラードのお腹に槍を突き刺す。

レイラードはグッタリとして


「ま、まさか…殺して」

「にひ! やっぱり強いね! でも!」

「なん!」


一瞬だけグッタリとした後、即座に満面の笑みでレイラードは顔を上げ

槍をへし折り、槍を逆に利用して

即座にブレイズお姉様を弾き飛ばした!

ブレイズお姉様が反応出来ないなんて!


「アッハッハ! キャハハ! 驚いた! やっぱり凄いよ!

 やっぱり凄いよ! ブレイズお姉様! エビルニアお姉様!

 だけどね、だけどだけど! 無駄なんだよ! 無駄なんだよね!

 だって、今の私は最高の気分! 最高の気分なんだよ!

 何度私の強化状態を打ち消そうと! 今の私は止まらない!」

「な、何があったの!? 何でリセット!? 効果が無い様に見えるし!」

「れ、レイラードが強くなってたのは……せ、成長じゃ無くて…

 自身の能力を上乗せしてた状態……り、リズちゃんに掛けてる

 強化魔法に近い…特性だったんだよ……だから、打ち消せた…筈なの」

「えぇ……レイラードの特性は…能力強化であり…せ、成長じゃ無い。

 私達は……ほぼ成長は無い…人の特性を持つエビルニアが良い例。

 エビルニアが成長出来ないのに、レイラードが成長出来るはずはない…」

「そうだよ? 私は成長してるわけじゃ無いんだよ?

 欲を満たす度に自分を無意識に強化してるだけ。

 だから、弱点がリセットって言う魔法…みたいだね?


 でもね、今の私は強化を消されようとも即座に強化できるの~

 だって、今は最高の気分だから! 最高の気分なんだから!

 キャハハハハ! 今! 私凄く嬉しいから!」


ブレイズお姉様が言ってた……普段の状態であれば圧倒出来ると。

その理由がこれだったんだろうね。レイラードの能力は

自身を強化する魔法であり、それを打ち消すことが出来れば

レイラードを圧倒出来る…でも、今のレイラードは止まらない。

お父様の能力を奪って、更に色々な能力を手にしてる状態…


「嫌な予感はしてた……私1人じゃ止められないって予感。

 だけど、エビルニアのリセットなら…効果があると思ったけど。

 私の魔法や魔法の精度だとか、そんなの関係無く…

 今のレイラードは危険だと言う事ね……無尽蔵に強くなれるんだから」

「そう! お父様の能力や魔力だとか、そう言うのを奪ったからかな!?

 それとも、元々私とエビルニアお姉様が一緒に居たら

 これだけ強かったのかな!? どっちでもいいや! どっちでも良い!


 今は私、この力で全部私の好きにするんだから! 殺す! あのトカゲを!

 あのクソババアを! 雑魚のくせにエビルニアお姉様を貶したカス共を!

 キャハハ! 何度も何度も何度も何度も殺してやる!」


レイラードの目から、ドンドンと光が消えていく。

ドンドンと狂気に堕ちていく…止めないと、ここで止めないと!

ここで止めないと、れ、レイラードは……もう戻って来られなくなる!


「そんなの間違ってるよ! 相手を痛めつけようとするなんて!」

「お前に何が分かる! 何も知らない勇者に何が分かる!

 何百年も! 何百年も我慢したの! 我慢したんだから!

 エビルニアお姉様が酷い目に遭ってるのを何度も見て!

 ぶちのめしてやろうとする度にエビルニアお姉様に止められてた!


 エビルニアお姉様は優しすぎる……酷い目に遭ってるのに

 その度に相手を許そうとして……大好きだった、とても大好きだった。

 必死に…必死にいつも頑張ってる姿に私は憧れてたんだ……

 大変そうだけど、私の前では必死に笑顔を作ってくれて…

 美味しい料理を毎日作ってくれて……お部屋の掃除もしてくれて。

 

 私達のお世話をした後は、頑張って勉強して…強くなろうとしてて。

 私に…私に誇れるお姉ちゃんになるからって…嬉しかった……

 あのババアとトカゲは無視ばかりで怯えて、なのに偉そうだった。

 だけど、エビルニアお姉様だけは、わ、私とちゃんとお話ししてくれて。

 い、一緒に色々とやったり、勉強したり…ご飯を作ったり。


 楽しかった、楽しかったのに……楽しかったのに!

 あの、あのクソトカゲが! あのクソババアが!

 そして、あのクソ親父が! 私から大事なお姉ちゃんを奪った!


 何もしてないようなカス共が! 必死に頑張ってるお姉様を殺した!

 だから、許さない! 許せない! 殺す! 何度も何度も殺す!

 もう2度と蘇りたくないと感じる程に殺す! 殺す殺す殺す殺す!

 殺す! ぶち殺してやる! 何百回何千回と殺す!」


レイラードの狂気に染まったような…言葉を何度も叫んだ。

だけど…レイラードの目から、涙が流れているのが分かった。


「…レイラード、辛いのは分かるわ。私も何も出来なかった。

 出来る筈なのにしなかった。怨まれても文句は言わない。

 だけど、私は長女として、あの子達を守らなければならないわ。


 そして、あなたも救わないと駄目だと…そう思ってる。

 だけど同時に、私達は死ぬべきだとも考えてたわ。

 エビルニアにあれほどの仕打ちをしてきた…殺されて当然よ。

 あの子の選択なら……一緒に消える覚悟だってある」

「じゃあ、なんで私の邪魔をするの?」

「知れた事よ…あなたを守る為」


ブレイズお姉様……本当にブレイズお姉様は…私の憧れだよ…


「アハハ! 死ぬ覚悟はあると言ったり、守ると言ったり!

 ブレイズお姉様も決め切れてないんでしょ?

 だから、エビルニアお姉様に全部の選択を投げてる!

 何もしてないじゃない! 偉そうな面をして、何もしてない!」

「……否定出来ないわね。だけど、あなたを止める事は変えるつもりはない。

 このままでは、エビルニアがどちらを選んだとしても報われないわ。

 あなたをそのまま狂わせたままでは…終わらせない」

「ブレイズお姉様…私の選択はもう決ってる。皆で助かる事が私の選択。

 もう、お父様は死んじゃってるけど…大事な家族は救いたい。

 だって、私も……そして、私の大事な仲間達だって、そう願ってる!」

「そうだよ! 皆助ける! 助ける方法だって見出したんだ!

 全部助けてみせるよ! だから、あなたを止めてみせる!」

「部外者が邪魔しないでよ!」

「部外者じゃ無い! 私はエルちゃんの親友!

 辛い時は一緒に辛い思いをして、楽しいときは一緒に楽しむ!

 悩んだときは一緒に悩むし、悲しいときは一緒に泣くよ!

 それが、親友だから! 大事な大事な親友だから!」


リズちゃんの言葉はいつだって本気だと分かった。

とても辛い時や大変な時、リズちゃんは本気で言葉を紡ぐ。

裏も表も無い、真剣な言葉……だからこそ、言葉に重みがある。

リズちゃんは思ってないことを言う子じゃ無い……

だって、まだまだ幼い子供だから。


だからこそ、リズちゃんの言葉を聞いた後…私達は力を貰えた。

心の底から放たれた、清々しい言葉に背を押されるから。


「心の底から出る、嘘偽りの無い言葉というのは清々しいわね。

 言うのも聞くのも、そう言う言葉は心が震える。

 大きくなっちゃった私には特にね。だって、言えないから」

「だな、言えないが聞く事は出来る。そんな言葉を聞いたとき

 何故か力があふれ出る。心が震えて、その言葉に応えようと思う」

「はい、微力ながら応えて見せますよ、私もね」

「……ふぅ、これが仲間って奴ね…これが人間の与える力。

 良いわね、気分が良い……だから、私も応えて見せましょう。

 エビルニアの姉として、応えてあげましょう…その思いに」

「これからも一緒に…笑っていきたい。だから、私は負けない!

 レイラード! 絶対に助け出すから! 一緒に笑ってあげるから!」


絶対に…これからも絶対に…負けない、負ける訳にはいかないよ!

絶対にレイラードを助け出して、お姉様達を救ってみせる!

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