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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
最終章、勇者達の意志と遺志
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狂気の矛先

「レクイエムを問いただして、色々と聞いて気付いたの。

 エビルニアお姉様をどうすれば取り戻せるか、気付いたの!

 お父様を殺せば、いや、お父様を取り込んじゃえば良いんだよね!


 そうすれば、エビルニアお姉様は私の物になる! 私の物になる!

 キャハハ! エビルニアお姉様が私の、私だけの、私だけの物に!

 やっと救えるの、やっと喜んで貰えるの! やっと一緒に笑えるの!!

 

 エビルニアお姉様はいつも大変そうで、一緒に遊んで貰えなくて!

 あの屑共に散々コケにされて…今度はあいつらをコケにしてやるの!

 ブレイズお姉様はまだ良いけど、あのクソトカゲとババアは嫌だ!


 そして、お前も大っ嫌いだよ! クソ親父!

 エビルニアお姉様を馬鹿にしやがって!

 貶しやがって! コケにしやがって!


 だから、お父様をぶっ殺して魂奪って、私の物にする!

 そうして、あのトカゲとババアを貶めてやるんだ!

 ついでにあんたも貶したいけど、まぁ死んじゃうしね!」


す、凄まじい狂気だった……見ているだけで震えてしまいそうな程…

れ、レイラードは今、一切恐怖を抱いてないんだ…全く抱いてない。

だから、お父様が追い込まれてる……ブレイズお姉様が言ってた。


お父様が私達を押さえ込む方法は恐怖だって。

私達の恐怖を自在に操って私達を押さえ込んでるんだって。

だけど、レイラードには一切の恐怖が無いんだ……狂気しか無い。


お父様はまだ傷が完全に癒えてないのもあって、レイラードに勝てない。

レイラードは私たちの中で唯一無限に成長するから……

だけど、本当に……成長……なのかな?


「ク、何故だ…何故、反旗を……」

「恐怖だっけー? そんなの、今の私には全く無い。

 だって、恐怖だとか、そんなのを感じる要素が無いんだから。

 死ぬのは恐くないし、もう失って恐い物だって無い。

 もう失ったんだから、だから私は取り戻すためにここに来た。


 恐怖だなんてそんな上品な物は、今の私には無いんだよ?

 キャハハ! でも、滑稽だし間抜けだし、

 馬鹿だし、アホだし腑抜けだし! お父様って本当に馬鹿だよね!

 そしてかっこ悪いよね! キャハハ! だって、私に手も足も出ない!

 それに、200年前、馬鹿にしてたエビルニアお姉様に殺され掛けて。


 何が魔王だよ、何が王様だよ、名前負けも良いところだよね?

 自分の能力が効かないと恐怖して、怯えちゃうような小物が。

 よく魔王なんかになれたよね? 元々、器じゃ無かったのかなぁ?

 だから、代わりに私が魔王になってあげるよ。あなたの娘が!」

「レイラード! 待って!」


私の声はレイラードには届かなかった。

レイラードは目にも止まらない速さで一瞬でお父様に近付き

そのままお父様の心臓を貫き、返り血を浴びながら笑っていた。


「ば……かな…」

「キャハハ! 奪っちゃった! キャハハ! 奪っちゃったー!

 これで私が魔王! これで、あのトカゲとババアをぶっ殺せる!

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も! 何度も殺して!


 そして、一生後悔させてやる。ずっと後悔させてやる!

 エビルニアお姉様の足を舐めさせて、エビルニアお姉様の犬にする!」

「え、エルちゃん……あの子…どうしてあんなに楽しそうに…」

「……レイラード、初めて会ったときから分かっては居たが。

 ま、まさか…ここまで狂気染みた少女だったとは…」


私達は何も出来なかった。あまりにも急な状況で動けなかった。

あの狂気に染まった笑顔や笑い声を前に…あ、足が竦んでた。

あそこまで……レイラードが追い込まれてたなんて…


「キャハハ! レクイエムの能力最高だよ! キャハハ!」

「……え、エルちゃん、あ、あの子の能力って…何なの…?」

「……よ、欲望を満たせば満たすほど成長する…能力です」

「人ならざる人の形と魔王の間に生まれたって…

 人ならざる人の形って…何? 人間のなれの果てって?」

「長い時間、魔物や魔王の魔力に当てられてた人間達の事よ」

「ぶ、ブレイズお姉様」

「……誤算だったわ、まさか…こんな事になるとは…」


普段表情を変えることがないブレイズお姉様だけど

今、私達の前に姿を見せてるブレイズお姉様は動揺が表情に出てた。

レイラードが暴走したのはブレイズお姉様でも予想が出来てなかったんだ。


「恐らくだけど、暴走した影響か人が持つ強奪の特性が出てる。

 やっぱり人間って言うのは予想が出来ないわね」

「アハ! エビルニアお姉様だ! エビルニアお姉様!

 エビルニアお姉様! やったよ、私やったんだよ!

 お父様を殺してやった! 私が新しい魔王! 魔王なの!

 

 これでもう、エビルニアお姉様を虐める奴らは消えるんだよ!

 あのクソトカゲとババアを痛めつけに行こうよ! エビルニアお姉様!

 そんな小汚い連中なんて捨てて、私と一緒に! 私と一緒に!」

「れ、レイラード……ど、どうしちゃったの…そ、そんな子じゃ」

「エビルニアお姉様が居なくなっちゃったから、私は悪い子になったの。

 でも大丈夫! エビルニアお姉様が一緒にいてくれたら

 私はとてもとても良い子になるから!


 そんな体なんて捨てて、元の体に戻ろうよ!

 あるよ? ここにあるよ!?

 ここにエビルニアお姉様の体があるの! 綺麗でしょ?

 アハハ! ずっとお化粧してあげてたんだよ!

 綺麗に綺麗に! アハハ!」


れ、レイラードの目から光が完全に消えちゃってる……

その何処までも狂気的な笑顔に…私は恐怖を感じた。


「エビルニア、私はもうあなた達に手を貸さないと言ったけど

 状況が変わってしまったわ。だから、私に手を貸して欲しい」

「ブレイズお姉様……」

「レイラードを止めるわ……私1人じゃ、正直今のレイラードは不味い。

 今までのレイラードであれば完封は出来たけど、状況が変わった」

「今までは勝てたの?」

「えぇ、弱点を知ってたからね。だけど、今は効果は薄いでしょう」

「……どうする? リズ」

「そんなの、助けるに決ってる。だって、可哀想だもん! あの子!

 辛そうだもん! だから、助けるんだ! 私はあの子も助けてみせる!」

「……はぁ、魔王相手にするよりヤバそうね…これ」

「でも、や、やるしかありませんよ……が、頑張りましょう」

「うん、レイラード……助けるよ、絶対に!」

「アハハ! エビルニアお姉様は元に戻らないんだね?

 大丈夫! 私がエスコートしてあげる! その魂を!

 だから、エビルニアお姉様は安心して私に身を委ねて!」


止めないと、レイラードを……助けないと、大事な妹を。

絶対に救ってみせるよ、レイラード……絶対に!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] レイラードは愛情が足りなかった思春期のようですね。反抗期? 赤子は、愛情を餌に育つ。愛情がないと、自ら命を絶つというのを最近になって知りました。 ああ、でも、レイラードとは戦わなくても…
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