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裏切り少女のやり直し~200年後の再挑戦  作者: オリオン
最終章、勇者達の意志と遺志
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方法を考えて

ブレイズお姉様を乗り越えて、私達は先に進む。

その先にあるのがどんな結末なのか…

それは、私には分からない。お父様を倒した後

私はどうなるのか…それも分からない。


「……」


ただ無言のまま、足音だけがこだまする。

誰も喋らない。真剣な表情をしているリズちゃんの

邪魔をしないために、皆、何も喋らなかった。


きっと、リズちゃんだけじゃ無い、皆何かを考えてる。

その何かが何なのか…それは、分かってしまってる。

私だ、私達をどうすれば救えるか。それを考えてる。


「……」


リズちゃんは目を瞑り、必死に何かを考えてる。

リトさんはおでこを手で押さえ、必死に何かを絞りだそうとしてる。

ミリアさんは腕を組んで、そのまま無言で歩く。

ミザリーさんは顎に手を置き、周囲をきょろきょろと見渡す。

皆、考えるときのポーズも仕草も全く違うね。


「魂、魔力、特性……人が誰かに魔力を渡せることは確定だよ。

 それは、サモナーの存在から確信出来る」

「分かってるけど……それでどうしろってのよ」

「それを考えてるわけだが、いまいち出て来ないな」

「……ふーむ、うーん…何か意味があるんでしょうけど…」


ミザリーさんが周囲を見渡した後、何かに気付いた動作を見せた。


「エルさん、ブレイズさんのお部屋は何処ですか?」

「え? ブレイズお姉様の部屋はちょっと奥に行った場所にあります。

 ブレイズお姉様は別格の扱いでしたから、お父様の部屋と同じ階層です

 お父様の護衛も兼ねてますしね」

「なら、そこに寄りましょう。何か情報があるかも知れません」

「わ、分かりました」


私はミザリーさんに言われたとおり、ブレイズお姉様の部屋に案内した。

そこには沢山の本や資料が綺麗に整理されていた。

だけど、結構散らばってきてるね……ブレイズお姉様らしくないなぁ。


「綺麗だけど、そこそこ荒れてるわね」

「ブレイズお姉様らしくありません」


散らばってる資料を拾い上げ、少しだけ目を通した。

そこには魂に関する資料だった。

疑似魂とか、魂に関する資料。

どうすれば人に魂を移せるかも書いてある。


「……」


散らばってる資料はそう言った、魂に関する資料ばかりだった。

これが何を意味するかだなんて、考える必要も無いくらい簡単だ。

私を……私の体をどうすれば動かせるようになるか…だね。


レイラードの為に、必死に私を取り戻そうとしてたんだと思う。

色々な資料を漁って、方々巡り、集め、そして目を通し考えた。

その結果辿り着いたのが、疑似魂と蘇りし死者の力…


「……魂に関する資料ばかりね、疑似魂とかもあるし」

「必死だったんでしょうね、ずっと考えてたんでしょう」


もしかして、ブレイズお姉様はこの資料を漁ってるうちに

何処かで私達とお父様の関係に気が付いたのかも知れない。


「……魔力は魂に直結してる…って、書いてある」

「え? 何処に?」

「これだよ、何か手書きって感じがするけど…」


ブレイズお姉様の字だった…ブレイズお姉様が書いた字。

レクイエム、蘇りし死者の情報も書いてあるし…


「……そう言えば、レクイエムは魔力の塊…ですよね。

 だけど、意識がある。生命の魂が変化した存在」

「つまり、魂と魔力は影響していると…そう言う事ね」

「……私、分かったかも」

「え?」


リズちゃんがしばらく目を閉じた後、小さく呟いた。

いつも通りの嬉しそうな表情では無い、真剣な表情。

まだ断定できてないけど、ほぼ想定できてるって表情。


「エルちゃん……私は疑問なの、どうしてエルちゃんが…

 エビルニア時代に死んで、人の姿になったのか。

 魔王が生きてる限り、あなた達は死ななかった

 魔王が死ねば消えるんだよね? なのに、エルちゃんは

 魔王が生きているはずなのに、死んで、人の姿になった」

「そ、そうだね…私はエビルニアとして蘇らなかった。

 何度か死んで、蘇ったりするけど、その時は意識が消えた後に

 次に目を覚ませば、自分の体が完全に治ってたよ」

「だけど、最後…魔王を倒そうとした後は死んでしまった。

 体は残ってるはずなのに、何故か別の体に魂が移動した。

 体が消えてたらどうなるかは分からないけど」

「そ、そうだね」


私は何故かその時は死んで、蘇らなかった。

ただ女神様に見出されて、人として新たな生を得た。


「死んだ後、体は残ってたんでしょ?」

「うん、そう言ってたよ。レイラードがずっと」

「なら、体が消えているから別の体に変わったわけじゃ無い。

 多分、何処かで魂の呪縛みたいなのが解かれたんだと思う。

 それがどのタイミングだったのか」

「だけど、私は今の状態でもお父様を倒せば意思が消えるって言われてる」

「……エルちゃんが魔王に致命傷を与えた時……エルちゃんは勇者を」

「……うん、勇者様と仲間達を殺して…その魔力を奪ってた」

「それなんじゃ無いかな、魔力が魂に直結するなら!」

「ま、まさか…そんなはず」

「エルちゃんは勇者を倒して魔力を奪ってた」

「でも私は魔力を全部放出してたよ」

「まだ、勇者の魔力は全部出し切れてなかったんじゃ無いかな!?

 出せたのは魔王の娘としての魔力だけで、勇者の魔力は出し切れてなかった!」

「だ、だけど…私のドレインフィールドなら、色々な魔力を奪える。

 そ、その理論が正しいなら…私の意思は消えないんじゃ…」

「勇者の魔力はきっと魔王の娘としての魔力にはならなかったんだよ!

 だって、勇者と魔王は正反対の存在! 魔王が絶望なら勇者は希望!

 だから、エルちゃんや他の娘達に勇者の魔力を与える事が出来れば!」

「消えないで……済む?」

「うん!」


勇者が希望で、魔王は絶望…魔力の性質が真逆?

だから、魔王の娘として生きてたとき、勇者様の魔力を奪った後

全部の魔力を…勇者様の魔力以外を全部放出したから

私はお父様の呪縛から解放されて、人の姿になった?

で、でも、でもそれだと、私の意思が消えるって、どう言う…


「今はきっと、魔王の娘としての能力を維持して蘇ってる。

 だから、魔王が死んだ後、エルちゃんの意思は消える。

 意思の構成はまだ魔王に縛られているから。

 そこに勇者の魔力を入れたら、魔王の魔力が消えたとしても

 エルちゃんや魔王の娘達は無事で助かるんだと思う!」

「そ、そんな荒唐無稽な話し…」

「でも、そうとしか考えられないよ!」


確かにその可能性は高いと思う。だけど、それが違ったら。

……いや、信じるんだ、私……リズちゃんはこう言うとき

誰よりも聡明なんだ…必死に何かを考えてるときは誰よりも。

だから、信じよう。私はリズちゃんを信じよう。


「……分かったよ、リズちゃん。私は信じる」

「うん!」

「でも、リズちゃん、分かってるんでしょうね?

 その可能性がもし間違いであれば、エルちゃんは消える」

「……そ、それは」

「それを知ってもなお、あなたはその可能性に賭けますか?」

「う、うん! 賭けるよ!」

「なら私からも1つ問おう。どうやってエルに勇者の魔力を与える?」

「……そ、それは」

「……人の特性には魔力を分け与える特性もあるかもと

 ブレイズお姉様は言ってました。だから、その方法なら」

「……そうだね! その方法なら!」


私達がそんな会話をしている時、壁が大きく揺れた。


「な、何!?」

「か、壁が…ちょ、ちょっと不味いんじゃ無い!?」

「まさか、お、お父様が!」

「キャハハハハ!」


甲高い笑い声が聞えたと思うと、壁が吹き飛んだ。


「キャハハ! 弱いね! 弱いね! 弱いねお父様! 弱いね!」

「……れ、レイラード……き、貴様!」


壁が吹き飛ぶと、その先にはボロボロのお父様と

楽しそうに笑っているレイラードの姿があった。

そして、扉の近くでは私の体が寝転がっていた。

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