立ちふさがる最大の壁
テイルドールお姉様を乗り越え…
そして、私達は再び前に進んだ。
「…本当に予想よりも遙かに順調に進んだわね。
今まであなた達が戦ってきた長よりも順調じゃ無いの」
「ブレイズお姉様…」
テイルドールお姉様を乗り越え、すぐにブレイズお姉様が出て来た。
「まぁ、多少は分かってた事なんだけどね…
ミルレールもテイルドールも油断が多すぎるわ。
最近あなたを評価し始めた様だけど、まだまだ甘い。
あなたが何故驚異なのか、それを理解できてないから」
「……」
「あなたが驚異である理由。それは応用力の高さ。
沢山の事が出来るわけでは無いけど
数少ない出来る事を、あなたは最大限に生かしてる。
相手を侮り、戦いを挑もうとする2人が
今の成長したあなたを倒すことが出来ない事は分かってたわ」
ブレイズお姉様が淡々と語る。
その表情からは怒りの表情は全く無く
何だか、私への愛情の様な物を感じた。
私が成長していることを喜んでいる…そんな雰囲気。
「そして、改めて分かったことがある」
「分かったこと?」
「えぇ、この先には行かせないわ」
さっきまでの表情が一変し、ブレイズお姉様が険しい表情になった。
殺意のような物は感じない。だけど、敵意は確かに感じた。
「…どうして?」
「あなたも自覚してるでしょう? あなたの仲間達は弱すぎる」
「そ、そんなこと!」
「あなた達は何をしたの? ミルレールの弱点を見抜いたの?
テイルドールを攻略する手段を見出したの?」
「うぅ…」
「ミルレールの弱点を看破し、降したのはエビルニア。
テイルドールの隙を突き、出し抜いたのもエビルニア。
あなた達はただ、エビルニアに守られてただけで何もしてない」
「……そ、それは」
「…否定できないわね」
全員の表情が沈んでしまった…そ、そんなの…
「ミルレールの時はまだ良い。弱点を見抜いた後
あなた達は上手く立ち回り、ミルレールを出し抜いた。
だけど、テイルドールの時、あなた達は何もしてないに等しい。
全てエビルニアに頼り切り、勝利しただけに過ぎない」
「そ、それは…わ、私とテイルドールお姉様の相性がよくて」
「どんな理由であれ、あなたの仲間は今回もとても弱かった。
この先に行かせない。
そして、エビルニアは私が保護するわ」
「さ、させないよ! エルちゃんは私達が守るの!」
「……守れるの? なら、守ってみなさい」
ブレイズお姉様の素早い攻撃がリズちゃんに伸びる。
リズちゃんは反応することが出来ず、首元に刃を置かれた。
「あ…あぁ…」
「血が垂れてるわね、でも安心しなさい、深くは無い」
「こ、この!」
即座にリトさんがブレイズお姉様に攻撃をする。
だけど、ブレイズお姉様はリトさんの攻撃を盾で流した。
リトさんの攻撃はブレイズお姉様には当らず、地面を砕いた。
「く!」
「……」
リトさんが攻撃を避けられて、すぐにミリアさんの矢が飛んできた。
だけど、至近距離から飛んで来た矢をブレイズお姉様は
僅かに首を傾けただけで避けた。
「これ以上はさせない! オーバーヒート!」
「ふぅ」
私が至近距離で放ったオーバーヒートはブレイズお姉様に弾かれる。
だけど、それは分かってた事だった。オーバーヒートの攻撃と同時に
ドレインフィールドを展開して、反射された魔力を全て吸収した。
一撃でブレイズお姉様を引き離すにはこれしか無かった。
「ぜ、全然…」
「これで分かったでしょう? あなた達の攻撃は私には届かない。
私の能力はエビルニアに教えられてることでしょうけど
その能力を使うまでも無く、私はあなた達を捌ける。
私に距離を取らせることが出来るのもエビルニアだけ。
あなた達の中でエビルニアだけが頭1つ抜けている。
あなた達は役立たずなの。あなた達は足を引っ張るだけ。
このままではお父様を殺す為に、エビルニアが再び
あなた達を殺し、魔力を奪った後に一撃に賭けるしかない。
エビルニアに辛い思いをさせたくは無いのよ、姉としてね」
「……く、悔しいが…この状況を見れば、その通りとしか言えないな…」
「私の攻撃も反射を使うまでも無く流された…
リズちゃんもあの攻撃に反応さえ出来なかった…
攻撃も防御も…何もかもあの2人とは全然違う…
実力が…全くの別次元…同じ魔王の娘とは思えない程に」
ブレイズお姉様は私たちの中で頭1つ以上抜けた実力がある。
ま、前に勝てたのだって、ブレイズお姉様が本気じゃ無かったから。
だけど、今のブレイズお姉様はきっと…本気で来る。
私を取り戻す為に、ほ、本気で…勝てるの…?
「これじゃあ、まるで今までの戦いが前座の様ね…」
「前座よ、私との戦いさえ前座でしか無いわ。
少なくとも私を倒せなければ、お父様は倒せない。
エビルニア、分かってると思うけど
私は正攻法以外では倒せないわ…あなた達に倒せる?」
ブレイズお姉様は表情を一切変えることなく、私達に槍を向けてる。
実力差は明白だけど、表情から私達を見下してるわけでは無いと分かる。
これがブレイズお姉様が最も強い所以…とも言える。
例え相手が自分よりも弱いと分かっていても、一切油断しない。
テイルドールお姉様はミルレールお姉様は確実に油断する。
だからこそ、付け入る隙が生まれる…
だけど、ブレイズお姉様にはそれが無い。
付け入る隙が無いから、正攻法で乗り越えるしか無い。
実力差が遙かにある、大きな壁なのに。
「ど、どれだけ…どれだけ壁が高くても…乗り越える!」
「…そう、ハッキリ言うわ。私はあなた1人で倒せる程甘くは無い。
あなたとその仲間達が死力を尽くして
ようやく越えられる壁と思いなさい。
示しなさい、私にあなた達の可能性を。
見せ付けなさい、私にあなた達の強さを。
伝えなさい、私にあなた達の思いを。
この壁に迂回路は無い。先に進むというのなら
私という壁を壊し、先に進みなさい!」
越えないと…最大の壁を乗り越えないと。
ブレイズお姉様を乗り越えて…今度こそ!




