最初の死闘
私達姉妹は各種族の特性を強化してる。
ミルレールお姉様はドラゴンの特性を。
テイルドールお姉様は魔術師の特性を。
ブレイズお姉様は擬似的な不死者の特性を。
そして、レイラードは人ならざる人の形を。
そして私は…私自身は人の特性を生かしてる。
だけど、死ぬ前は人では無かったから成長しなかった。
人以外は基本成長することが無い。
知識的な成長はあるけど、
身体的な成長や魔力的な成長は無い。
きっとミルレールお姉様もあの時から変わってない。
ミルレールお姉様の未来予知が万能なのだとすれば
何故ミルレールお姉様は私の攻撃を防げなかったのか。
何故、ユーリカが庇ったことに驚いたのか。
そう言う情報を総括すれば、ミルレールお姉様の弱点が予想出来る。
ミルレールお姉様の未来予知の弱点…恐らく、予知の時間が決ってる。
「…マジで来やがったな、驚いたぜ? テメェら」
「ミルレールお姉様」
「…おいエビルニア、よく来やがったな、えぇ? おい。
テメェ、俺に勝てると思うのか? 何度お前は俺に殺された?
何度も何度もお前は俺に痛めつけられた…何故まだ牙を剥く?」
「それは、私が諦めが悪い性格だからだよ…ミルレールお姉様」
「……チ、その姿になって最初に出会った時とは随分と目付きが違うな」
「ミルレール…必ずここで倒してやるわ! あの時の無念を晴らさせて貰う!」
「あぁ、今度こそ、私達はお前を倒すぞ」
「うん、あの時は役立たずだったけど、今は違うんだから!」
「うぐぐ…ちょっと恐ろしいですが、ここでは退けませんね!」
全員、ミルレールお姉様に向けて武器を構えた。
その姿を見たミルレールお姉様が嘲笑うように笑う。
「本当に能天気な奴らだな…勝てると思うのか?
俺に…お前らが…あの時の俺は全く本気じゃ無かった。
分かってるよな? エビルニア」
「うん、知ってるよ。全然本気じゃ無かった。だから、私は勝てた」
「じゃあ、本気の俺を倒す算段がどっかにあんのか?
不意打ちなんざ本気の俺には効果はねぇぞ…
そして、分かってるだろ? 俺はテメェの天敵だ」
「うん、知ってる。だから、勝つための可能性を考えてきた。
ミルレールお姉様、あなたの未来予知は万能じゃ無い。
見る事が出来る時間が限られてる。そうでしょ?」
「……へ、そうだな。で? それを知ったからってどうなるんだ?
お前は俺の未来予知を知らないだろ? 攻略できるならやってみろ。
200年前のように、ラッキーで倒せると思うなよ?」
ミルレールお姉様の弱点を見抜かないと、私達に勝算は薄い。
不意打ちは効果が無いし、奇襲だって意味が無い。
逃げたところで、逃走先を気取られて追撃されるだろうね。
だけど、何処かに弱点はある筈。万能な能力は無いんだ。
「なら、見付ける!」
「ふん」
ミルレールお姉様の目が光り、私の攻撃全てを避けられる。
私が魔法陣を組むと同時に目が光った訳だし
あの光った瞬間が未来予知、なら!
「うりゃ!」
「へん、ガキが」
リズちゃんに身体強化魔法を掛けて、一気に攻撃を仕掛ける。
だけど、ミルレールお姉様はリズちゃんの攻撃を避けた。
そう、避けたんだ。ミルレールお姉様なら受けそうだけど避けた。
つまり、受ける事が難しいって分かってたって事!
「そこ!」
「ふん」
ミリアさんの攻撃もどのタイミングで来るか分かってたかのように避けた。
何処にどうやって、どんな風に飛んで来るか、全て分かってる。
そして、少しして目が元に戻り、再度赤く光る。
「そら!」
「う!」
ミルレールお姉様の攻撃がリズちゃんに向ってる!
ここだ、ここで反射の魔法を組めば、可能性は!
「っと」
「うぅ!」
だけど、私が反射魔法をリズちゃんに掛けることが分かってた様で
リズちゃんへの攻撃を止め、私の方に移動する。
「不味い! エルちゃん!」
「遅いな」
リトさんの攻撃をミルレールお姉様は容易に避けてしまった。
だけど、少しだけ反応が遅かったように見えた。
「チ!」
すぐに私はテレポートでその場から移動し、ミルレールお姉様を避ける。
同時にミリアさんが私が居た場所に矢を放つ。
ミルレールお姉様はその矢を素手で掴み、へし折った。
「くぅ、攻撃が全く当らない!」
「なんで避けるんだろう…前は受けてたのに!」
「私達の攻撃が効果があるって事よ! 避けるしか無いの!
私達の今の武器は、ミルレールに十分通用する!」
「調子に乗りやがってよ…ドラゴンの素材か?」
「そうだよ!」
「…へ、200年前の勇者共よりは骨がある見てぇだな」
事実上、私達の攻撃が効果があると言う事を認めた。
だけど、ミルレールお姉様は不敵な笑みを浮かべてる。
例え私達の攻撃が効果的だとしても、当てる事が出来ないんだから。
「確かにお前達の攻撃が効果的なのは認めるぜ?
だが、俺に攻撃を当てる事は出来ねぇ。
俺の未来予知をお前らの浅知恵で超えられるわけがねぇ。
だがよ、俺が警戒してる奴が1人居る。エビルニア、テメェだ」
「……」
「一応お前の事、認めてやるよ…俺に2度も当り
その2回とも、テメェは辛うじて俺から逃れた。
2度目はテイルドールお姉様と一緒にぶつかったのによ。
本当、200年前のテメェとは全然違う。
人間の姿になった方が強いな、お前は」
「褒めてくれてありがとう」
「だから、俺はお前をぶちのめす!」
ミルレールお姉様が目を光らせ、私の方に近付く。
多分、あのタイミングに未来予知が発動してる。カウントしないと。
でも、今は急いでテレポートでその場から離れて!
「逃がすと思うか?」
「うぅ!」
ミルレールお姉様は私が何処に出てくるかを完全に把握し
一瞬の間に即座に私の方向へ距離を詰める。
「この!」
「はん!」
「うわ!」
私に近付いてきたお姉様を止める為に、リズちゃんが動くけど
既にそれも予知していたようで、背後からの不意打ちを避ける。
ミルレールお姉様が避けたことで、リズちゃんの攻撃は私の方へ。
「きゃ!」
だけど、リズちゃんの攻撃が私に当る前に
ギリギリで防御魔法が出て来てリズちゃんの攻撃を止めた。
一瞬だったけど、その一瞬で即座にテレポートで離れる。
「そらよ!」
「あぐぁ!」
「エルちゃん!」
ぜ、全部分かってた…私のテレポート先まで。
リズちゃんの不意打ち、リズちゃんの不意打ちを避けて
私へリズちゃんの攻撃が飛んで来るけど、それは防がれて
私がその後、何処に移動するか、全て分かってたんだ。
10秒程度しか無い一瞬のやり取り…その一連の動きを全て。
「どうだ? 応えたか?」
「…読めてるんでしょ…? 私は、動ける…」
「け、硬い鎧だな」
この鎧が無かったら、あの攻撃は耐えきれなかった。
だけど、鎧のお陰で助かった…それと同時に活路も見えた。
ミルレールお姉様の未来予知の隙間が…今、分かった。
まだ確信があるわけじゃ無い。だけど、かなり近いと思う。
「ミルレールお姉様…絶対に乗り越える!」
「無駄だ、エビルニア」
「くぅ…どうやって攻略すれば…未来予知…驚異的すぎる」
「わ、私…あ、あと少しでエルちゃんを…」
「まさか、私の魔法発動が遅いお陰で助かるとは思いませんでした。
でも、実際このままだと不味いですね…強すぎる」
「……何処かに活路がある筈だ、考えろ!」
少しだけ、私は少しだけ可能性を見いだせた。
だけど、これはまだ伝えるべきでは無い…
ミルレールお姉様に気付いてるってバレたら不味い!
「死ねよ、エビルニア!」
目が光った、私はすぐにテレポートでその場から移動。
当然だけど、ミルレールお姉様は即座に私の転移先に来る。
「逃げ回れると思うか!?」
「クソ! させないわよ!」
「ふん!」
「うぐ!」
急いでミルレールお姉様を止めようと走ったリトさん。
だけど、ミルレールお姉様はリトさんを攻撃して怯ませる。
すぐに私はテレポートでもう一度距離を取った。
「無駄だぁ!」
「……今だ!」
「な!」
ミルレールお姉様の再突撃のタイミングに合わせた。
ちょっとした賭けだったけど、リトさんが怯まされたときに
自分に身体強化魔法を掛けて動きを素早くした。
それと同時にミルレールお姉様の攻撃を避け
勇者の証として貰った短刀を抜き、ミルレールお姉様を突き刺した。
「ば、馬鹿な…何故…」
「え、ど、どうして攻撃が!」
「ミルレールお姉様、ミルレールお姉様が見れる未来は9秒先まで。
その後は再び未来を読もうとしないと読めないんでしょ?」
「くぁ…」
私に攻撃を当てて、吹き飛ばした後
私が立ったことにミルレールお姉様は驚いた。
ミルレールお姉様の弱点を看破するために時間をカウントしたからね。
だから分かった、目を光らせて9秒後の未来までを見ることが出来る。
だけど、9秒以降は予知が出来てない。
ミルレールお姉様が即座に次の予知を発動させたら分からないけど
9秒先しか見れないのは間違いない。それが今、証明出来た。
「9秒! 目が光って9秒が攻撃のチャンスなのね!」
「よし! 9秒だね! 流石エルちゃん!」
「く、クソ、ふ、ふざけやがって! エビルニアぁ!」
再度目が光る。ミルレールお姉様は即座に私に距離を寄せる。
すぐにテレポート、わざとテレポート先を分かりやすくする。
ミルレールお姉様が即座に私に攻撃をしようとするけど
私が次に何処に出てくるか分かってる皆がカバーしてくれた。
「チィ! 邪魔だ!」
「くぅ! でも!」
「そこだ!」
「くぅ! ガキぃ!」
ミルレールお姉様が目を光らせて9秒のタイミングで
リズちゃんがミルレールお姉様に攻撃を仕掛ける。
即座に反応して、その攻撃を防いだ。
一応、防いだとはいえ、受けた腕からは血が噴き出す。
鱗を出して防いでも、私達の攻撃を完全に無効化は出来てない!
だけど、ミルレールお姉様が即座に目を光らせた。
「うぅ! 届かなかった!」
「やっぱり不意打ちしか無いのね、9秒たった瞬間
あいつが反応出来ない不意を突いた攻撃を叩き込む!」
「くたばれ、勇者!」
「不味い! リズちゃん!」
弾き飛ばされたリズちゃんにミルレールお姉様の攻撃が。
そして、リトさんがそれを庇おうと…駄目
昔…私はこんな光景を見た、このままじゃ!
「リトさん!」
「死ね!」
「いぐ!」
リズちゃんを庇ったリトさんが激しく吹き飛ばされる。
リトさんはそのまま壁に叩き付けられた…
そ、そんな…嫌だ、そんなの…私は。
「だぁ畜生! クソ痛いじゃないの! 死ぬかと思ったわ!」
「え? り、リトさん…」
だけど、土煙の中からリトさんが起き上がった。
痛そうだし、頭から血が流れてるけど致命傷じゃ無い。
「クソ…貫けなかった…だと…」
「ふふん、弱ってるわね、エルちゃんの一撃が応えたのかしら?
それに、この鎧、やっぱりお願いしててよかったわ。
これが無かったら、多分私死んでたし」
「リトさん…よ、よかった…」
「え、エルちゃん? 何で泣いてるの?
今はそんな余裕は無いでしょ! さぁ、ミルレールを叩くわよ!」
「…は、はい!」
「ごめんね、リト姉ちゃん。お陰で助かったよ! ありがとう!」
「ふふ、じゃあ一気に行くわよ!」
「うん!」
リトさんとリズちゃんが一斉に走り出す。
ミルレールお姉様が再度目を光らせ、私達の行動を予知する。
全ての攻撃を避けるけど、一瞬の隙がある!
「そりゃ!」
「無駄だ!」
「うぅ!」
1秒の隙を突いて、リズちゃんが再度攻撃をするけど防がれた。
だけど、それでも一瞬、動きが止まったのは確かだ!
「そこ!」
「無駄だ、エルフ!」
「ふふ、不意打ち完了ね!」
「な! ぐぁ!」
ミリアさんの弓矢による攻撃に気を取られた隙に
リトさんが自分の短刀を抜き去り、ミルレールお姉様に突き刺した。
「が…は…馬鹿な…俺が…こんな奴ら…何かに…」
吐血し、そのまま地面に手を着け、息を荒くしている。
相当辛いんだ…それが分かった。
「あ、あり得ない…クソ…こ、んなの…認め…ねぇ…」
「よし、じゃあ先に行こう!」
「そうね、行きましょうか」
動けなくなったミルレールお姉様を後に、2人は先に進もうとした。
「ま、待て…俺は…まだ!」
「……動けない奴を狩るのは趣味じゃ無いのよ。そこで寝てなさい」
「ふ、ふざけるな…後悔、さ、させてやる! え、びるにあ!
こ、殺せ…俺を怨んでるん…だろ!」
「……ミルレールお姉様、私はまだ、ミルレールお姉様を殺さない。
……少しだけ、待ってて」
「待て、え、エビルニアぁ!」
動けなくなったミルレールお姉様を後にして、私達は進んだ。
……大丈夫、一緒に死ぬから…だからまだ…
はぁ、何考えてるんだろう、私…助かる可能性なんて…
あのまま殺した方が良かったかも知れない。だけど…
だけど、出来なかった…私には…今の私には出来なかった。




