三国の決定
ミリアさんがフレッグさんを取り戻し
ダークエルフとエルフが再び繋がることが出来た。
少しの間に、私はエルフ達にサモナーの技術を伝えた。
「ふむ、サモナーか。それを私達に教えてくれるんだな」
「はい、サモナーの技術を復活させるために」
「なら、教わろう」
私はエルフとダークエルフにサモナーの技術を伝える。
そんな簡単に蘇らせる事が出来る技術では無いけど
私だけが持って居て良い技術や知識じゃないから。
サモナーを蘇らせるためにも、色々な人に伝えたい。
リトさんも私が教えた技術通りに再現しようとするけど
やっぱり短い間では無理だった。
だけど、とてもとても有意義な時間だったと、私は思えた。
そして、素晴らしい時間から少しして、私達は動き出した。
「フレッグ、エルフの里は頼んだぞ!」
「あぁ、任せろ! ミリア…魔王を倒してこい!」
「あぁ、必ず倒すさ!」
私達はエルフの里を後にして、ロッキード王国へ向う。
ここで最終決戦に備えた装備を手に入れるために。
私達は1度自国に帰還魔法で戻った。
「あら、皆様。お帰りですね」
「ゆ、ユリアス姫様? 何故ここに」
「私が呼んだからね、ユリアスとリリアンを」
「どうしてですか?」
「同盟を組むのです、正式に!」
「おぉ、それはまた大きな1歩ですね」
「勿論、各国家の長もお願いして来て貰ったんだ。
そして、今から同盟を結ぼうと思って待ってた」
「何を待ってたの? リンカ」
「そんなの、君達に決ってるじゃ無いか!」
「え、えぇ!?」
く、国に戻ると同時に、そ、そんなことを言われるなんて!
な、なんで私達が!? 私達はただの!
「そう驚くことは無いでしょ? 君達は既に勇者なんだから」
「で、でも、わ、私達は何も!」
「どの口が言うのさ、リズ。英雄だろ?」
「え、で、でも!」
「皆様は我がロッキード王国を救ってくださった。
兵士の皆様と一緒に共闘し、
アンデッドからロッキーを王国を取り戻してくれた。
ロッキード王国の皆様からしてみれば、あなた達は英雄ですわ」
「そして、我がビルドンス公国もあなた方が救ってくれました。
攫われてしまった私を救出してくださり、シュリンプ様を説得。
ビルドンス公国に攻め込んでいた不死者の皆様を止めてくださり
死者を出すこと無く私達を救ってくださった…感謝しております」
「そして、私達も君達が救ったのさ。魔術師達の襲撃を足止めしてくれて
壊滅寸前だったサンドラット王国を颯爽と駆けつけ、サラッと救って
そして、国民達と私の心を大きく動かし、国の体制すら変えた。
君達は紛れもなく、三国の英雄であり、力強い勇者だよ」
そ、そういう風に言われると…
私達って1年の間に凄い事してたよね。
普通、たった1年の間にそこまでとんでもない事を出来るかな?
とてつもなく濃厚な1年だった。
その1年がまるで何年もあった様に思えるほど。
「だから、君達はこの三国が同盟を組むという栄えある日に
立ち会って貰わないと困るんだよね。勿論、私達側にね」
「と、言うと?」
「あなた達2人を正式に勇者として国民に発表するよ。
他国の勇者候補達の事はこの際は良い。
私達三国の中で、君達は紛れもなく勇者だ。
今日、その事を国民達に大々的に発表する。
それと同時に私達三国が同盟を組む事を発表する!
君達は私達の隣でその発表を聞いて欲しいんだよ!」
「す、凄いですね皆さん! 凄い事です!
きっと私、涙を流しながら応援を!」
「ミザリー、君も来るんだよ?」
「…え、えぇ!? わ、私もですか!?
し、しかし私はただの専属受付嬢で!」
「今更何言ってるのさ、君も彼女達の大事な仲間だろ?」
「そ、そんな事は」
「ミザリー姉ちゃん、何言ってるのさ! 大事な仲間だよ!」
「で、でも…私、何もしてません」
「そんな風に思ったら駄目だよ! 強く強く前を見る!
今までが駄目だからって自分を卑下したら駄目なの!
今までが駄目でも、これから強くなる! そう思えば強くなれる!
私はそう思うもん! 私もまだ弱いけど、きっと強くなれる。
そう信じてひたすらに前に進むって決めてるから! にひひ!」
リズちゃんの満面の笑みは何だかとても男らしい雰囲気がある。
女の子にそんなことを言うべきでは無いのかも知れないけど
リズちゃんの笑顔は可愛いと言うよりは力強いの方が近かった。
「本当、凄い元気が良いよね、リズって。
凄まじくポジティブ。でも、だからこそ頑張れるのかもね。
前を向くことは大事だし」
「うん! 私はそう思うよ、私は前を向いて進むから!」
「本当、成長したわね、リズ」
そんなリズちゃんの姿を見たリトさんが嬉しそうに笑う。
ちょっとだけ涙の様な物も見えた。嬉し泣きかな。
1年前のリズちゃんと今のリズちゃん。
まるで別人の様に成長してる。
私たちの中で最も成長したのは間違いなく彼女だ。
ここまで成長出来たんだよ、絶対にもっと成長出来る。
そう確信出来る…リズちゃんはもっともっと大きくなる。
「あはは、いやぁ、良いね。こう言うの!
さ、そう言う訳だから皆、付き合ってくれる?
私達の記念日に、この三国の記念すべき瞬間に!」
「うん、付き合うよ! 一緒に見るよ!」
「ありがとう。じゃあ、行こうか!」
「うん!」
私達はこの記念日に立ち会うことになった。
私達が了承して、少しすると兵士達が動き出す。
そしてしばらくの時間が経ち、私達の部屋にお父さん達が来た。
「…出番だよ、皆」
「うん!」
「リズ、成長したわね…」
「おぉ、お母さんとお父さんも来たんだね!」
「勿論来るさ、リズの記念すべき日だからね」
「じゃあ、見ててね!」
「あぁ、勿論だ!」
私達は皆に連れられて、リンカ女王が待つ場所へ移動した。
そこは城の近くにある、高台だった。
何人もの人が立っても、壊れることが無い程に頑丈だった。
周囲には沢山の国民達が私達の方を見ていた。
サンドラット王国の国民だけじゃ無い。
ロッキード王国やビルドンス公国の国民も居た。
服装で分かった。色々な人々が今、この場に居る。
「全員! 聞いて欲しい! 私達は今日!
共に三国が歩み、大きく進んでいくことを決めた!」
「我らロッキード王国、ビルドンス公国
サンドラット王国の三国が手を取り合う!」
「我々は同盟を組み、共に歩み進んでいくことを誓おう!」
王様達の演説が始まり、国民達が一斉に沸く。
全員、この決定に不満がある訳では無いようだった。
「そして今日、もうひとつ!」
リンカ女王が私達の方を向く。
そのタイミングで私達は高台に上がった。
「勇者様だ!」
私達が高台に上がり、姿を見せると同時に
国民達が今まで以上に沸いたのが分かった。
す、凄い歓声だよ…全員、私達の事を勇者様と叫んでる。
「私達を救い! そして、私達を繋げたのは彼女達だ!」
「私達が追い込まれていたとき、優しく手を差し伸べ
私達をさも当たり前の様に救ってくれた!」
「追い込まれていた我が国を颯爽と駆けつけ、救い
私達が今まで叶える事が出来なかった魔物と手を取り合う。
そんな素晴らしい事を無血で成し遂げてくれたのも彼女達!」
「そして、私達を颯爽と駆けつけ、救い!
私達全員を守りきり、腐り始めていた王政を正し!
新たに我らが新しく歩むことが出来たのも彼女達のお陰!
「よって! 彼女達を今日! 正式に我らの勇者とする事を決めた!」
「わぁぁあ!」
歓声がより大きくなる。す、凄い歓声だった。
全員がさっきよりも大きな声で勇者様と連呼する。
こ、ここまで沸くとは思わなかった。
「そして今日! 私達の勇者に私達から贈り物をしようと思う!」
リンカ女王の言葉の後
後ろの方でルリナさんが顔を出した。
「る、ルリナも来たんだ!」
「ふふ」
ルリナさんは笑顔で私達に手を振った後
何処かに手招きをする。するとリリアン姫様を先頭に
豪華な鎧を纏った兵士達が凄く綺麗な防具を持って、
高台を上がってきて、周囲の王族の皆さんは左右に開く。
「さぁ、この鎧を。私達からの贈り物ですわ」
「な、何か格好いい鎧!」
「勇者の鎧、ルリナ様が皆様の為にご用意してくださりました」
リリアン姫様がその防具を取り、私達1人1人に手渡ししてくれた。
ちょっと困惑するけど、とりあえずこの鎧を私達は受け取る。
「さぁ、着てみて下さいませ」
「うん!」
リリアン姫様が全員にこの鎧を手渡した後、私達は皆で鎧を着る。
とても軽く、何も着てないと勘違いしてしまいそうな位に軽い鎧だった。
「この鎧は勇者の皆様に私達が贈る鎧!」
「おぉ、ほ、宝石があるね、これ」
そう言えば、凄く素材というか見た目の雰囲気が豪華になってる。
「これ、元々私達が依頼した…
いや、何も言わない方が良いわね空気読んで」
「そして、もうひとつ。さぁ、運んできて!」
リンカ女王が背後に手を向けると、今度はユリアス姫様がやって来た。
手には宝石が散りばめられてる綺麗な剣が握られている。
「こちらを、リズ様」
「こ、これは…?」
「ルリナ様が作ってくださった剣ですわ。
本来は皆様の依頼の品と言う事ですが
宝石など、装飾を付けさせていただきました」
「……にひ!」
ルリナさんが満面の笑みで私達に向けて親指を立ててくれた。
彼女の鼻や頬には炭のような黒い染みが出来てる。
うん、凄く色々と頑張ってくれてたんだね…
親指にだってマメの様な物が出来てるし。
「ありがとうね」
「それと、こちらもどうぞ」
そして、ユリアス姫様がリズちゃんと私達全員に
小さな剣を渡してくれた、短刀だね。
「ありがとう、これは国から土産か?」
「はい、全てが皆様の依頼の品と言うのは恥ずかしいですからね」
「ありがとうございます」
「それと、少々お待ちください」
「ん?」
それから少しして、階段の下の方から何人もの兵士が姿を見せ
凄くデカい斧を10人位で運んできた。
あ、あー、そ、そう言う…リトさんだからね…
「あぁ、そう言う」
「よし…い、行くぞ」
「は、はい」
兵士達が意を決したように階段を斧を持って上がってくる。
人数が増えたね…あの斧、凄く重いんだ。
兵士達がゆっくりと階段を上がってきた。
「な、何だあのデカいの…」
国民達が少し驚きの声を上げてる。
リトさんはその声を背にちょっと笑った後
兵士達が運んできた斧に手を伸ばす。
「ありがとね!」
感謝の言葉と同時に
その巨大な斧を片手で持ち上げ、自分の肩に乗せた。
「す、スゲー!」
その光景を見た国民達から驚きの声が上がると同時に
歓声の声が響いた。
「ありがとうね! 最高のプレゼントよ!」
「ふふ!」
そして、リズちゃんが高台の一番先頭に立って剣を掲げる。
「私達! 絶対に強くなって魔王を倒すよ!
この武器を使って! 絶対に魔王を倒してみせる!
皆、私達の事、信じて待ってて! 強くなって見せるから!」
「わぁああー!」
この場面でリズちゃんは恥ずかしがる事無く
大きな声で高らかに宣言した。
そして、勇者の高らかな宣言と共にこの演説は幕を閉じた。
私達は正式に勇者となった。
三国の勇者…まさか、私が勇者になる何てね。
ちょっと申し訳無いけど…やると決めた。




