決着を着けに
この時が来ることは分かってた。
ミリアさんはその為に、私達と一緒に来たんだから。
女王様にサモナーの技術を伝えて1ヶ月後。
私達は悠久の森へと辿り着いた。
「…久しいわね、確か1年前だったかしら?」
「うん、1年になるんだね、もう」
私達がミルレールお姉様に襲われて、恐らく1年くらい。
色々な場所を回って、凄く濃厚な経験をしてきた。
1年しか経ってないって言うのが驚きだよ。
「…ありがとうな、付いてきてくれて」
「付いていくよ! だって私達は仲間だからね!」
「えぇ、あなたは私の決着を見守ってくれた。
だから、私もあなたの決着を見守らせて貰うわ」
「依頼でも無いのに、何故私が来たのでしょうか?」
「自分で行動しておいて、何言ってるのよ」
「た、確かにそうですね…誘われはしましたが
断ろうと思えば断れました」
「でも、断らなかった…何故だ? ミザリー」
「愚問ですね…ここまで来たんです、あなた達と共に居ますよ」
「そうか」
ミリアさんの手には自分自身の力で作った弓矢が握られてる。
1ヶ月の間だ、ミリアさんは自力で色々な道具を用意した。
買った武器では無く、1から自分で作った武器だった。
あの時からこの日まで、1ヶ月時間が空いたのはこれが理由。
「私の全身全霊を賭して…あいつを止める」
改めて覚悟を決めた後、ミリアさんと一緒に私達は進んだ。
まずは久しぶりに悠久の森にある、エルフの里へ足を運ぶ。
「ミリアさん! 皆さん!」
「全員、無事だった様だな…久しぶりだな、皆」
「はい、ミリアさんもご無事で何よりです!
何て、魔王の娘に襲われて生き残ったんですし
当然、何があっても大丈夫だとは思ってました!」
「あぁ、何度も魔王の娘に襲われたが、無事だからな」
「…襲われたんですか!? ミルレール以外に!?」
「あぁ、相当数襲われた」
「…勇者様の仲間って、大変ですね」
「かもな、だが、辛い事ばかりでは無い。
証明するぞ、今までの旅が無意味では無かったと言う事を。
そして、必ず取り戻してやる。あの毎日を…今日! 必ず!」
「ミリアさん…ついに、フレッグと」
「あぁ、今日…決着を着ける」
ミリアさんの弓を握る手に力が込められた。
「……なら、私達はミリアさんに全てを託します」
「あぁ、期待には必ず答えると約束しよう」
「絶対にフレッグさんと一緒に帰ってきてくださいね!
ミリアさんが大好きなエルフの雫…沢山用意しましたから!」
「そうなのか?」
「はい、折角の記念ですから、私達もお酒を呑もうと思って」
「呑めないんじゃ無いの?」
「折角私達とダークエルフの遺恨が無くなる記念日なんです。
呑まないわけにはいきません!」
「…ふふ、あはは! そうだな! 美味い酒を呑むためだ!
必ず連れ戻す。宴会の準備をして待っててくれ、皆!」
「はい! 最高の料理を用意しておきます!」
「おぉ! 最高の料理だというなら、私達からもお裾分け!
一杯美味しい食材持ってきたからね-!」
リズちゃんが私に視線を向けた。
意図は分かったから、私は魔法陣を書いてマジックバックと繋げる。
「ありがとう!」
そして、リズちゃんがその魔法陣から沢山の食材を取り出す。
「こ、これは!」
「ふふん! 1ヶ月の間だ暇だったからね!
ミリアが昔を乗り越えた時にお祝いするために沢山買ったの!」
「私の時は何も無かったのに…羨ましいわぁ…グスン」
「はは、なら今日それも一緒にやれば良いじゃ無いか、リト」
「そうね! まぁ、あの時は用意する暇も無かったし仕方ないけど。
と言う訳だから、ミリア! 私の記念も兼ねてるのよ!?
美味しく食べたいから、ちゃんと乗り越えなさいよ!」
「あぁ、最高に美味い酒と上手い料理を、あいつらと一緒に食う!」
「うん! 沢山買って良かった! ダークエルフの人達も一緒に食べよう!」
「あぁ、そうだな!」
宴会の約束をして、沢山の食材を私達はエルフの里の人達に渡した。
彼女達は宴会の用意をして待っててくれると言い、私達を見送る。
エルフ達の声を背にしながら、ミリアさんは里を後にする。
ダークエルフの住処は理解している様で、ミリアさんは歩んだ。
「そこ、待て!」
「フレッグに会いに来た!」
「フレッグ様を殺しに来たのか!? 行かせるわけが無い!」
「いや、決着を着けに来ただけだ! 退いてくれ」
「その人数で行かせると思うか?」
「戦うのは私1人だけだ!」
「そんな言葉を信じるわけが」
「退け、クロミア」
「ふ、フレッグ様!?」
私達を制止していたダークエルフの背後からフレッグがやって来た。
「フレッグ…待たせたな」
「本気で私を倒せると?」
「あぁ、必ず倒す」
ミリアさんが1人でフレッグの元に歩み寄った。
フレッグは近付いてくるミリアさんをその場に立ったまま見てる。
「……1人で、戦うつもりか?」
「あぁ、1人で戦わなければ無意味だからな」
「……」
「……」
かなり至近距離で2人はにらみ合ってる。
「ふん!」
「はぁ!」
フレッグが先に攻撃を仕掛け、ミリアさんはその攻撃を避ける。
即座に腕を取り、短刀で彼女を斬り付けるが
即座に腕を振り払い、後方に退いた。
「…ふ、強くなったな、ミリア!」
「あぁ、お前と決着を着ける為、私は強くなった!
もう、昔の私では無いぞ! 決着を着ける!」
「全員! 手を出すな! これは、私とミリアの戦いだ!」
「し、しかしフレッグ様! あいつの仲間が動かない保証が!
ほ、包囲をしておきますか!?」
「必要無い、奴らも動かないだろう。そもそもだ
貴様らがあいつらを包囲したところで意味は無い。
即座に制圧されて終りだ。何もするな」
「は、はい…」
「フレッグ、私はお前を乗り越える!」
「越えてみろ、ミリア!
今まで1度も越えられなかった私という壁を!」
2人が臨戦態勢を取る。ミリアさんとフレッグの戦いが始まる!




