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サモナーの技術

何て事の無いやり取りからしばらくの時間が経った。

私達はユリアス姫様達から許可を貰った後

国に一旦帰り、今回の事をリンカ女王に伝える為に動いた。


「無事に帰ってきた、と言う事は。吉報?」

「はい、私達は何とかユリアス姫様達を救う事が出来ました」

「流石だね! いやぁ、やっぱり君達に頼んで正解だった!

 それで? どんな感じだった? 被害とかは?」

「被害は殆どありませんでした。同時に向こう側では

 リンカ女王とユリアス姫様の夢が一歩進みました」

「と言うと?」

「ビルドンス公国を攻撃してた擬似的な不死者達が手を取り合ったの!

 擬似的な不死者達も襲撃は本来不本意だったみたいで、誰も死んで無い。

 だから、ビルドンス公国と擬似的な不死者達は

 お互いに協力することを選んだの!」

「え!? 本当!?」

「うん!」


リズちゃんの報告を聞いたリンカ姫様が少しだけ微笑んだ。

彼女にとって、その報告はとても喜ばしいことだったんだ。

当然だよね、自分達の夢が一歩進んだんだから。

同時に魔物と人が手を取り合える可能性の証明にもなった。


大きな一歩だよ、この一歩は本当に大きな一歩。

可能性が証明された…そんな、大きな一歩。


「なんだろうね、君達が来てからと言う物

 私達は凄く順調に進んでいる気がするよ。

 これが勇者という存在なのかって思う」

「私達じゃ無いよ、皆のお陰だよ!」

「…皆のお陰でも、繋がることが出来なかったんだよ?

 魔物と人が手を取り合うだなんて快挙は今まで無い。

 歴史とかを多少は調べてはいるけど、こんな事は無かった。

 勇者という存在が大きいのは間違いないけど…

 でも、過去の歴史を振り返ってもここまでは無かった」

「そう言えば、今までの勇者って」

「魔王を倒しに行ってくれる存在と言うだけだ。

 ただ人類の脅威である、魔王を倒してくれるだけのな。

 だが、200年前から歯車が狂い始めた。そうだろう?」


私が勇者様と仲間になった時に…色々と狂った。

今まで正常に回っていた歯車が、一気に崩壊を始める。

お父様のために作られたと疑問に思ってしまうほどの出来すぎたシステム。

そのシステムに大きな欠陥が生じ、世界が大きく狂い始めた。


「200年前…裏切られた勇者だっけ?」

「そうだ、魔王が作りあげてたシステム…それが、狂った瞬間だ」

「ふむ、ミリアだっけ、何を知ってるの? 長い時代を生きるエルフだし」

「200年前の出来事の一部を知ってるだけだ。ただ1つ言えることとして

 勇者を裏切った魔王の娘は、勇者をただ裏切ったわけでは無かった」

「でも、勇者を殺したんでしょ? 裏切りじゃないの?」

「仕組まれてたことだよ、その事実を最近知った。

 だが、策士は策に溺れた。魔王の行為は自分の首を絞めただけだった。

 その事が、きっとこの時代に証明される。そう確信してるよ、私は」


私は裏切ってる。どういう風に言い繕うと変わらないと思う。

お父様に仕組まれた事だとしても、迷っていた私が悪かった。

お父様が付け入ることが出来る隙を作ってしまった私が悪かった。


だけど、今度は違う。今回だけは、絶対に違うって証明する。

死んでも良い…消え去ってもいい…思い出が何も残らなくても良い。

今度こそ…きっと、これが最後のチャンスなんだ…最後のチャンス。

奇跡は2度も起きない…私が最後、勇者様の遺志を継ぐ最後のチャンスだ。


私は消えるだろうね。お父様を倒すことで私の意思は消える。

女神様がそう言った、ならば確定なんだろう。

だけど、それでも私はもう迷わない…迷うことを止めると決めた。


例えこの手で…お姉様達やレイラードを殺す事になろうとも

私は必ず…必ず、お父様を倒すんだ…

そして、今度こそ…勇者様に報いる。

2度も勇者を裏切ることは出来ない…私は必ず!


「きっと、魔物と人が手を取り合える未来が出来ます。

 そう確信してる…だから、私は私の知識を残しますね」

「知識を…?」

「はい、私はサモナーの技術を持ってる」

「嘘!? サモナーは私達が必死に探しても見付からなかった…

 あ、あなたはサモナーの技術を持ってるって言うの!?」

「はい、サモナーの技術も知識も、全て持ってます。

 だから、それを残します」

「し、信じられないけど…嘘を言ってるようには見えないし」

「はい、ちょっと待っててくださいね、今見せます」


私はいつも通りウルルちゃんを呼び出してみた。


「ウルル! お呼びとあらば即座に登場いたしますぅ!

 おぉ! 良い匂いがする場所ですね! 平和そうですご主人!

 今日はどんなご指示ですか? 見張りですか? お任せください!」

「今日はちょっと出て来て貰った感じだよ、指示はくつろいでって」

「くつろぐ? はて、くつろぐというのはどう言う?

 んー、分かりました! ご主人と遊んでも良いと言う事ですね!

 ごしゅじーん! なでなでしてくださーい」

「あはは、うん」

「あぁ、き、気持ちいいですご主人…」

「…犬が出て来たね…何処から? え? まさかサモナーの技術!?」

「はい、この子はホワイトウルフと言います。

 サモナーが最も呼びやすい召喚獣ですね」

「ほ、本当にサモナーの技術を…ちょ、ちょっと教えて!」

「はい、教えますよ」


私はサモナーに必要な条件や技術とかをリンカ女王に伝えた。

その間、召喚したウルルちゃんは私にじゃれついたり

リズちゃんと遊んだりしてた。


「可愛いー! 私も呼び出したいなぁ!」

「癒やし系よね、この子。それに、いざと言う時

 かなり頼りになるのも良いわよね」

「うーんと、サモナーに必要なのは魔物に近い人物で

 更には魔法文字の知識も必要と…ん? 魔物に近い人物?

 エルは魔物に近いわけ? 魔物に関係する何かがあるの?」

「えっと…今まで、言えなかったし、言わなかったんですけど…

 お父さんの前で言うのも、ちょっと辛いんですけど」

「ん? 辛い? どう言うことだ?」

「……私は、私はね…私は…元魔王の娘…なの」

「……はぁ?」

「私は魔王の娘…エビルニア・ヒルガーデンの生まれ変わりなの!

 だから、前世の記憶もあるし…前世の経験だってある」

「……ふむ、なる程、妙に魔法に精通してると思ったらそう言うことか。

 なる程なぁ、元が魔王の娘なら当然か」

「……お父さん、あまり驚いてないね…しょ、ショックじゃ無いの?」

「驚くには驚くが、ショックでは無いよ。エルが元々なんだったとしても

 お前は俺とエイリーンの間に生まれた大事な娘だからな。

 あいつが腹を痛めて生んだ、紛れもなく俺達の自慢の娘だ。


 前世が何であれ、俺とあいつが愛し合い、そして天より授かった

 大事な娘。お前の前世が魔王の娘だとしても、それは変わらないし

 お前に注ぐ愛情が変わるわけじゃ無い。あいつもそう言うさ」

「お父さん…ありがとう」


少し驚いた…もっと色々と言われるかも知れないって思った。

だけど、何も怒ったりしなかった…受入れてくれた。

なんの躊躇いも無く、凄く簡単に受入れてくれた。


「いやぁ、凄くさっくりと受入れたね、ジェル。

 私だったら軽くショックを受けそうだけど…

 まぁ、私は好き合った人も居ないし、子供も居ない。

 親の愛情だなんて、私には分からないかな。


 だけど、子供の気持ちは分かるよ。

 羨ましい、そんな風に愛されて。

 ありのままを躊躇い無く受入れてくれる何てね。

 あはは! 私が歪んだ性格だったら絶対に嫌がらせしてる!

 まぁ、誰かさんのお陰で、私は歪まなかったけどね」

「リンカ女王…」

「エル、羨ましいよ、こんな優しい人がお父さんで」


リンカ女王のお父さんは国王様…優しかった訳じゃ無いんだろうね。

何だか表情が暗くなってる…どうしよう…どう声を掛ければ…


「はい、女王様も撫でてよ! ウルルちゃんだよ!」

「え? 何をいきなり」

「女王様! 撫でてください!」

「こ、この子、どうして私の膝の上に?」

「撫でて欲しいみたいですよ」

「な、撫でて良いの? でも、この子はあなたの召喚獣でしょ?」

「あはは、狼だけど、何だか犬みたいに人懐っこいので」

「可愛いよー! なでなですると凄く嬉しそうにするの!」

「はい! 撫でてください! 癒やし系である私のすごさを見せますよ!」

「……可愛いね、この子…えっと、こ、こうかな」

「えへへ、気持ちいいです!」

「……可愛いね」


リンカ女王の頬が赤くなったのが分かった。

さっき見せた、暗い表情が一変し、楽しそうな笑顔に変わる。

私は何も声を掛けられなかったけど…良かった。


「あはは! やっぱり楽しそうな笑顔が1番!

 暗い表情してたら、心まで暗くなっちゃうからね!

 大丈夫だよリンカ! 辛い事もあるかも知れないけど

 楽しい事だって一杯ある!

 辛いと思ったら楽しい事に目を向けるの!


 あはは、まぁ私が言ってもあまり説得力無いかもだけどね。

 私もお父さんお母さんは優しいから。

 だけど、言わないよりは良いかなって!

 私、明るいのが取り柄だからさ! 後、無計画なところとか!」

「リズちゃん…無計画なところは取り柄にしたら駄目だよ?」

「あぁ、そうだね。じゃあ、思い立ったら動くのが取り柄!」

「ふふ、それは良い取り柄だね。ありがとう、リズ」


リズちゃん、あのタイミングでウルルちゃんを渡したのはそう言う。

ずっとウルルちゃんに夢中になってると思ってたけど

リンカ女王や私達の事、見てたんだね。


「よし、やっぱりサモナーの技術は偉大だね!

 まずはこの知識を元にサモナーを復活させようか!

 さて、ユリアスと後はリリアンにも協力して貰って

 サモナーを蘇らせるよう、尽力してみるよ!」

「はい、サモナーが蘇った後、魔物と人が手を取り合えるように」

「それまでに、私達が魔王を倒しちゃうよ! でも、その前に」

「ん? どうした? リズ。私の方を見て」

「ミリア姉ちゃん!」

「……ふ、そうだな」


リズちゃんの問いかけがなんなのか、ミリアさんはすぐに分かったようだった。

リズちゃんの言葉を聞き、嬉しそうに笑う。


「そろそろ、私の番だな。フレッグを取り戻す」

「うん! 行こう! 悠久の森に!」

「あぁ、見守っててくれ、私の決着を!」

「ミリア…本気ね」

「あぁ、本気だ…絶対に決着を着ける!」

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