表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/142

戦い方の模索

ミザリーさんの戦闘スタイル。

それはまだ模索してる最中なんだと思う。


「うりゃ!」

「ふふ、良いわねっと!」

「くぅ! 避けますか!」

「見え見えな罠は流石に避けちゃうわよ~?」


ミザリーさんが仕掛ける罠は少し目立ってしまってる。

どうしても罠を設置しようとしても発動まで時間が掛る。

それに相手はリトさん。半端な罠なら破壊してきそうだしね。

強度が無いマジックチェーンでは拘束は難しいと思う。


私がレイラードに仕掛けたように膨大な魔力を消費して

莫大な数を設置して、精巧で緻密な魔法陣を組めば

かなりの拘束能力になるけど、普通は出来ないからね。


あの時もレイラードの魔力を吸ってないと発動出来なかったし

そもそも私の様に精巧な魔法陣を即座に組むには何百年の時間が掛る。

精巧な魔法陣だけなら数十年かも知れないけどね。


「この!」

「ふふ、激しい攻撃ね、でも」

「ちぇりゃ! って、うわ! 鎖!?」

「あぁ! すみませんリズさん!」

「ふふ、まだまだね-、それ」

「いで!」


ミザリーさんのマジックチェーンに捕まったリズちゃんに

リトさんがクスクスと笑いながらデコピンをして下がった。


「くぅ! リト姉ちゃん強すぎるよ!」

「うぐぐ…ま、まさかここまで遊ばれるとは…」

「あなた達、まだ自分達が何をしたいか理解してないでしょ?

 連携において大事なのはお互いの意思を伝えること。

 それも口では無く、心とかでね。あ、テレパシーとかじゃ無いわよ?」

「どう言う事ですか…私にはさっぱり」

「簡単な事だ、戦闘経験が足りてないんだよ、ミザリーには」

「ど、どう言う…」

「要は一緒に戦う事があまりないから合わせ難いと言う事ね。

 リズちゃんは連携自体は出来るタイプだからね。

 実際エルちゃんとの共闘であれば相当でしょうしね。

 例えリズちゃんにエルちゃんが強化魔法を掛けなかったとしても」

「まぁ正直なところ、エルは合わせるのが異常なくらいに上手いからな」

「あ、あはは…まぁ、協力戦には慣れてますからね」


勇者様達との共闘経験もしっかりあるからね。

連携の経験は私よりもミリアさんの方が多そうだけど。


「だからね、まずは自分がやりたい戦い方を決めなさいな。

 今、あなたかなり戦い方を迷ってるでしょ?

 リズちゃんのサポートか、トラップを仕掛けるか。


 まぁ私のお勧めは後者、今の戦い方ね。

 正直言うと、あなたがリズちゃんのサポートに回ったとしても

 そっちはもう十分過ぎるのよ、エルちゃんにミリアもサポートだしね」

「それは分かってます、私なんかじゃ2人にはとても追いつけない。

 だから、別の戦い方を今、こうやって試してるんです」

「なら今度はどういう風に罠を置くか、そんな基盤を考えなさい。

 考えた後、その基盤をリズちゃんに伝えなさい。

 戦いの全てにおいて重要なのは基盤よ。

 連携においても重要なのは連携や交流の基礎である会話。

 ほら、今回は訓練だからね、待っててあげるから考えなさい」

「…基盤」

「うん! 教えて!」


ミザリーさんはしばらく考えた。

その間、リトさんはあくびをしながら待ってる。


「暇か? リト」

「まぁね…と言うか、私よりもあなたの方が暇そうだけど」

「私は見てるだけで結構楽しんでる」

「ふーん…で、そっちは?」

「あぁ? 俺は暇だぜ? と言う訳でちょっとやろうや」

「え-、あなたと戦うの? しんどそうなんだけど…」

「あんたの強さを見てたら試したくなってな。

 どれ位強いのか、あの2人と比べたらどれ位なのか」

「それはミザリーとリズちゃんの2人?

 それとも、エルちゃんとリズちゃんの2人かしら?」

「後者だ、俺はあの時、手酷くやられたからな。

 エルって奴が動いただけで、俺は瞬で負けた」

「エルちゃんとリズちゃんのコンビはクソ強いからね。

 まぁ、私はあの2人と比べれば当然弱いわよ。

 最初の時でさえ、私、強化状態のリズちゃんに負けかけてたし」


あぁ、懐かしいなぁ…そ、そんなに前という訳じゃ無いんだけどね。

本当にまだ1年経ってないんだよね…リズちゃんの成長性は凄いよ。

でも、流石にもうそろそろ1年経ちそうではあるけどね。


「最初の時? 勇者としての時じゃ無くてか?」

「えぇ、勇者候補として選ばれた直後よ…思い出すと懐かしいわ。

 まぁ、追い込まれて強化魔法を使っちゃったけどね。

 あ、因みにさっきの戦いでは使ってないわよ、強化魔法」

「お前…巨人族のくせに魔法使えるのか!?」

「えぇ、皆から驚かれるわ。10年以上必死に鍛えて覚えたのよ」

「そりゃまた…相当だな、お前」

「まぁ、責任感が強かったからね、あの時は」


イブさんに出会う前は本当に使命感で動いてたらしいからね。

イブさんに出会って、色々と救って貰って…今みたいになった。


「へっ、あんたの話を聞けば聴くほどにあんたに興味を抱くぜ。

 俺は結構そう言うの好きなんだ。義理堅い奴だとか

 必死に努力してる奴ってのを見ると、何か胸が躍るんだ。


 こいつはまだ先に行くんだなって、そんな未来が見えてな。

 俺も不死者だ、擬似的だがな。結構長寿なんだよ。

 だから、未来が見える奴ってのを見ると、本当に嬉しいんだ」

「大体そうだろうな、人間以外は正攻法では成長しないんだ。

 純粋な成長があるのはただ人間のみ。技術を磨き

 上に行く者は居るが、そう言う奴は大体途中で心が折れる。


 無情な現実を知るからだ、自分が成長しないと言う現実を。

 そして壁にぶつかる。純粋な成長さえあれば越えられる壁に。

 魔力量という、どうしようも無い壁。才能だからな、これは。

 人であれば努力を続ければ壁を乗り越え、成長するがな」


そう、必死に強くなろうとすると、どうしてもその壁に激突する。

成長しない魔力量。色々と試行錯誤しようとも増える事が無い。


「だがよ、その壁に打ちのめされようとも立ち上がり

 前に進む奴ってかっけーじゃねぇか! 

 乗り越え無かろうと、必死に努力して先に行く。

 そんな可能性がある奴を見ると、ウキウキする」

「あぁそう。そう言う子は知り合いに居るわよ?

 魔物だったけど、必死に努力して成長した子が」

「…あぁ、テイルドールとミルレールが血眼になって取り戻そうとする。

 そんな奴だろ? エビルニア…最弱とか言われてた魔王の娘だが

 実際会ってみたら、最弱とか冗談にしか聞えねぇよな。

 なぁ、エル。お前マジで最弱だったのか?」

「さ、最弱でしたよ私は! 魔力量も人間の平均程度でしたしね」

「…今は違うんだろ?」

「今は…どうだろう、多分大分少ないですよ?」

「……少ないのか?」

「ミザリーが言うには平均程度らしいわ」

「……冗談だろ」


前も言われたような気がする…こ、これも一応技術なんだけどね。


「技術らしいぞ。そういう技術」

「ふーん…そりゃまた」

「よーし! リト姉ちゃんもう一度勝負だ!」

「お? ようやく作戦タイムは終了かしら?」

「そうだよ! 今度こそ勝つんだから!」

「今度は捕らえますよ!」

「良いでしょう、、さぁ掛ってきなさいな」


2人の準備が出来たようで、リトさんが再び2人の前に立った。

最初に動いたのはリズちゃんで、すぐに間合いを詰める。


「やっぱり最初は突撃なのね」

「そうだよ! でも!」

「ん? おわ!」


リズちゃんの手からマジックチェーンが出て来た!

リズちゃんの掌にトラップとして置いたんだ。

結構難易度高いよね、それっ…あ、いや違う!


「ちょ! 体に魔法陣とか出来るの!?」

「出来るのだ! そこだ!」

「この…って、あれ?」

「ふふ、惚けてる場合で?」

「あ、っぶな!」

「うっそ! 擦っただけ!?」

「は、初めて攻撃が擦ったわね…」


あのマジックチェーンはリズちゃんの掌から出たわけじゃ無い。

綺麗に隠してるけど、ミザリーさんから放たれてた魔法だった。

でも上手いね、マジックチェーンをリズちゃんの体を這わして伸ばすって。


リズちゃんが手を伸ばしたタイミングを見計らって伸ばした感じだった。

リズちゃんの掌にあったように見えた魔法陣はリズちゃんが組んだ

何の効果もない、ただの魔法が発動しそうな魔法陣。


「ちぇりゃ!」

「この!」


初手の影響でリトさんはリズちゃんの体の何処かに

さっきと同じ様な魔法陣があるのでは無いかと疑ってる。

動きが若干ぎこちなくなってるね、上手いよ。


「や、やっぱり対話って大事よね、改めて思うわ」

「えぇ、おかげさまで!」

「うぉ! ここまで罠を置いたの!? いつの間に!?

 てか! リズちゃんの体に仕込んでおきながらまだ出せるの!?」

「ふふ、人の体に魔法陣を仕込むだなんて高等テクニック

 エルさんなら可能でしょうが、私なんかに出来るわけないでしょ?」

「…ま、まさか」

「初手はただのこけおどしだよ!」

「ふふ、良いわね! 策士という奴!? 良い方向ね!

 でも、重要な柱である魔法が出来てなけりゃ!」


リトさん! そこは負けないの!?

よ、容赦なくミザリーさんの鎖粉砕したよ!


「はぁああぁあ! そ、そんなのありですかぁ!」

「壊れたよ! そんな簡単に壊れるの!?

 両手両足捕まってたじゃん!

 何か糸を千切るくらいの感じで簡単に壊れたよ!」

「私に強化魔法を使わせた事は褒めてあげる。

 でもまだまだ! 魔法鍛えて出直して来なさいな!」

「あひゃー!」


そのままリズちゃんを抱きしめて強く頭を撫でた。

思いっきりリトさんに撫でられたリズちゃんは

目をグルングルン回しながら、口を開けたまま仰向けに倒れた。


「り、リズさーん!」

「ほい、あなたも良い子いいこしてあげるわー」

「あ、あ、あぁ! 目が! 目がグルングルンしてぇ~…」


すぐにリトさんはミザリーさんに間合いを詰めて

やっぱり同じ様に思いっきり頭を撫でた。

撫でられたミザリーさんはリズちゃんと同じ様に

目をグルングルンと回しながら、同じ様に

リズちゃんの近くに倒れた…あ、あはは…


「あっはっは! 今日は良い気分よー!」

「リト…わざと攻撃を喰らってやっても良かったんじゃないか?」

「駄目駄目、作戦は見事だけどあの程度で天狗になって欲しくないしね。

 それに、あの作戦は1回勝負の初見殺しとしか機能しないわ。

 良いのは良いんだけど、初手でやるような技じゃ無いし

 基盤として運用するべき技でも無いからね。

 応用が利きにくい作戦だし、もっとこう、上を目指して欲しいのよね」


確かにリトさんが言う事にも一理あるとは思う。

多用して良い技ではないし、初手で仕掛けるべき技でも無い。

応用が利きやすいわけでも無いから、弱点も多々あるからね。


でも、リトさんを倒すためには最初に仕掛けて注意を逸らし

その間に大量の罠を設置して、そこにリズちゃんが誘導

そこで発動させるって言うのは倒すためには順当だと思う。


「何だか辛口ですね、今日のリトさん。」

「ふふん、ちょっと気分が良いからね。

 さて、時間もまぁまぁ良い感じよね。

 ふふふ、さぁ! 今日は本当に気分が良い!


 だって、久しぶりにお酒を呑む予定なんだからね!

 シュリンプ、あんたって酒飲める? 雰囲気は飲めそうだけど」

「酒か、あまり飲まねぇが、まぁ付き合ってやっても良いぜ?

 てか、あんた酒好きなんだな」

「えぇ、凄く好きよ! ちょっと前までは1番好きだったし」

「今は違うってか? はん、まぁ雰囲気から分かるがな」

「さて、そんじゃミザリーが起きるまで待機ね!」

「はい」


リトさんは嬉しそうに2人が目覚めるのを待った。

本当に楽しみにしてたんだね、リトさん。






「……私も誘って欲しかった…私って、そんなに空気かしら…

 うぅ、結構寂しい…とほほ…うぅ、1人でお酒飲もぅ…」

「……あ、あはは」


な、何だかクレアさんが可哀想な気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ