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訓練の第一歩

リズちゃんの回復魔法もあって

私の傷は何とか回復した。

まだ魔法は使えないけど、動けるだけの状態だよ。


生命力を増強する効果もあるからなのか

怪我が回復してすぐに私は動くことが出来た。


「大丈夫なの? もう動いて」

「うん、まだ魔法は無理だけど、動くことは出来るよ」


多分だけど、今日で魔法が使用できなくなるのは終わるはず。

テイルドールお姉様の言葉が本当なら今日で3日目だからね。

でも、この数日という時間も出来れば無駄にはしたくない。


私達は早速訓練場に行き、リトさん達と稽古をする事になった。


「はい、と言う訳で…まぁ、エルちゃんが回復したと言う事で

 やりましょうか、接近戦の訓練」

「うん! 待ってたよ! やるぞー!」

「まぁ、最初は軽く戦闘をするとしよう。

 私はお前達と戦ったことが無いからな。

 とは言え、今はエルも魔法を扱えない状態だ。

 と言う訳で、リズの相方はミザリーで良いか」

「……え!?」


私達の後ろで興味ありそうに私達を見てたミザリーさんが驚く。

それはまぁ、当然と言えば当然なんだけどね…いきなり飛んで来るとは。


「そう言えばミザリー姉ちゃんと一緒に戦ったことあまり無いもんね」

「そ、それは私が専属受付嬢でして…そもそも戦う職業では無くてですね!」

「でも、強くなりたいんでしょ? あんたも」

「そ、それはそうですけど、それは魔法使いとして強くなりたいという!」

「私達に何かあったら嫌だから強くなりたいと思ってるなら

 リズちゃんと共闘してどんな風に立ち回るか、

 そう言う連携の練習の方が良いでしょ?」

「そ、それはそうですけど…そもそも難易度が高すぎるというか!

 何で私が戦闘慣れしてるあなた達と戦わないと!」

「あら、逃げるの? 残念ねー、期待してたのにねー」

「う、うぐぐ…」


全力で嫌がるミザリーさんをからかうようにリトさんが笑う。


「まぁ、無理しなくても良いわよ? 無理しないと成長しないかもだけど

 そう焦る必要も無いからね-」

「く! い、良いでしょう! やってやりますよ!

 そう、今は焦るべき状況! えぇ! 悠長に構えてたら

 いざと言う時に何も出来ませんからね!」

「ふふ、その通り。いざと言う時はいつでも来るからね。

 まだ大丈夫、まだ平気だなんて先延ばしにしてたら

 肝心なときに何も出来ない無能と化し、後悔のまま生きる事になる。

 覚悟があるのであれば、まず行動する事が重要だからね」

「非常事態は想定できないから非常事態と言うからな。

 想定できた非常事態はただの人災だからな」


実際、想定外を想定内にする事なんて不可能だからね。

想定できた非常事態は対処しなかった人が悪いって事になる。

そんなのは非常事態とは言わない。まぁ、非常事態って言うんだろうけど。

想定できてても想定外でしたー! とか言うのがオチだよね。

責任逃れをするのが偉い人の仕事だからね。

まぁ、そんなの子供は泣くのが仕事って言うのと大差ないけど。


「さぁ、そんなくだらない戯れ言はここまでにしよう。

 ミザリー、覚悟が出来たなら…これを持て」


ミリアさんが右手に持っていた摸造刀をミザリーさんに投げた。


「そんな物騒な、あだ!」


ミザリーさんは投げられた摸造刀を掴もうとしたけど

綺麗に空振りして掴むことが出来ずにおでこに当った。


「……ミザリー」

「し、仕方ないじゃ無いですか! 私は運動神経良くないんですよ!」

「あっはっは! いやぁ、あなたって結構あれよね、ドジよね!」

「ち、違いますし! ドジとは違います! これはあれです!

 ただちょっと実力が足りなかったと言うだけで!」

「そうだよね、ぷふ、じ、実力が足りなかった…ぷふ、だ、だけよね」

「く、クレア先輩! ば、馬鹿にしないでくださいよ!」

「いやだって! ぷふ、おでこに当った時のあなたの表情

 ほ、本当にお、面白かった! くふふ! 目をグルングルンさせてね!」

「もぅ!」

「そして今は顔真っ赤、恥ずかしいんでしょ~」

「は、恥ずかしく何てありません! み、見ててくださいよ!

 い、今すぐ私が運動できると言う事を証明しましょう!

 こ、これでもほら、皆さんに付いて来たのですから!」


恥ずかしそうな表情をしながらへっぴり腰で摸造刀を構えた…

うーん、だ、大丈夫かなぁ? や、やっぱり基礎から。


「ミザリー姉ちゃん…大丈夫なの? 戦えるの?」

「た、たた、戦えますよ! ほら見てくださいよ! この構えを!」

「へっぴり腰だよ? そんなんじゃ力は入らないよ?

 えっとね、剣を構えるときはこうやってどっしり構えるの。

 重心を後ろにしたら駄目だよ。前に立つ人は前を見るの。


 こう、後ろに逃げようとするような構えは駄目だからね。

 攻撃を受けたときに重心が後ろだと、簡単に押されるからね。

 でも、重心を前にすればすぐに動けるし、押されにくくなるよ」

「えっと、こんな感じですか?」


リズちゃんに言われながら、ミザリーさんは構えを直した。


「駄目だよ、もうちょっと腰をこう」

「こ、こう…」

「それは前に出過ぎだよ? 重心を前に出すと速く動けるけど

 逆に攻撃を受けやすくなっちゃう。こうね、両手で剣を構えてね

 剣先を相手に合わせるの、で、重心は若干前に。


 へっぴり腰になったら相手に侮られちゃうし攻撃されたら

 凄く簡単に追い込まれちゃうから、絶対に駄目だよ?

 前衛はね、後ろの仲間を守る大事な盾だからね。

 凄くボロボロで簡単に壊れちゃいそうな盾は意味ないでしょ?


 サポートでも前を向いて、いつでも前に出れるように構えるの。

 前に出るのが遅くなったら、前で戦ってる人が怪我しちゃうからね。

 サポートはサポートで前屈みにすぐに動けるように構えないとね。

 エルちゃんもいつもそんな風にいつでも前に出られるように構えてるから」

「は、はい…そ、そうですね…」


ミザリーさんがちょっと傲然としながらだけど

リズちゃんの言葉に反応する。


「後はね、攻撃をするか避けるか防ぐかの3つを選ぶだけだよ。

 逃げるって選択は後ろの人達がしてくれるから

 私達が選ぶ必要は無いの。前衛だと状況判断が難しいからね。


 基本的に立ち回りが変るときは後ろの人達が指示をしてくれるから

 前衛は仲間の声と目の前の敵に集中すれば良いんだよ。

 集団戦だとちょっと違うけど、どっちでも仲間を守るのが大事だよ」

「あ、はい…えっと、でも私前衛というか後衛ですし…

 あ、いや、何でも無いですはい…」

「ミザリー、リズちゃんに教えられる気分はどう?

 私はリズちゃんがこんなに考えてるって初めて知って驚いてるわ」

「普段の振る舞いが馬鹿っぽいからな…真剣な時とそうで無いときで

 リズは本当に性格が変わるな」


リズちゃんが本気で色々と考えてるのはよく分かるけどね。

普段の振る舞いはそんな知的な感じがしないけど

やっぱりただ無謀なだけじゃ色々と引っ張ることは出来ないよね。


リズちゃんは色々と考えて行動していたからこそ

リズちゃんの言葉には妙な説得力がある。

何も考えないであんな事を言ったわけじゃ無い。


「はん、まぁこう言う奴じゃねぇと言葉に説得力なんざねぇよな」

「それはそうね、何も考えてないように見えて色々と考えてる。

 意外と鋭いところあるしね、リズちゃん」

「よし、じゃあミザリー姉ちゃん、頑張ろうね!」

「あ、はい…ちょっとだけ剣技というのも良いでしょう」

「よしよし、それで良いわ。じゃあミザリー、まず私に攻撃してみて」

「は、はい! てりゃー!」


ミザリーさん、剣を振り上げたまま走ってる…


「…み、ミザリー、あなた本当に剣術の心得ないわね」

「うわ! 躱された!」

「むしろあれで当ると思ったの!?」

「しかも振り下ろした勢いでバランス崩してるな」

「ちょ、ちょっと摸造刀って重いですし」

「華奢すぎるでしょ、あなた。ほら、私はこれよ?」


リトさんがサラッと普段使ってるデカい斧を取り出した。

相変わらず片手で軽そうに持ち上げるね…リトさん。


「これに比べりゃ軽いでしょ」

「比べる対象が別次元過ぎませんかね!?」

「あ、持ってみる?」

「無理無理無理! 止めてください! そんなニコニコ笑顔で

 私の手元にそのクソデカい斧を持ってこないでください!」

「ほら、私これ片手で持ってるし、両手なら行けるでしょ」

「行けるわけ無いでしょうが! 馬鹿ですかあなたは!」

「あら、馬鹿とは酷いわね-、でもそうかも知れないわー

 私馬鹿かも知れないわー、だから持てると思うから放すわよ?」

「止めてください死んでしまいます!」

「まぁ、冗談として」


凄く楽しそうな笑顔で斧を持ち上げ、地面にドンと置く。

ちょっと揺れた気がした…


「これでどう? これなら行けるでしょ?」

「あのー、訓練場の砂場が思いっきり沈んだように見えたのですが?」

「大丈夫よ、所詮砂場でしか無いし。

 とりあえずほら、これなら試せるでしょ?

 持ってみなさいな、重さで死ぬ事は無いでしょ?」

「……いや、無理でしょ」

「よし! なら私がやる!」

「お? リズちゃんチャレンジする?」

「うん…よーし、持つぞ!」


リズちゃんが深呼吸した後にリトさんの斧を掴んだ。

斧を掴んだ事を確認して、リトさんは少し笑った。


「じゃあ、放すわよ?」

「来い!」

「ほい」

「あ、あ、あぁぁあ! お、重いいぃい!」

「お、良い調子ね、あっさりプチュってならなくて安心したわ」

「うぐぐぐぐぅう!」

「はい、ここまでー」


り、リズちゃん…良く少しだけ耐えたね。


「お、重すぎる…何で片手で持てるの?」

「鍛えてるからね。あぁそうだ、シュリンプは持てる?」

「……ま、まぁ、やってみるか」


今度はシュリンプさんがリトさんの斧を掴む。

体格的にはリトさんとシュリンプさんなら

シュリンプさんの方が力ありそうに見えるけど。


「じゃあ、ほい」

「うぉ! こ、これは…な、中々…ぐぐぅう!」

「お、ちょっと上がったわね、流石腹筋割れてるだけあるわ」

「お、お前、ほ、本当に…に、人間か…こ、こんな重量…ぐぐ…」

「おぉ! スゲー! 持ち上がった!」

「それで振り回してみてよ」

「無理だろ!」

「あら、残念ね」


シュリンプさんが必死の表情で持ち上げた斧を

リトさんは笑いながら片手で握り、軽く振った後に肩に乗せた。


「何でそんな軽そうに持つんだよ!」

「鍛えてるからねー、まぁ巨人のハーフだしね、私。

 そりゃ力が命って奴よ。巨人族から力抜いたら何も無いし。

 それに勇者の仲間でもある。そりゃね、力も付くわよ。

 最近はより斧が軽いからね」


さ、最初から結構軽そうにしてたけど…

その時よりも更に力が付いたって事なのかな?


「凄いよね、リト姉ちゃん。私もそんな風になる!

 あ、最近少し腹筋割れてきたよ? まだちょっとだけど」

「確かにまだまだね、で、それに対してミザリーは」

「い、いきなりたくし上げないでくださいよ!」

「ぷにぷにね-、鍛えてるの?」

「き、鍛えては居ませんけど…と言うか、当たり前の様に

 私のお腹をぷにぷにしないでください」

「じゃあ、ミザリー姉ちゃんも一緒に鍛えようね!

 だから、今日も練習! さぁ本番だよ!」

「あ、そうね、前座が長くなり過ぎちゃったわね。

 あまりにもミザリーが貧弱だったから」

「ひ、酷いですね! わ、私は元々魔法使いの部類です!

 私の本領は剣術よりも魔法なのですよ!」

「あらそう、じゃあ期待するわね」


あはは、前置きが長くなったけど、ここからが本番なんだね。

どうなるのかちょっと楽しみかも。

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