努力の理由
本当リズちゃんの遊びに付き合ったら
いつの間にか凄い技術が発見できた。
魔法陣をあんな風に操ったら、凄いの出てくるなんてね。
まぁ、色々と試してやっと気付いたけど…魔力消費凄い…
うーん、レイラードの魔力を凄い消耗しちゃった。
でも、結構一杯一杯だったし、消費するには丁度良かったかな。
でも、挑戦できたから色々と法則性とかが分かった。
魔法陣の数が多ければ多いほどに魔力消費は上昇して
魔法の威力も格段に上がることが分かったよ。
そして、魔法陣は3つであの魔法を発動出来る。
そこから魔法陣を追加すればする程に魔力消費と
魔法の威力が上昇していくような法則だった。
最高は10個。これ以上は私も制御出来なかった。
もっと研究を続けていけば、もっと威力が出せるかもだけどね。
でも、10個で推測だけど魔法陣3個の5倍の威力になった。
魔力消耗は3倍と、結構燃費が良いかも知れない。
あくまで私が扱った場合でしか無いけどね。
そもそも魔法陣3つでも私の平常時だと2回しか撃てそうに無い。
「魔法陣の回転速度によって威力に変化がある場合もあるけど…
検証した感じ、高速回転させればさせるほどに発動が速くなる。
その代わり、コントロールは難しいし、魔力消耗も激しくなる」
「私は1つの魔法陣を自在に操れるようになるだけで止まった…
うーん、かなり難しい技術だな…複数の魔法陣を展開して
その魔法陣をどのように動かすか…それをイメージで全て処理は」
「そうですね、魔法陣の数が増えれば、処理する対象が増えますからね。
魔法陣の形をした物をブンブン動かす様をイメージは難しいです」
「だな、少しでもイメージが崩れたら魔法陣が消えてしまうからな…
それを、よくあの緻密な魔法陣であれだけの数を操れるな」
「頭に焼き付いてるんですよ、私の場合は」
「魔法の事ばかり考えてたんだな…」
「はい、強くなる為にはここを鍛える事しか出来ませんでしたから」
私に出来たことは、私が出来る部分だけを極める事だけだった。
私にはそれが出来るだけの時間があった、それだけだよ。
ミリアさんの場合はエルフの里全体のことを考えてないと駄目だった。
だから、長い時間を生きていたも、私みたいに魔法を極められなかった。
私は私の事ばかりを考えれば良かっただけなんだから。
「私は魔法を極める事だけを考えれば良かったんです。
先の事を考える必要も無くて、寝る時間も休憩時間も全て
ただ魔法をどう極めれば良いか…それに当てる事が出来たんです」
「ふーん、だからエルフ全体を考えないといけなかったミリアより
高い精度で魔法を扱えると言うこと?」
「えぇ、私にはそれしか無かった…そう言う事です」
「じゃあ、テイルドールとかの方が魔法極めてるって事?
確かエルちゃんよりも自分の為に動けたんだよね?
…エルちゃんより強いテイルドール…勝てるのかな…」
「テイルドールお姉様はここまで極めてないよ」
「えぇ!? どうして!?」
「き、極める必要が無いくらいに強かったからかな
魔力が無尽蔵に溢れ出すから小細工が必要無いんだよ」
テイルドールお姉様は凄まじい魔力があるからね。
私みたいに細かい部分を極める必要が無かった。
「……じゃあ、努力しなかったの? ……馬鹿じゃん」
「……は、ハッキリ言っちゃうんだね…唖然とした表情だけど…」
「だって馬鹿じゃんか、時間沢山あるんだったら
強くなろうとか考えれば、凄く強くなれたのに
長い時間を全部無駄に使っちゃったんだよね?
勿体ないし、とても馬鹿だなーって思うもん」
「て、テイルドールお姉様は、い、色々な魔法を考えてて…
考えてて…たかなぁ…お、オーバーヒートとか考えてたし!
あ、後、ワールド・エンドとかもテイルドールお姉様だし!」
「凄いの? その魔法」
「うん、魔力を全部放出するのがワールド・エンドだよ。
オーバーヒートは私もミルレールお姉様にダメージを与えたときに」
「あの時の魔法! へぇ、あんなの考えてたんだテイルドール」
それ以外に何かオリジナルの魔法…テイルドールお姉様使ってたかな?
で、でもきっとテイルドールお姉様だし…色々とあるはず…だよね。
「あ、それじゃあミルレールは?」
「え?」
「ミルレールは何してたの? 凄い長生きなんだよね?」
「え、えっと…ひ、暇つぶしに魔物狩りしてたり…」
「……馬鹿じゃん!」
「ば、馬鹿じゃ無いから! つ、強いから! 凄く強いから!」
「でもさ、馬鹿じゃん…何で? 強いのにどうして?」
「つ、強いからだよ! 努力する必要が無いくらい強かったから!」
「そ、それにだよ? 人以外は努力しても殆ど成長しないの。
一定数以上に成長することは無くて、努力するのも意味ないんだよ」
「でも、ブレイズは努力したんでしょ? だから、凄く強い」
そう…だね、ブレイズお姉様は必死に努力して
あの完全反射の魔法を習得してる…あれはブレイズお姉様の特性もあるけど
何よりも、ブレイズお姉様の努力の賜だった。
「なら、努力することで新しい技術は手に入るんでしょ?
時間が沢山あるなら、もっと頑張ればもっと強くなれた」
「…リズ、良い事を教えてやろう」
「何?」
「努力が出来るのはな…目標がある存在だけなんだ」
「目標?」
「そうだ、リズ、お前の目標は何だ?」
「1人でも多くの人を助ける為に魔王を倒すこと! それがどうしたの?」
「テイルドールもミルレールも
きっと今のお前みたいに確かな目標があったわけじゃ無い。
リズ、君は昔…勇者候補でもない時に…今みたいに強かったか?」
「…いや、全然。全く頑張ろうとも思わなかった…
強くなりたいとは思ってたけど、今みたいに頑張っては無いよ」
「そうだろう。だが今はどうだ? その時と比べて。
ほんの数ヶ月ほど前だろう?」
「…う、うん、凄く強くなったと…思うよ」
「あぁ、最初の時と比べれば、お前は凄く強くなってる。
ほんの数ヶ月程度で別人と言っても違和感が無いほどにな」
そうだね、昔のリズちゃんと比べれば、今のリズちゃんは別人に近い。
「これだよ、差は…確固たる目標があるか否か…これが違いだ。
漠然とした目標だけじゃ無く、ハッキリとした目標を得た。
だから、お前はこの数ヶ月でここまで強くなれた。
勿論、勇者だったからと言う部分もあるのかも知れない。
だが、努力しようとしなければ成長はしないはずだ。
ミルレールやテイルドールにはこの目標が無かったんだろう。
漠然とした目標しか無かった。だから、努力しなかったんだろう」
「じゃあ、ブレイズやエルちゃんは…」
「確かな目標があったんだろう。エルはきっと妹の為だろうな。
そしてブレイズもまた、妹達の為に強くなろうとしたんだろう」
「……どうしてそう思うの?」
「エルとブレイズのやり取りを見ただろう?
ブレイズは妹達をとても大事に思ってる。
だからこそ、あんな判断をしたんだろう」
その通りだと思う、ブレイズお姉様は本当に私達の事を大事にしてる。
私を連れ戻そうとしたのだって、レイラードの為だ。
勿論、私の為でも合ったんだろうけど、レイラードの為の方が大きいはず。
そして、私を見逃してくれたのは…私の為だと思う。
私が皆と一緒に居たいと言ったから、ブレイズお姉様は退いてくれた。
私も辛い思いをしないように…必死に連れ戻そうとしたけど
私の意思を汲んでくれて、ブレイズお姉様は退いてくれた。
「大事だと思える家族が居たからこそ、ブレイズは強いんだ。
そしてまた、エルも強くなった…そうだろ? エビルニア」
「……はい」
「もう! 今のエルちゃんはエビルニアじゃないよ! エルちゃん!
エリエル・ガーデンだよ! エビルニアだけどエビルニアじゃ無いの!」
「……そうだな」
そう…だね…うん、今の私はエビルニアだけどエビルニアじゃない。
今の私には今の私が大事だと思う人が居る…別人だよ。
だから、頑張りたい…もっと頑張りたい。
「……ミザリー、私はずっと思ってたんだけど、この話は…その…
私、聞えないふりをしたままの方が良いのかしら?
聞いてはいけない事をかなり聞いちゃってるような気が…
え? エビルニアって何? 何の事なの? ちょっと教えてよ。
何? ブレイズとの会話って…え? 付いていけないんだけど。
何で当たり前の様に魔王の娘達の裏事情聞かされてるわけ?」
「……まぁ、エルさんが2番目に私たちの中で年上だと言う事です。
クレア先輩は適当に思考放棄して前見てください」
「そんな笑顔で言わないで!? 説明しなさいよぉ!」
…あ、あはは、後で説明しよう。




