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研究の歴史

「それじゃあ、魔法を教えますね…と、その前にちょっと」


私は魔法を教える前に、周囲の警戒も緩めないように

ウルルちゃんを召喚した。


「はい! あなたの忠犬! ウルル! ただいま参りました!

 さぁご主人! いつも通り私にご命令を!

 どんな無理難題でも応えますよ! 人に化けよと言われても

 今の私であれば、人に変化だって出来ちゃいます!」

「そうなの!?」

「はい! ごらんくだされ! ホワイトウルフの変化術ー!

 母に教えて貰いました! 頑張って覚えたのです! えい!」


う、ウルルちゃんがモクモクしたと思ったら

真っ白い髪の毛の小さな女の子に変化した。

リン位かな、小学生くらいの身長だよ。


髪の毛は短くて癖っ毛が凄い…それに耳と尻尾生えてるんだ。

両方とも真っ白だね…顔はもう身長通り

凄く幼いし…ちょっと間が抜けた感じだよ。


何でそう見えるのか…やっぱり耳の間にある

妙に高く立ち上がってる髪の毛のせいかな…リズちゃんっぽいし。


「これぞ人型ウルル! さぁご主人様! ご命令を!

 なんだってやって見せます! 母から聞きました!

 ホワイトウルフは人に変化してご主人のご奉仕をする事もあると!


 夜のご奉仕はお任せください! 夜のご奉仕が何かは知りませんが

 多分疲れた体のマッサージですよね! お任せください!

 今の私の程よい体重ならば踏み踏みマッサージが出来ます!」

「あ、この状態なら喋れるのね…こっちのが便利そうだけど

 てか、当たり前の様に爆弾発言ね…サモナーって変態なの?」

「一部の人だと思いますから! 少なくとも昔の仲間は

 召喚獣を友達と言ってたくらい大事にしてましたから!」

「そ、そうなんだ…必死ね、エルちゃん…

 あ、それとその形態だと何か弱点とかあるの?

 狼の時と差が無いならそっちの方が意思疎通できそうだし」

「鼻が利かなくなります! あ、目も少し悪くなります!

 気配の探知が難しくなりますし、耳もちょっと悪くなります!

 あ、でもでも! 味覚は鋭くなって、美味しい物がもっと美味しくなります!」

「……使えないわね」

「酷い!」


ウルルちゃんがショックを受けた表情を見せ、狼の姿に戻った。


「うぅ…お母さんみたいに変化術を磨かねば…

 人型ウルルでも狼ウルルみたいに高性能に振る舞えるように…」

「か、可愛かった! 凄く可愛かったから大丈夫だよ!」

「本当ですか!? 可愛かったですか!?」

「うん! 凄く可愛かった!」

「ご、ご主人様ー!」

「ウルルちゃーん!」


飛び込んで来たウルルちゃんを抱きしめた…あ、もふもふしてる…


「…何かこの子達可愛いわね、本当」

「私もウルルちゃんをもふもふしたーい!」

「楽しそうだな…見てて癒やされる」

「あのー、エルさん…魔法を…」

「あ、ごめんなさい! でもあと少し…もふもふしてても…」

「あの流れでこれ以上の中断は止めてください! やる気が削げます!」

「あ! そ、そうですね! やる気は大事です!

 と言う訳でウルルちゃん、周辺警戒をお願いね。

 で、しばらくの間一緒に冒険して警戒を強めてね」

「はいご主人! このウルル! この命に代えてもその使命を全うします!」

「死んじゃったら偵察は出来ないよ…」

「あ、そうですね、では死なないように死ぬほど頑張って全うします!」

「う、うーん、し、死なないならそれでいい…かな」

「はい! では、いざー!」


そう言って、ウルルちゃんは嬉しそうに馬車の上に移動した。

可愛いなぁ、ウルルちゃん…変化したとき女の子だったし

やっぱりウルルちゃん女の子なんだね。


「じゃあ、防御魔法教えますね!」

「はい、強くなりたいので」


私は皆に防御魔法を教えた。

とは言え、そう簡単に出来る魔法じゃない。

今回教えた防御魔法は反射魔法だった。


「反射魔法ねぇ…ブレイズが使ってた奴?」

「ブレイズお姉様の魔法はこの魔法の完全上位互換です。

 魔法陣を組む必要無く、常時発動出来る反射魔法。

 反射により消耗する魔力も一定数だけという魔法です。

 更には全ての攻撃を反射できるんですよ。

 

 普通の反射魔法は物理か魔法かのどちらかしか反射できません。

 反射したい対象によって、魔法陣の組み方が変ってきます。

 反射も攻撃の破壊力や威力などで消耗魔力が大きく変ります。

 レイラードが放った爆発クラスを反射しようとすれば

 その魔力消費は凄まじい事になるでしょうね」


強力ではあるけど、組むまでに時間が掛るデメリットもある。

それに反射魔法はどれだけ精度を上げたとしても

反射出来る規模が増加するだけで、魔力消費はさほど変化しない。


「ブレイズの反射魔法を解読はしたりしたの?」

「えぇ、努力はしたんですけど

 ブレイズお姉様の反射魔法は魔王の娘としての能力もあります。


 つまりブレイズお姉様は擬似的な不死者の能力を応用してます。

 魔力が切れない限り死なない能力ですが、擬似的な不死者の場合

 損傷部位に比例して消耗する魔力消費が高くなるし

 かなりの部位を損傷しないと再生できないんですけど


 ブレイズお姉様の場合は損傷部位がどれだけ多かろうとも

 意図したタイミングで一定の魔力で再生します。

 死ぬほどの怪我を負ったとしても、瞬時に癒えるんですよ。

 魔力量も普通の擬似的な不死者よりもありますしね。


 ブレイズお姉様はこの一定の魔力で再生するという部分を応用して

 常時発動で一定の魔力消費だけで

 相手の攻撃全てを反射できる魔法を作ったんですよ」

「……そ、そんな事が出来るんだ」


それだけの魔法を作りあげるのに、どれだけの時間を要したんだろう。

既に最高クラスの能力を持って生まれてるのに、更に上を目指す。

テイルドールお姉様やミルレールお姉様とは全然違う向上心。


あの2人は自分の能力を過信して、これ以上は不要だと考えて

大して上を目指そうとしたりしないで、努力を貶んでる。


「うん、出来るんだよ、私達には…それぞれの特性を生かすことが。

 それは私にだって出来たんだから、ブレイズお姉様が出来ない訳がない」

「あなたもそういう技術を持ってるの?」

「はい、ドレインフィールドがそれです」


私にあった唯一の特性である奪う力…私はその能力を応用した。

そして作りあげたのが、このドレインフィールドだった。


「あの魔法をかき消してた技か…なる程、通りで他に使い手が居ないわけだ」

「はい、私にあった唯一の特性。倒した相手から魔力を奪う特性。

 死ぬ前は魔力量が絶望的すぎて、全然生かせてませんでしたけどね」

「死ぬ前は魔力量が無かったの?」

「はい、私は自分自身で作った魔力をそこまでため込めなかったんです。

 魔力量は少なくて、姉妹の中では一番下…下手したらリズちゃん以下かも。

 今もそんなに魔力は作れないんですけどね」

「そうなんだ…でも、ため込むことは出来るんだっけ?」

「うん、奪った魔力をため込むことは出来たよ」


だから、ドレインフィールドを生かすことが出来た。

とは言え、あまり魔力を奪えてなかったから

そんなに強力な能力という感じは無かったけどね。


それに、私の戦い方だといまいちこの特性を生かし切れてない気がする。

オーバーヒートとか位だからね、魔力消費が激しいのは。

……でも、そろそろこの技も火力不足を感じる事がある。


私もそろそろリズちゃんに負けないように、もっと強くなろうとしないと。

そろそろオーバーヒート以外の強力な技を考えないと…レイラードに勝てない。

テイルドールお姉様にだって勝てるわけが無い…ミルレールお姉様にも。


「色々と大変だったんだな」

「はい、だから強くなれました。駄目な部分をカバーする努力をしました。

 それが私が扱う魔法の原点。弱いからこそ、私は努力できました。

 少しでも強くなれる様に、私は必死に努力することが出来たんです」

「その努力の結果が…あの異常な速度の魔法。

 そして、あの圧倒的な威力を誇る基礎魔法達か」

「はい、私は広い知識を後にして、深い知識を目指して

 緻密に魔法陣を組めば組むほどに破壊力が上がる事実に気が付いた」


自分の手元にいつも私が組んでる魔法陣を出してみた。


「見れば分かると思いますけど、細かいでしょ?」

「やっぱり何度見ても芸術作品みたいに綺麗な魔法陣だよね!」

「そうですね、剣の組み方が…こ、ここまで緻密なのですか?

 ちょっと細かすぎてよく見えないんですけど…」

「はい、じゃあ大きくしますね」


魔法陣に魔力を流し込んで大きくした。


「おぉ、デカくなった…

 もしかして展開した後に魔力を注いでるのですか?」

「はい、展開した後に魔力を新たに注ぎました。

 正直、こうした方が展開も速いですしね。

 小さい魔法陣の方が組みやすいですし」

「それは魔力の制御を完璧に出来てなければ出来ない芸当で…」

「まずは基礎を極めるのが応用する上では必須です」

「説得力がありますね、本当に…」

「おぉー、デカいの見れても細かくてよく分かんない!」

「この剣の組み方…と言うか、剣の色合いも操れるのですね。

 私は魔法陣に色という概念があるとは思いませんでした」

「この色合いも大事です。色々と研究して

 どのような形が最も高威力かを把握するんです」


こう言う細かい部分が重要だから、極めるのに凄く時間が掛る。

長い時間を生きる事が出来る弱者じゃ無いとここまでは辿り着かない。

強者は長く生きたとしても、そう言う部分に興味を抱かないからね。


「うーん…本当に魔法陣って色々あるんだね、やっぱり動かせるの?

 こう、クルクル回ったりするの? 何だか面白そう!」

「え? こんな感じ?」


展開した魔法陣をクルクルと回転させてみた。

模様が模様だから、中々綺麗に見える…


「あはは! 回るんだ! 面白いね! あ、沢山出せるんだっけ!」

「え? あ、うん」


何で私、こんな事してるんだろう。と、とりあえずやってみようかな。

周囲に5個くらいの魔法陣を展開してクルクル回してみる。


「あはは! 魔法陣自体も回せるの? 全体的にグールグル!」

「え? あ、えっと…うん」


何だかリズちゃんが別の事に興味持ちだしてる感じがする。

でもまぁいいや、とりあえずやってみよう…


「おぉ! スゲー! 面白いね!」

「…ねぇ、魔法の勉強みたいなのしてたと思うんだけど…

 何でいきなり、そんなお遊び大会みたいな事になってるの?」

「さぁ…リズさんが別の事に興味を抱いたからでしょう」

「あ! ここから剣を出して、クルクルーってやったら強そう!」

「ま、まぁ…この魔法陣はマジックソードだから出来るけど…危ないよ?」

「あ、馬車の外に向けてやってみれば安全じゃ無いかな!」

「あ、う、うん…でも最初は1個だけで」


リズちゃんに言われたとおりに魔法陣からちょっと剣を出してみる。

あ、凄い高速回転してる…何か威力凄い事になりそうなんだけど…


「おぉ! 超強そー!」

「た、確かにこれは刺さったら痛いじゃ済まないかな…」

「よーし! ここに5個追加だー!」

「うぇ!? わ、分かったよ」


5箇所に魔法陣を展開して、全部を回してみた…確かに威力凄そうだね。


「おぉ! これで5つ全部をこうクルクル回して!

 こんな感じで! えっと、時計みたいに!」

「あ、うん」


時計回りに5つ全部を回してみた…ちょっと速くしたら凄く威力高そう。


「あはは! スゲー! 格好いい-!」

「何かリズちゃんってさ、子供っぽいわよね。何か男の子みたい」

「いきなり興味が別の所に変るところもより子供っぽいですね」

「まぁ、エルも少し楽しそうだし良いんじゃ無いか?」


これ…普通に強力なんじゃ? こ、こんな所に注目してなかった…

魔法陣を自在に操るのは少し難しいけど、同じ動きなら簡単だしね。


「よーし! 発射だー!」

「何を!?」

「真ん中から、チャージビームみたいなの! 超強そう!」

「え、えぇ!? わ、分かったよ! うりゃー!」

「うぉわぁ! 何か出た!」


……あ、あれ? な、何も出ないと思ったのに何か出た…

何か凄くデカい剣みたいなのが5つの魔法陣の中心から出て来た!


「な、何あれ!? はぁ!?」

「……な、何か…出ちゃいました…」

「おぉ! かっけー!」

「……あれ!? これってもしかして大発見なのでは!?」

「あ、遊びからこんな事が分かるとは…そ、そんな馬鹿みたいな事…」

「わ、私も魔法陣で遊ぼうとか思ったこと今まで無かったから…」

「あはは! 凄い格好いい! もう一回やって!」

「え!? あ、う、うん」


こ、今度は試しにマジックショットの魔法陣でやってみよう。

同じ様に魔法陣単体で回転させたり、いくつか召喚して回転させた。


「よーし、撃てー!」

「う、うん。えい!」


魔法陣の中心が少し光ったと思うと

回転している魔法陣から高速でマジックショットが射出されてる!

あ、これって1番上の魔法陣が撃ってるんだ! 速く回せば回すほど

凄い速度で弾丸が射出される…えぇ!?


「凄いね! 沢山出てくるよ!」

「……あれ!? やっぱりこれって大発見なのでは!?」

「お、落ち着けミザリー! 普通はあそこまで魔法陣を操れない!」

「……り、リズちゃん」

「ん? どうしたのエルちゃん。そんなにビックリした顔して」

「……あ、ありがとう!」

「わぁ! 何!? 何で私抱きしめられてるの!?」


こ、こんな形で新しい魔法を開発できるなんて思わなかった!

魔法陣その物を操るなんて発想は何度か至ったけど

こんな発想は全くしなかった! 回転させるなんて発想!


遊びでちょっとやったことはあるけど

そこから魔法だなんて考えもしなかったよ!

むしろ精度悪くなりそうって思ってたけど違うんだ!

あはは! 凄いや! 遊びから魔法が出来るなんて!


「お、おかしい…おかしいわ、こんな事…真剣な話をしてたら

 リズちゃんが変な事に興味を持って、エルちゃんが付き合って

 その結果、何か新魔法が出来るだなんて…いや、魔法と言うよりは

 新技術という方が正しいような気がするけど!」

「い、いや落ち着いてください! ただデカいマジックソードと言うだけ!

 魔力量を注ぎ込めばあれだけの剣は出来ますし!」

「いやいや、あの大きさは私初めて見たぞ! それに射出時の勢いが

 通常のマジックソードと比じゃない位に凄まじかったぞ!

 地面が切れたんだからな!」

「ま、マジックショットも沢山乱射すればああなりますよ!」

「え、エルは5つから魔法陣を増やしてなかったし…

 そもそもあの速度の射出は通常じゃ無理だミザリー!

 落ち着け! 目をグルグルと回してる場合じゃ無いぞ!

 記せ! 今すぐ記せ! この方法を!」

「た、確かにそうですね! 記さねば…で、でもどう記すんですか!?

 何か勇者が遊んでたら出来たって感じで良いですか!? 良いですよね!?」

「冷静になれミザリー! 規格外の事が起って混乱するのは分かるが!」

「…魔法使い組は大混乱ね…まぁ、異常なのは分かるけどテンパりすぎでしょ」

「よーし! エルちゃんもう一度!」

「よ、よーし! もう一度!」


それから何度か試してみたけど…うん、やっぱり凄い技術だった。

こんな技術、偶然以外で見付かるのかな…遊んでないと無理だし。

そもそも長生きしてないと、ここまで魔法陣操れないんだよね。

かなりの少数が偶然遊んでるときに発見した位しか無さそうだね…


「あはは! 面白かった! あ、そう言えば最初のお話しは?」

「リズちゃん…もう皆それ所じゃないわよ…」

「ほへ? あ、本当だ! 何か書いてる!」

「うぐぐ、ど、どう記せば…」

「魔法陣を自在に操るのはかなり難しいんだな…」

「うーん……威力とか操れたりするのかな?

 回転速度とか…魔法陣の数とか…

 あ、オーバーヒートの魔法陣で試したらどうなるかな?」

「おぉー! 皆真剣だよ! 何で?」

「あなたがさらっとえげつない技術を発見させたからよ…」

「そうなの? あ! 確かに格好良かったもんね!」

「ま、まぁ…否定はしないわ」


よーし! このまま色々と試してみよう!

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