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意地

あれからしばらくの間、談笑していたけど

流石に皆眠たくなったみたいで眠り始めた。

リズちゃんは魔法陣を組んでる最中に眠っちゃった。

あはは、凄く上手い魔法陣だね。

本当に少ししか教えてないのに、凄い成長性だよ。


「ふぃ…ミリア、もう寝なさいよ」

「最初に言っただろ? 私は眠らなくても大丈夫なんだ」

「普段寝てるのに? 今日はまたどうしてよ」

「暇だろう? 退屈は毒だぞ」

「緊張してる場面で暇なわけ無いでしょうに」

「まぁまぁ、そう怒らないでくれ」


ミリアさんとリトさんは外で会話をしている。

あの2人は最近、凄く仲良くなってた。

アンデッドの襲撃以降、より仲良く。


「…はぁ、ねぇミリア」

「どうした?」

「あなた、フレッグのこと放置してて良いの?」

「まさか、放置したままだなんてあり得ないさ。

 私は必ず、あいつに勝つ」

「でもさ、最悪の場合…あなたはフレッグ殺す事になるわ」

「その覚悟が無いとでも思うか?」

「あると思う。だけどね、親友や家族の…

 私の場合はただの姿をした存在だけど…それを殺して

 私は本当に辛かった。でも、あなたの場合は親友その物よ…

 それに、私とイブよりも長い付き合いの…間違いなく辛いわよ?」

「分かってるさ…それに、殺すのは所詮最悪でしか無い。

 あいつだって改心してくれる可能性もあるんだから」

「そうだけど…」

「それともうひとつだ…その時が来たら、手を出さないでくれ。

 私がどんな選択をしようとも、何もしないで傍観して居て欲しい」

「……そうね、私は…そうさせて貰うわ」


ミリアさんとリトさんの会話は何だかとても重たい会話だった。

でも、いつか来る戦いの話だ。ミリアさんが私達と一緒に居るのは

自分の親友であるフレッグとの決着を着ける為なんだから。


もうリズちゃんが勇者で殆ど確定してる状況…

きっとこの依頼の後にでもミリアさんはフレッグとの決着を着ける。

その時…私達は何もしないで、ただ見守ることになる。


「……ん? そこ! 誰だ!」


何? 外の方で雰囲気が変った。


「あは! バレちゃった! でも、バレても別に良いんだけどね!」

「子供? こんな夜に随分と不自然だな」

「あぁ、明らかに嫌な予感がするわ。だから遠出って嫌なのよ…」

「私は何も、なーんにもしないよ? 何もしない

 ただ私がして欲しいことをしてくれれば、何もしないの」

「へぇ、それで? して欲しい事ってのは?」

「あはは…エビルニアお姉様を返しなさい…」

「な…」


寒気が…周囲の空気が一瞬で凍えるほどの寒気が!


「分かってる、レクイエムが教えてくれた、転生体だっけ?

 でもね、そんなのじゃ無いって事も分かってる、分かってるの。

 だってさ、ブレイズお姉様も動いてるんだよ? ただの転生体じゃ無い。

 それに凄く強いんでしょ? なら本物だよ、本物、本物に違いない!」

「エルのことか…渡さないぞ、エルは私達の仲間だ」

「なら、全員ぶっ殺せばお姉様は帰ってくるのね!」

「な!」

「くぅ、レイラード!」


嫌な予感がして、私はすぐに馬車から飛び出す。

このままだとミリアさん達が殺されてしまう!


「え、エルちゃん!」

「あは…その匂い…その姿…エビルニアお姉様だ…本物、本物だ!」

「レイラード……どうして」

「迎えに来たの、エビルニアお姉様…エビルニアお姉様!

 あは、あはは! アハハハハ! やっと、やっと会えた…

 やっと、やっと会えたの! 200年もずっと寂しかった!

 寂しかった…安心して、エビルニアお姉様!


 ミルレールお姉様を何度も何度もボコボコにして

 もうエビルニアお姉様を攻撃しないように教え込んだから!

 だから、だからもうテイルドールお姉様もミルレールお姉様も

 エビルニアお姉様を虐めたりなんかしないよ! 虐めたら殺すから!」

「ど、どうしちゃったの…レイラード…そんな…」


前までの面影がない…狂気ばかりがレイラードを覆ってる…

昔みたいな笑顔じゃ無くて、狂気しか感じない笑顔だ…


「あの話から考えても、こいつはテイルドールとかミルレールより強いの?」

「……は、はい、レイラードは無尽蔵に成長しますから…」

「な、馬鹿な! 成長するのは人間だけ…魔物は成長しない筈じゃ!」

「アハ! アハハ! アハハハハ! 連れ帰るの、エビルニアお姉様を

 連れ帰るの、一緒に毎日眠って、一緒にご飯を食べるの…

 エビルニアお姉様! エビルニアお姉様! 大好き! 大好きだよ!」

「レイラ、あぐ!」


……え? そんな…どうして…


「え、エルちゃん!」

「アハハ、大きな穴が開いちゃったね…でも大丈夫、死なないから」

「あぅ…」

「でも、痛いよね? ごめんね! 

 でも抵抗できなくするにはこうするしか無いの」

「この! エルちゃんを!」

「邪魔だよ?」

「うぁ!」


駄目だ…レイラードは正攻法じゃ勝てない…

でも、こ、このままだと…私達は…


「さぁ、帰ろう。エビルニアお姉様!」

「……レイラード…私は…帰らないよ…」

「どうして? もうエビルニアお姉様を虐める奴は居ない!」

「……やることがあるんだ、お父様を…止めないといけないから!」

「何を言って、あぅ!」


不意打ちだけど…こうするしか無かった。

レイラードには悪いけど…ここは、こうするしか無い。


「な、何を! エビルニアお姉様!」

「……ごめんね、レイラード。でも、これでしばらく動けない…」


私を抱きしめてるレイラードの隙を突いて

私が今まで奪った魔力を使い、強力なマジックチェーンを使った。

魔術師達が使ってた拘束の魔法。魔術師達から奪った魔力があるから

レイラードの動きを封印することが出来る位の鎖が使えた。


「い、今のうちに急いで離れましょう!」

「わ、分かったわ…急いで!」

「え? あ、おはようございま、あれ? 暗い」

「急いで馬車出して!」

「え!? あ、はい!」

「逃がさない、エビルニアお姉様ぁ!」


魔法!? しかも、あの大きさは並の規模じゃ無い!


「えぇ!?」

「こ、この!」


私は急いでドレインフィールドでレイラードの魔法を無効化した。

す、凄い魔力量…た、戦ったことは無いけど、こんな魔力を!

ため込むという点では、テイルドールお姉様よりも上かも知れない!


「逃がさない!」

「い、急いで馬車出してって!」

「わ、分かってますよぉ!」

「エル! あの攻撃を止めてくれ!」

「分かってます!」


馬車全体を覆うくらいの範囲でドレインフィールドを展開した。

今までここまで広範囲に展開することは出来なかったけど

色々と研究した成果なのか、範囲が凄く広くなった。


「待って! 待ってよ! エビルニアお姉様ぁ!」

「うぅ! す、凄い魔力…」

「え? 何? どうしたの?」

「リズちゃん! 伏せてなさい!」

「え、え!? えぇ!? どう言うこと!? 説明してよー!」

「エビルニアお姉様! エビルニアお姉様! 絶対に諦めない!」

「うぐぁぅ!」


す、凄い魔力…くぅ、わ、私が溜めれる魔力よりも、お、大きいかも…

こ、このまま防ぎ続けてたら、わ、私…い、意識が消えるかも…

私の意識が、さ、最悪の場合…レイラードに乗っ取られる…!


「く、うぅ…」

「え、エルちゃん! ど、どうしたの!?」

「魔力量が…多すぎて…こ、これ以上吸ったら…意識が…かき消えそうで…」

「な…クソ! 急いで!」

「急いでますって!」


魔力は精神力に近い…それを許容範囲以上吸い続けたら

最悪の場合、その意識を乗っ取られる可能性だってある。

ここまでとんでもない魔力をぶつけられたのは初めてだったから…

でも、同時併用できるんだ…消費すれば良い!


「でも、こ、これなら!」


周囲の木々に魔法陣を展開して、魔力を沢山注ぎ込み

レイラードの方に鎖を飛ばして更に拘束する。

この距離ならまだギリギリ射程内…だからね。


「うぐぐ! 逃がさない、逃がさない! 逃がさない!」

「不味い! 壊された!」


あれだけの鎖を破壊して!


「エビルニアお姉様!」

「凄い速さ! 逃げ切れない!」

「ひぃい!」


でも、最悪の場合は想定してた…魔力の消費も兼ねてね。

真っ直ぐに突撃してくれたのは、本当にありがたいよ。


「な!」


周囲に沢山展開していたマジックチェーンが反応して

近付いてきたレイラードを再び強く拘束した。

レイラードの魔力を奪ってたから出来た芸当。

これだけの消耗、普通なら魔力が切れて死んでもおかしくは無い。


「このぉお!」


レイラードの四肢、首、胴体、至る所を鎖で拘束した。

それでもレイラードの抵抗は収まらず

私が展開したマジックチェーンが激しく軋む。


ここまで完全に拘束しているのに壊れそうなくらい…

だけど、このマジックチェーンはレイラードの魔力を使って

最高レベルの強固な鎖…いくらレイラードでも砕くのは困難。


「エビルニア! お姉様ぁ!」


レイラードを中心に激しい魔力の爆発が発生した。

私達は私が展開したドレインフィールドで大丈夫だけど

周囲の木々が消し炭になってるところを見ても…威力は…


「うぁ…く、くぅ…」

「な、何なんですかぁ! こんな光景初めてなんですけど!?

 何でこの馬車は大丈夫なの!? 周囲吹き飛んでるのに!」

「良いから急いで!」

「分かってますよぉ!」


激しい攻防だった…最悪の場合、あの爆発で

私が展開した魔法陣までかき消されそうだったけど

どうも魔法陣をかき消すような力は無いようだった。

レイラードの拘束は解かれること無く、事なきを得た。

私の方も何とか許容範囲で抑える事も出来たし…あ、危なかった…


「って…ちょっと! 周囲が吹き飛んでるんですけど!?」

「ま、前の道以外、ほぼ吹き飛んでるわね…最悪ここも崩れそうね」

「い、急いで!」

「お馬さん、ちょっとごめんね…」


私は馬に強化魔法を掛けた。

馬の速度がさっきよりも断然速くなり、即座に離脱が出来た。


「な、な、何か凄く速くなったんですけど!」

「く、クレア先輩! ちゃんと操ってくださいよ!?」

「操ってるって! 私の全力で! うぉわ!」

「ちょ、ちょっと! ヒヤッとさせないでよ!」

「この速度を安定して操るのはほぼ不可能ですよー!」

「…でも、大丈夫…すぐに戻るから…」


私の方が結構限界で、私が掛けた強化魔法が消えた。


「あ、速度が…」

「はぁ…はぁ…」

「え、エルちゃん! 大丈夫!?」

「う、うん、だ、大丈夫…ちょっと意識が消滅しそうになっただけだから」

「それちょっとってレベルじゃ無いわよ! どうすれば良いか分からないけど

 とにかくさっさと何とか対策しなさいって!」

「は、はい…じゃ、じゃあ…ヒーリングゾーン」

「あ、何だか疲れが…」


ふぅ、この魔法は消耗激しいからね、それでもそこまで消費してないけど。

でも、これで何とか大丈夫な気がするよ。

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