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愛され勇者

ゆっくりと話をしていると、お父さんが部屋にやって来た。

少しだけ驚いている表情だった。


「…エル、本当俺が知らない間に随分と大冒険をしてきたな」

「ん? どうしたのお父さん」

「ロッキード王国の姫君、リリアン姫がお呼びだ。

 リンカ女王も一緒に話をしたいと…私達は外で待機だ」

「え? そうなの?」

「あぁ、だから来てくれ」

「う、うん」


私達はお父さんに案内されて、客間に案内された。


「皆様、来て下さったのですね。お忙しい中申し訳ありません」

「いえ、丁度私達も暇をしていたところなので」

「左様ですか、それでは丁度良かった。一緒にお話しをしたいのです」

「そう言う訳だから、ジェルは外でね」

「は、承知しました」


お父さんは客間の扉を閉め、私達だけが残った。

私達はリンカ女王に手招きされ、席に座る。


「いやぁ、しかしあなた達って相当大冒険してきたんだね。

 リリアン姫から聞いたよ? ロッキード王国を救ったんだって?」

「そ、その様な事は、あれはロッキード王国の皆様のご協力があって」

「ご謙遜を、あなた方が居なければ我らロッキード王国は滅んでいましたわ。

 あなた方のお陰です」

「いやぁ、話を聞けば聴くほど、どうして今までお父様は

 あなた達の事を放置してたのか、理解に苦しむよ。

 これだけの功績を残してきた勇者候補を話題に挙げないってさ」


でも、私達は一切声を上げなかった。だって、リズちゃんがそう言うの

全く興味なさそうだったしね、勇者だとかそう言うの関係無しに

リズちゃんは色々な人を救おうとしてただけなんだから。


地位も名誉も全く興味を持たず、自分が正しいと思ったことをやる。

リズちゃんは間違いなく利用されちゃうタイプの子だよ。


「しかし…本当だったのですね、国の体制が変ったというのは」

「そうだよ、私がお父様に反旗を翻した。今は私が王様なんだよね。

 一応、無駄にデカい国だから、私も一苦労なんだよね」

「まぁ、リンカ様も苦労なされているのですね」

「そうそう、まー、私が選んだ道だしね」


でも、リリアン姫とリンカ女王って、仲良かったのかも?

凄くいつも通りの口調でリンカ女王はお話ししてるし。

でも当然かな、お互いお姫様同士だったし

何かしらで交流があっても不思議無いしね。


「それで? リリアン。今日はどう言う用事なの?」

「はい、今回私が訪問したのは支援を申し込むためです」

「支援? そっちも大変なのに?」

「私達は復興も順調に進んでおります。

 それに我々を救ってくれたお国に支援をしないわけには行きませんわ」

「でも、今は丁度良いタイミングでしょ? 私達はボロボロだよ?

 No.2と言っても良いくらいに発展してた国家がNo.1になるチャンスだよ?」

「何を馬鹿な事を、我々は恩を仇で返すような真似はしませんわ」

「でも、あなた達を救ったのは私達じゃなく、この子達だよ?」


リンカ女王が私達の方を見た。


「私達は何もしてないよ? 私達は彼女達が所属してた国と言うだけ」

「いえ、それだけで支援をする理由は十分ですわ」

「でもね、この国は彼女達を殺そうとした」

「聞いていますわ…ですが、それを良しとしなかったリンカ様が

 反旗を翻し、お父様を打ち倒し、新たな女王となったのでしょう?」

「まぁ、そうだけど」

「ならば、支援をする理由は十分ですわ。

 もし、彼女達が処刑をされたとすれば

 我々は敵対していたかも知れません。

 ですが、そうはならなかった、ならば協力したいと言う事です」

「あ、もし皆が死んでたら敵対してたんだ」

「えぇ、我らを救ってくれた英雄を殺されたとあれば

 無論、我々は敵対して居たでしょう。

 市民達の気が済みませんしね、勿論…兵士達だって」

「いやぁ、流石勇者様だ、愛されてるね!」


リンカ女王が私達の方を向いて嬉しそうにニコニコと笑ってる。

い、意外と私達の存在ってデカいのかも知れない。

でも、私達というよりかはリズちゃんの存在かも知れないけどね。


結局、私達が処刑されないで事なきを得たのは

リズちゃんがあの場面で堂々と振るまい意見を述べたから。

でもきっと、そうなるように仕向けたのはミザリーさんだ。


あの場面であんな問いをリズちゃんにした。

その問いに対し、リズちゃんが答えたからこうなったんだ。

リズちゃんは真っ直ぐで優しくて、最悪の場合は利用されるかも知れない。

そんな危うさがあるけど…でも、その優しさがこの結果を導いた。


「私はただ、自分で自分を嫌いにならない選択をしただけだよ」

「その選択がこの結果だよ、誇りなよ、勇者様?」

「もー、私はまだ勇者候補だよ」

「ふふ、まだそんな事を言ってるのですか? リズ様。

 きっと既に、あなた達の事をただの勇者候補などと思ってる方は

 この国にもロッキード王国にも居ませんよ。あなた達は勇者です」

「そうね、もうあなた達は勇者よ。勇者が2人居るってのも凄いけどね」

「私は勇者なんかじゃありませんよ」

「そんな風に思ってるのもきっとエルさんだけですよ」


私は裏切り者だ。私は勇者なんかにはなれないしなるべきじゃ無い。

…勇者はリズちゃんだ、真っ直ぐで優しくて力強いリズちゃん。


「まぁ、勇者様ってのは結構謙虚らしいしね、そこも条件合ってるかも。

 それで、リリアン。支援だっけ…本当に良いの?」

「えぇ、勿論です。国民の皆様もあなた方を応援したいと言っています。

 国民の皆様がそう仰るのです。我々は快く支援をしていきますわ」

「そう…ありがと、助かるよ」

「いえ、この程度で返しきれるような恩ではありませんが

 私達に出来る事であれば、快く引き受けさせていただきますわ」

「じゃあ、お願いするね」

「はい!」


今のこの国にはとても嬉しい話だよね。

困ったときに利害なんて関係なく協力してくれる国が

1つでもあるだけで、とてもとても心強いよ。

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